長野県中川村にある、陣馬形山キャンプ場(正式名称:陣馬形山キャンプ場、陣馬形の森公園)は、有料キャンプ場および自然公園として再スタートすることになったと発表した。

これまで、無料の公設キャンプ場として中川村役場が運営してきたが、民間とのコラボレーションによる運営に切り替わるとのことだ。

これにより、中川観光開発が指定管理者となり、陣馬形山DMCプロジェクト室を立ち上げ。プロジェクトには、地元住民・若者たちが運営に関わり、持続可能な「ローカルライフ×観光×アウトドア」の新しいあり方を探求していくという。

また、滞在する人々の体験の質を高めるサービスと場作りの追求、中川村や近隣エリアを周遊し楽しめる仕組み作り、オーバーツーリズムによる麓の暮らしへのインパクトの低減に取り組んでいくとしている。

​長野県中川村

中川村は長野県南部の南アルプス・中央アルプスを東西に望むことのできる「伊那谷地域」のほぼ中心に位置し、「日本で最も美しい村連合」に加盟する風光明媚な人口約5000人の小さな村。

陣馬形山は、2つのアルプスの真ん中にポンと突き出た山で「日本で最も大きい谷」と言われる伊那谷を北から南まで360°見渡すことのできる眺望が素晴らしい山であるとのことだ。

陣馬形山は、古来から麓の地域の水源の森であり、村の暮らしの”いのちの源”でした。信仰と生活が一体となり“御神体”とも呼べる存在であったという。

キャンプ場が設置されたのは昭和5年。当時の青年会が野営場と山小屋を建て、その後、平成の時代まで村内の農家の羊や牛の夏の放牧地として山頂は利用されてきた。

長年に渡り中川村住民は小・中学生のうちに一度は陣馬形山に登ったり、キャンプをしており、生活の延長にある山として村民の愛着のこもった場所であるとのことだ。

2019年11月の週末の状況

2000年代に入り牧場としての役目が終わると、山頂のキャンプ場は、知る人ぞ知る、絶景を楽しめる特別な場所として、キャンパー・ライダー・登山者たちに愛されてきた。

しかし近年、山頂へ至る道路が改良されると同時に、第2次オートキャンプブームが到来し、オーバーツーリズムによる負荷が目に見えるかたちとして現れ、毎週末、狭いサイトにテントがひしめくように並ぶようになり、テント間が狭くなり、キャンパー同士のトラブルなども起こるように。

また、キャンプ場のトイレはキャパシティを超えてしまい、「村役場が運営する予約の要らない管理不要の無料施設」という位置付けであったが、様々な負荷がキャパシティを超え、訪れる人全ての体験の質が低下。

以前からのこの場所のファンも離れていってしまったという。

また、麓の里・美里地区の道沿いに住む人々は、連休中などは昼夜を問わず山頂へ向かう車やバイクの排気音に悩まされることにもなったとしている。

陣馬形山キャンプ場 リニューアル

今回、陣馬形山キャンプ場および陣馬形の森公園は、2021年より民間とのコラボレーションによる運営に切り替わる。

中川村観光開発が指定管理者となり、陣馬形山DMCプロジェクト室を立ち上げ、同じ村内で、四徳温泉キャンプ場などを経営し、アウトドア事業のコンサルタントも行うWaqua合同会社に事業を委託。

運営チームには、中川村地域おこし協力隊員、村在住のクリエイター、地元を守っていきたいという心のある若手たち、山やアウトドアを愛する住民たちがメンバーとして加わるという。

新体制になり、まず取り組むのは以下の3点。

  • 滞在、訪問するユーザーの体験の質を高め、より心地よい場所になるためのサービスと空間作り
  • 訪れる人々に、陣馬形山だけでなく中川村や近隣エリアを周遊し、楽しめる仕組み作り
  • ​オーバーツーリズムによる麓の暮らしへのインパクトの低減

かつて山がそうだったように、里山の暮らしに安定と豊かさをもたらすことを目指して、持続可能な「ローカルライフ×観光×アウトドア」の新しいあり方を探求するという。

訪れる人、住んでいる人が、互いを思いやり、この美しい風景を守っていく一つのコミュニティであることを意識しながら、観光も暮らしも楽しめる地域と仕組みを創り、ここ中川村から発信していくとしている。

陣馬形山キャンプ場 リニューアルコンセプト

●山頂の素晴らしさ、絶景を最大限に活かす運営コンセプト

「絶景、自然と一つになる」こと、その体験と価値をお客様が得られることを最も大切にし、そのための施設設定、サービス、サポート、クリエイティブに力を注いでいくという。

●「キャンプ場運営」「体験の質の確保」「利用料金」 3つのバランス

キャンプ場の施設維持(循環式トイレ、山頂直下の伏流水を汲みあげる上水ポンプ、草刈り、景観維持等)の費用は年間数百万円。

また、その他の運営コストも考えると、入場者数が多い方が経営としては助かるが、滞在中の体験の質を確保することを一番の優先順位とし、サイトはかなり空間に余裕を持った設定にし、テントの上限を最大18張(約50名)に設定することにしたという。

利用料金は普通のキャンプ場より少し高めとなるが、地元内外の多くの人々が愛するこのスペシャルな場所を持続的に活用し守っていくために、必要な方法であるとのことだ。

●キャンパーと日帰りユーザー両方に配慮した空間づくり

山頂の空間に、キャンパーだけが有料利用できるキャンプサイトだけでなく、日帰りユーザーも利用できる共有スペースも確保し、互いが快適に、絶景の中でのひとときを楽しめるようにしたとのことだ。

●ソロキャンパーを大切にする設定

長らくソロキャンパーやライダーに愛されてきたキャンプ場。これからもそうであるように、各サイトにソロキャンププランを用意し、ソロキャンパーが毎日5〜10人ほどは必ず入れるように枠を確保。

●来場者全員に、集落住民へのインパクトの注意を呼びかける

麓の住民の生活を守るため、夜間や早朝の走行、排気音の大きいマフラー改造車両、複数のバイクの連隊などは禁止。どうしてもインパクトを与えてしまう走行になりそうな場合は、比較的人家の少ないルートを利用するよう呼びかけ。

●トレイルの設置と、登山ユーザーへの情報充実

低山登山としても人気が高い陣馬形山は、現在、美里ルートのみがメジャーなルートして紹介されているが、今後は、「陣馬形トレイル」と呼べるような複数の登山ルート・周遊ルートを設置していく予定。

HP内に”TRAILS”ページを設置し、情報面でも登山者の利便性を向上させていくとのことだ。

●「日本で最も美しい村連合」にも加盟している中川村で「村めぐりの旅」を

村の様々な場所から違った「絶景」に出会える中川村。景色、人との出会い、それらを繋いで歩く旅を楽しみながら、滞在できるような仕掛けとして「村をめぐる」ためのスポット情報のページを用意。

中川村は、アーティストが多い村としても知られアートに出会う機会も多く、カフェ、パン屋さん、スイーツなど旅の彩りとなるスポットや、食事処、入浴施設、ランドリー、食料調達など、キャンパーに必要な地元の店も紹介している。