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私達が生きる時代は大きく変化している。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業がテレワークに移行した。2020年を境に多くの企業の働き方が変化した。
変化しているのは働き方だけではない。最新技術によってビジネスも変わり目を迎えていた。AI(人工知能)もそのうちの一つで、活用することにより、ビジネスを大きく躍進させることが可能となった。
しかし多くの企業が、このような時代・テクノロジーの変化に置いていかれていないだろうか?またその基盤を支える通信キャリアは、時代の変化に適応した価値やサービスを提供できているのだろうか?
今回、このような時代で通信キャリアに求められる「真価」について、ソニービズネットワークス代表取締役社長の小笠原康貴氏・圓窓代表取締役の澤円氏の両名が対談した。
小笠原氏が代表取締役社長を務めるソニービズネットワークスは「通信でビジネスをワクワクさせる。」を理念に、インターネット接続を中心として、SaaSなどのサービスを提供している、私達のビジネスのインフラを支えている企業だ。対する澤氏は日本マイクロソフトでテクノロジーセンター長を務めたこともある、テクノロジーとマネジメントのプロフェッショナルだ。
これからの企業が時代・テクノロジーの変化に対応していく上での課題、そして未来について両者が思いを語った。
「自社の課題=ユーザ(顧客)の課題」、通信キャリアの視点から提供できる価値を
「ビジネスのために通信に何ができるか」企業理念にもあるこの問いに答えるように、ソニービズネットワークスは常にユーザの課題を見つけてはスピーディにサービスに反映させていく。しかし商品を開発しているだけでは、なかなか実際にユーザが使用した時に感じる不便さや課題には気付きづらい。では、同社はどのように商品の改善の糸口を見つけているのか。
小笠原氏「基本的な考え方・スタンスとして、自社が持っている課題は、お客様も同じく課題に感じられているのではないかと思っております。例えば一企業としてインターネットユーザーであった私達自身が、ネットワークが遅く、もっと速くなってほしいと感じたことをきっかけにNURO Bizという事業を生み出したように、私達が一企業として持っている課題は、おそらくお客様も持っています」
ソニービズネットワークス代表取締役社長 小笠原康貴氏
インターネット接続を中心として、SaaSなどのサービスを提供している同社では、クラウド型勤怠管理システム“AKASHI(アカシ)”など、多くの自社製品を実際に社内で使用している。澤氏は自社製品を実際に使用することは、ユーザの視点を持つ意味で非常に重要だと語った。
澤氏「サービスを提供する企業が自社製品を実際に使用していることはとても重要です。自分達が作って提供しているサービスを使っていない企業って実は多いです。その場合、ユーザの視点がない状態の、カタログベースでの商談になってしまいます。それは例えば免許を持っていないのに車を売り込みに行くようなもので、説得力がありません」
ソニービズネットワークスは幅広い企業に対してインターネット接続を中心としたSaaSなどのサービスを提供している。
ソニービズネットワークスが提供するクラウド型勤務支援ツール“somu-lier tool(ソムリエツール)”には、始業前に従業員が体温や体調を報告する体調管理機能がある。この機能は実際に自社がコロナのためテレワークに移行し、その時の気付きがきっかけで開発されたそうだ。
小笠原氏「コロナが終息した後も、今後はテレワークと出社を組み合わせるなど、働き方の自由度が高まると予想しています。私自身もテレワークという勤務形態は良いと感じています。ただし難しいと感じるのは、社員の体調管理です。実際に会っていればその人が悩んでいたり、体調が悪かったりしても気付けますが、テレワークの場合すぐに気付くことができません。人によっては体調が悪くても、我慢して働くケースもあります。
そこで、毎朝体調を報告する機能を追加しました。自分から体調を報告しづらいと感じる人もいます。機能を通じて報告する機会を与えてあげれば言いやすくなると思い、開発しました」
ICTサービスである“NURO Biz”も、ソニービズネットワークスでは社内で生じたネットワークに対する課題を自分達で直し、構築していったそうだ。自社の業務が円滑に進むよう、自分達で直して作る。このアクションが商品の課題に気付く秘訣のようだ。
サービス提供の「真価」は特定の課題解決よりも柔軟性にアリ
自社製品を実際に使用することで、早期に課題に気付くことを可能にしている。しかし時代の変化は速く、サービスがその変化に追いつくことはなかなか難しい。このような状況に対して、小笠原氏は重要なのは特定の課題解決ではなく、すぐに変化することができる体制だという。
小笠原氏「やるべきことは、特定の課題にフォーカスしてそれを直すことではなく、柔軟にソフトウェアをリリースできる体制を作ることです。変化に対応できる体制を作ることが、会社も開発プロセスも大切です。課題というのは常日頃色々な形で出てきて、明日には違う形になっています。そのため早く作り上げるプロセスを、どのように構築するかの方が重要です」
昨年には新型コロナウイルスの感染拡大という大きな変化が起きた。ソニービズネットワークスではこのような変化が起きてから開発方針を変えるのではなく、はじめからその都度柔軟に対応できる体制・商品を作っていたそうだ。
小笠原氏「これからもコロナに限らず、例えば急に法律が変わるなど様々なことが起こりえます。しかしどのような時も、柔軟に対応できる商品を出し、またその商品を出せる体制になっていれば上手く適応できると思います。実際お客様から意見を聞き、2週間後には機能ができているなど、私達の内製するほとんどの商品はそのような体制になっています」
また澤氏は課題が出る前に事前にテクノロジーを活用して手を打つことも重要だと説明した。
澤氏「課題とはすでに発症している状態のことなので、本来は課題が出る前に手を打って潰しておいた方がいい。課題になりそうな所にあらかじめ投資して、成長を妨げないようにするのが、正しい考え方です。未来のある部分を解決するために、あらかじめAIなどで自動化して事前に課題を潰しておく。この発想がテクノロジーの本来の活用方法です」
圓窓代表取締役 澤円氏
今後発生する可能性がある課題に対して、予防として働く商品を提供しているのもソニービズネットワークスの強みだ。またそれらの商品は企業の状況に応じて、柔軟に対応することができる。
例えばサービスのうちの一つに“マネージドクラウドwithAWS”がある。これは企業へのAWSの導入をサポートし、クラウドポータルによって運用を手軽にするサービスだ。このサービスによって企業は最も難易度の高い導入時に手厚いサポートを受けることができ、また運用は自分達で行い社内に知見を貯められる仕組みとなっている。
特定の課題に対応するためにカスタマイズを行うのではなく、汎用性の高いITツールやプラットフォームを活用する仕組みを作る方が良いエコシステムを築けると澤氏は言う。
澤氏「世の中で汎用化されている課題を解消するためにパッケージソフトがあります。そのため、いちいち業務プロセスに合わせてソフトをカスタマイズする必要はなく、業務プロセスをソフトに合わせた方が良いんです。本当にソフトを業務に合わせなければいけない場合、汎用性の高いITツールやプラットフォームを用意して、その上に積み上げていけば良い」
しかし汎用性の高いプラットフォームを利用する上でも難点はある。例えばクラウドサービスプラットフォームの一つであるAWSは、導入するために一定の知識が必要となり、初心者にはハードルが高いのが実情だ。だが、同サービスではその点も解決ができる。
澤氏「AWSの場合、初心者は導入のために何をすれば良いのか分からない、という状態になりかねません。しかし“マネージドクラウドwithAWS”で導入部分はサポートして、運用はそれぞれの企業が行う形であればハードルが下がります。例えるとAWSは畑から引っこ抜いたキャベツです。そのままキャベツがあるだけではどう料理するか迷う人もいますが、千切りになって販売されていればサラダにしようなど、利用のイメージがしやすくなります」
最新技術とユーザを繋げるために持つべきマインドセット
変化しているのは働く環境だけではない。最新技術がもたらすビジネスへの影響度も年々高まっている。 AI(人工知能)はそのような技術を代表する一つだろう。AIは業種を問わず適した場面で活用することで、コスト削減や需要予測といった価値を提供している。
しかし、AIに対する理解は多くの企業で十分に広まっていない。
小笠原氏「AIはまだ黎明期だと感じています。もう少し浸透するようになれば、さらに活用できる場が広がっていくでしょう。今も多くの企業の中でAIの利用が適している場面があると思うのですが、AIが現在の業務のソリューションとして繋がらない、発想として出てこないケースが多いです」
AIが業務の効率化や予測に役立つと理解してもらうために、今はテクノロジー企業のサポートが必要だと澤氏は説明した。
澤氏「ソリューションにAIという発想が出てこないのは、言語化ができていないからです。言語化をするための材料を持っていない。なので、そのサポートをするのがテクノロジー企業の義務だと私は思っています。
すでにあるものとAIのような新しい材料を繋ぐには、ある程度の前提知識と、言語化能力が必要となります。ただソリューションを提供するだけではなく、既存の業務などとAIを繋ぐための言語化をお手伝いするのが良いと思います」
ソニービズネットワークスにもAIに関連した商品がいくつかある。
そのうちの一つが技術者だけではなく、多くの人に気軽に使用してもらうために開発された“PredictionOne(プレディクションワン)”だ。この商品を通して初めてデータ分析に触れ、ソリューションの選択肢の一つにAIが入るようになってほしいと、小笠原氏は言う。
小笠原氏「これまでのITツールは主に情シス(情報システム部)の人が主導し使用していたのですが、AIはマーケターや、企画部門、人事部門など事業活動に携わるあらゆる人の方が使用する場面があります。そのため PredictionOneはできるだけ使いやすく、技術者でなくても使えるような商品にしています」
新しいことを企業で始める時には必ず費用対効果が求められる。そしてそのハードルを越えられず要望が通らないケースが自社でもあったという。そのような経験から、ソニービズネットワークスはPredictionOneを、失敗しても比較的小さな損失で済む金額に設定したそうだ。
小笠原氏「選択肢の一つとして、AIを入れてもらうには色々なやり方があると思います。その中でも私達はまず、気軽に利用してAIを理解してもらうために、PredictionOneを年間19万8,000円という価格帯に設定しました。
会社で何かをやろうとすると、どうしても費用対効果が求められます。そこで初めて使うAIという技術に多額の費用をかけられるかと聞かれると、答えはNoです。今、特にAIという分野は理解を広げるためにハードルを下げる必要があるフェーズだと思っています」
時代の変化に対応し、常にアップグレードする企業に
社会全体の働き方が変わったことで、サービスを提供する企業はどのように変化していく必要があるのか。このような問いに対して、ビジネスの環境が変わっても、既存の商品が全く使われなくなるわけではない。
小笠原氏「自社の商品であるNURO Bizは、テレワークに移行したら需要がなくなるのでは、と言われることがあります。確かに今は人によって出社したり、在宅勤務だったりと働き方がハイブリッドな形に変化しています。そして今後このような状態が普通になると思っています。
しかし会議に参加する人のうちの一人でもオンラインの場合、出社している人もそれに合わせてオンラインで会議に参加します。なので、結果として以前よりも会社のネットワークを安定させないといけない企業が多いのが実情です。そのため私達も、これまで以上により安定した回線を生むなど、アップグレードすることが求められています」
既存の商品は時代の変化に合わせて改善していくことで、ユーザに価値を提供することが可能だと小笠原氏は教えてくれた。また澤氏はオンラインでの業務が増えることにより、これからはよりソニービズネットワークスが提供しているようなSaaSのサービスが生かされてくると語った。
澤氏「2020年は全世界で2回目の働き方のリセットボタンが押されたと思います。1回目は1995年頃のインターネットの普及の拡大です。そして2回目のリセットボタンが押されたことによって、対面前提であったビジネスに、オンラインが加わるようになりました。
1995年より前は主なコミュニケーションの手段は電話・FAX・手紙でした。そして95年以降はメール・チャット・SNSが普及しはじめます。
そこから2020年に2回目のリセットボタンが押されると、移動と対面で行われていた主なビジネスのスタイルが、オンラインになりました。しかし移動と対面というスタイル全てがなくなるわけではなく、オンラインと共存する形になります。
そして今このオンラインでのビジネスが活発になった時代に、ソニービズネットワークスのSaaSのサービスが活用されるようになります。さらに実際に社内で使っているという事例もあるため、サービスに売っている側と作っている側の乖離も起きません」
また日本では、事業会社にもエンジニアがいることが望ましいと、澤氏は今後の展望を語った。
澤氏「欧米のエンジニアは半分以上が事業会社に属し、日本の場合多くはSierにいます。このような構造だとITに詳しくない人が企業を経営する状態になりやすく、事業会社にエンジニアもいないため、買い叩きが起きてしまう。そのため日本の事業会社もエンジニアを雇い、もっと内製にした方がいいと思います。
内製の体制に変化することは、ソニービズネットワークスのような企業にも望ましいです。ツールの導入がスムーズに進むようになり、ビジネスニーズがあるから機能を追加してほしいなど、フィードバックも本質的なものになる。私はこのようなエコシステムに変わってほしいと思っています」
変化に対して柔軟に、そしてスピーディに対応できる商品・体制づくりをすることでソニービズネットワークスはこのニューノーマルに突入した新たな時代で邁進しようとしている。今後もそのフレキシブルな活動で、新しい価値を生み出していくことに期待したい。