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2019年末から続く新型コロナウイルス感染症の流行。国内の企業でも社員の接触を減らすため、テレワークを導入した企業が多く見られた。
「働く場所はオフィス以外でも自由に選べる」。テレワークに取り組んだことで、そう感じたビジネスパーソンやマネジメント層も少なくないはずだ。社員全員が同じ場所で仕事に臨むというスタイルから、それぞれが自由な場所で仕事に打ち込める。オフィスに求められる機能が「仕事をする場所」としてだけでなく、多様な機能が求められつつある。
では、「ニューノーマル時代」において、オフィスとして具体的にどのような価値が求められるのだろうか。今回は“ライティング(照明)”を切り口に、より生産性を高めるオフィスのあり方を提案するパナソニックライフソリューションズ社の取り組みについて取り上げたい。
テレワークによってオフィスは「選択的に使う場所」に変化した
各会社でテレワークの導入が進み、オフィスへの出勤が必須でなくなった。その副効用として「どこで働くか」、あるいは「いつ働くか」まで選択の幅が広がり、より個々のワークスタイルに合わせた働き方が可能になった。
東京都の調査によると、令和元年度(2019年度)には25.1%だったテレワーク導入企業が令和2年度(2020年度)には57.8%と半数を超え、従業員の生産性にも一定の効果があったという。
一方で、在宅をはじめとするテレワーク形態によって従業員が受けているストレスに関する課題も浮き彫りになっている。NTTコミュニケーションが行った「テレワークと会社満足度に関する調査」では、個人の生産性は向上しているものの、チーム単位ではコミュニケーションのタイムロスが多かったり、気軽な雑談や相談チャンスのない環境で思考が停滞したりと生産性の低下を感じる人もみられ、非対面コミュニケーションの限界が感じられる結果となった。心身のストレスを強く感じる、モチベーションが低下していると感じるビジネスパーソンも多い。最悪の場合、こうしたストレスや閉塞感をきっかけとした退職や転職を考えている社員もいるという。
テレワークのメリットは大きい。だが、デメリットも少なからず存在する。オフィスにはその補完が求められているといえるだろう。働く人をオフィスにフィットさせるのではなく、働く人に寄り添って従業員の心身の健康を維持・促進する「Well-Being」な空間づくりが必要になりそうだ。
Well-Beingの実現のためには働きやすい環境づくりが必要
働き手に合わせたWell-Beingなオフィスとは、どのような空間だろうか。パナソニックはオフィスの「場所」「目的」「形態」に着目し、さらにそれらを脱却した「ABW(Activity Based Working)=仕事の内容に応じて働く場所を選ぶ働き方」を可能にするオフィスづくりを提案している。
このABWに基づいたオフィスではリラックスできる共有スペースで休憩したり、同僚との会話を楽しんだりできる雰囲気をつくることで、働く意欲を刺激する。
また、人は自然のなかにいることで心地よさや開放感を感じるという「バイオフィリア」の考え方にも注目した。ビジネス心理学を研究するアメリカのロバートソン・クーパー社 が、世界16カ国・7,600名の働く人々を対象にした、「職場におけるバイオフィリック・デザインがどのように人々に影響を与えるか」の調査結果(2015年)では、職場環境に自然を取り込むことが、心理的な面でプラスに働き、業績の向上にもつながるということがわかっている。オフィス内や共有スペースに樹木や水、自然光を取り入れた例は海外の大企業でも見られており、米国にあるAmazon本社が有名なものとして知られている。
蛍光灯やパソコンの人工的な光を浴びて仕事をするこれまでのオフィスから大きくシフトし、大都市にいながら植物の香りや風の流れを感じ、水のゆらぎを眺め、せせらぎの音を聴く。こうしたバイオフィリックデザインを取り入れたオフィスが、従業員の心身の健康促進に役立てられる可能性は大いにある。
用途に応じて使い分け。“あかり”がつくる新たなオフィス価値
既存のオフィスをこうした「ニューノーマル」に対応させるために、パナソニックが提案するのが「あかり」を用いたオフィスのアップデートだ。
2021年3月に発表された同社の新商品は、「ABW」や「バイオフィリックデザイン」にも大きく寄与するラインアップとなっている。
働き手がフレキシブルにワークスペースを選ぶ「ABW」の考え方に基づく「ニューノーマル時代」のオフィスには、これまでに加えて様々な機能が割り当てられる。個々が作業を行うコワーキングスペースに、集中したいときのソロワークスペース、交流を生むマグネットスペースも必要だ。それぞれの用途に応じた「あかり」を設けることで、より快適で生産性の上がるWell-Beingな環境をつくる必要がある。
例えば自宅でも、くつろぎの場であるリビングや寝室ではあかりの色調を変えてみたり、明るさを調節できるものを選ぶという人もいるだろう。オフィスでも同じように、作業するスペースや交流に使うスペースなど、用途によって最適な照明を選べるようになれば、その空間の価値は高まっていく。
オフィスで、人や空間の状態に応じて最適化するあかり。そして、単に手元や空間を照らすだけでなく心を豊かにしたり、安心感をもたらしてくれるようなあかりがあれば、心身へのストレス軽減や集中力の向上に役立てられる一面もあるだろう。
多様なオフィスのかたちに対応する照明器具としては、スリムなデザインでどんなオフィスにもなじみやすいLEDライトやデザイン豊富なペンダントライト、光の向きや強さを調節できるスポットライトなど、スペースの用途に合わせて豊富な商品が展開されている。照明がもつ色合いやデザインによって、その空間のもつ機能や目的をよりしっかりと演出することもできる。
特に取り入れの方法が難しく感じられる「バイオフィリックデザイン」にもチャレンジした。例えばダウンライト型プロジェクター「バイオシャドー」は、ダウンライトのように天井に埋め込んで設置するプロジェクターだが、木漏れ日や水面といった自然の情景をモチーフとした映像があらかじめインストールされていて、これらの映像を壁や床に映し出すことができる。
別売のBluetooth搭載ワイヤレススピーカーからは任意の音楽などの他に、バイオシャドーの映し出す情景に対応した環境音なども流すことができ、設置した日から視覚・聴覚を通して“身近に自然を感じられる”バイオフィリックデザインオフィスを演出できるというものだ。用途も多彩で、人が集まるマグネットスペースはもちろんリラックスを促す休憩スペースや企業の第一印象を決める受付スペースにも適しているという。
さらに、withコロナのニューノーマル時代を見据え、「衛生」にもアプローチしていく。複数人が集うオフィスにおいて、感染症にセンシティブになっているビジネスパーソンも多い。
2020年11月に発売された「ジョキーン」は、室内の空気を循環させて機器内で殺菌灯を照射することによって空気を浄化するという仕組みで、見た目のスマートさや人体への安全性を考慮した商品。感染や衛生への懸念を軽減してくれる商品として、ニューノーマルのオフィスには欠かせない存在ともいえるだろう。
オフィスの雰囲気を変えるには、室内のレイアウト変更や大がかりなリフォームが必要で、自社では到底実現できないと感じてしまう人も多いかもしれない。今回の新商品には、照明の付け替えを楽にしてくれる「イージーアップ配線ダクト」も登場した。天井にある既存のベースライトを置き換えることで多彩な照明器具に対応した配線ダクトへのリニューアルができるため、オフィスのレイアウトや用途変更にも大がかりな工事を行うことなく対応できる。「イージーアップ配線ダクト」にペンダントを取り付ければ人が集まるコミュニケーションスペースに、スポットライトを取り付ければ没入感を生み出すソロワークスペースへの簡単にリニューアルなど、カジュアルな雰囲気のオフィスづくりにも使えそうだ。
あかりの力で、オフィスをアップデートしていく
2020年のテレワーク拡大を通して、オフィスのあり方は大きく変容した。全員が出社して、同じスペースにこもって仕事をこなすという従来型のオフィスから、個々がそのタスクや気分、適性に応じて働く場所を選択する「ABW」な働き方が広がっていくことが予想できる。オフィスには交流やリフレッシュ、クリエイティブな仕事のための場所といった新たな機能が求められるようになり、働く人に寄り添う“オフィスのフレキシビリティ”が今後ますます重要になっていくはずだ。
パナソニックが新たに提案するオフィス照明器具は、人の心身の健康「Well-Being」に効果をもたらす商品が多彩にラインアップされている。オフィスをより過ごしやすく生産性を高める空間としてアップデートしていく。“あかり”は、その助けになってくれることだろう。
文:藤堂 真衣