いまや、デジタル化されていない分野のビジネスは”レガシー”と呼ばれるほどになり、日に日にDXの必要性は大きくなっている。また、コロナショックによって私たちはさらなるDX推進を突きつけられることとなった。

これはオフィスの中だけでなく、建設現場や倉庫作業などの”現場仕事”においても同様で、現場でのデジタル化やアプリの活用にも注目が集まり始めている。しかしながら、現場にはいまだアナログな作業が根強く残っているのが現実だ。

ワークスモバイルジャパンが2021年2月に行った「施工管理業務の実態」の調査では、47%が「現場で写真を撮って、事務所に帰ってから整理(している)」と回答。「何かと紙で出力する事が多い」や、「会って会議する習慣がある」の項目も半数近くの現場社員が該当すると回答した結果が出ている。他にも「報告書/日報を書くために事務所に戻っている」や「1日に複数の現場を行き来しないといけない」など、まだまだ現場のデジタル化には高い壁がそびえたっている。

この状況を打開し、現場のDXを実現するとして注目されているサービスの1つが「Platio(プラティオ)」だ。今回はアステリア株式会社のマーケティング部 大野 晶子氏(以下、敬称略)に、現場が抱えているDXの課題や、Platioがその課題をどう解決し、現場にどのような相乗効果をもたらすのかを伺った。

アナログな現場とDX推進のジレンマが起きている

――Platioは現場のDXを実現するということですが、現場というのはどういった業界や職場を指すのでしょうか。また現場のDXとはどういったものになるでしょうか。

大野 私たちが指す現場とは、一言でいうとフィールドワークです。例えば、店舗やトラックの運転手など、デスクワークではなく特定の場所へ赴いて作業をされる方々の仕事をフィールドワークと定義し、その場所のことを現場と呼んでいます。
現場のDXとは、現場における業務をITの活用によりデジタル化し、プロセスを改善することだと定義しています。既存のプロセスを変革して効率化することがポイントです。

――そういったフィールドワークの現場ではどのような課題があるのでしょうか。

大野 工場や倉庫などの人が動いて成立するような現場では今でも紙での報告業務をしていたり、通話ベースで連絡を取っていたりとアナログな業務プロセスが根強く残っています。しかしコロナ禍でも現場は止められないという現状をきっかけに、現場でもアナログのままではいけない、環境の変化に柔軟に対応していかないといけないという意識が高まってきました。とはいえ、何から手を付けたらよいかわからず、現実的な効率化には繋がっていないのが現状であり、課題となっています。

――必然性の高まる現場のデジタル化やプロセス改善を成功させるためには、どうすればいいのでしょうか。


ネットサービス本部 マーケティング部 大野晶子氏

大野 日本のDX推進の指標の一つに「2025年の崖」と呼ばれるものがあります。これは、2025年までにDXを推し進められなければその後の国際競争力を培うことができないため、複雑化・老朽化・ブラックボックス化された基幹システムを改善していかなければならないというものです。そのため、企業の経営層もIT化への意識が高まってきています。しかし、実際にDXを進めていくならば、経営側だけではなく現場側にもその意識を共有していかなければいけません。

実は、経営の方々が現場をなんとかITを使って改善を推し進めようとするよりも、現場の人たちが課題を解決するために動くことが一番効率的なんです。現場の課題は現場が知っています。だからこそ、現場で解決できる環境を作る必要があると私たちは考えています。

また、現場は人手不足だったり、業務がひっ迫して改善する余裕がなかったりという実態もあります。だからこそDX推進の波がきている今、こういった課題を持つ現場の方々にどうやってその意識と環境づくりを提供していくのかが我々のミッションだと考えています。

現場の課題を現場で解決する重要性

――現場のDXを推進できない理由はどういったものでしょうか。

大野 そうですね。まず根本的な課題として、経営層が主体となって企業全体のDXを打ち出しても、現場の小さな課題は見えていないため、包括的なDXを推進したところで効率化や課題の解決に繋がらないことが多々あります。そもそも現場がデジタル化されていないので、結局手がつけられない場合も多いんです。

DXを推進していくうえでは、現場のデータ化から始めることを推奨しています。働き方をデジタル化に寄せて現場のデータ化を行えば、生じた課題に対するプロセス改善を効率的に繰り返すことができ、現場力の強化にも繋がります。

DXについて何から始めればよいのかわからない場合、現場のデータを経営に活用していくことを見据えて、まずは小コストから始められる現場のDXに着手することが一番よいのではないかと考えています。

――現場のDXを実現するためにはどうするべきでしょうか。

大野 現場は自ら使える予算が限られているので、何度も失敗を重ねながらでもDXを推進していくということが難しい状況にあります。そのため、既存のサービスを導入してみても自社にフィットしなかった場合、時間とお金を無駄にすることになりかねません。

よくあるのが、上層部やIT部門がDX推進や業務効率化のために現場に新たな管理ツールを導入した結果、そのツールやデータがパソコンで見ることを前提としていることから現場に負担がかかっているという問題です。

昨今のツールはモバイル対応もしていますが、パソコン前提で作られているのでそっちのほうが結局使いやすいんですよね。そうなると、例えば立ち仕事の現場や外周りしている営業の方は、事務所に戻ったり、わざわざカフェに入ってパソコンを開いたりという状況に陥ってしまいます。
現場の効率化を図るはずが、結果的に現場がツールに運用を合わせなければいけなくなってしまい、余計な作業が増える、最悪ツールが使われないということが起きています。

そこで私たちは、IT部門に頼らずとも各現場にフィットしたモバイルアプリを現場で作ることができれば、現場でも活用しやすく、どんな状況でも報告や情報共有がより手軽にできるのではないか、と考えました。

――それが現場に特化したモバイルアプリ作成ツールのPlatioが生まれたきっかけなんですね。

大野 そうです。Platioなら現場に詳しい人が自らアプリを作るので現場の運用とズレが少ないので業務改善に直結します。また私たちは、現場業務の効率化には、パソコンではなくモバイル、特にスマホがベースであるということが大前提だと考えています。

スマホ市場が成長し、職場への導入も当たり前になりました。機動性の高いスマホなら机が必要なパソコンと違ってどんな現場でも手軽に利用できるため、スマホで使える業務アプリのニーズは高まります。ところが、既存アプリだと現場では機能が足りない、でも0から作るにはコストがかかりすぎる、という問題から、現場のデジタル化とプロセス改善は進まないままになっています。Platioはこの課題を解決できるサービスなんです。

Platioがどんな現場にもフィットする理由

――Platioを使って企業の現場のDXを進めることで、どのような変化がありますか。

大野 Platioは、現場で浮かんだ効率化のアイデアをすぐアプリにしていくことができます。

現場の方たちが意見を出し合って作ったアプリを使って、実際に目の前の小さな一つの業務を効率化できたという実感がわくと、「じゃあもっとこうしたらどうだろう?」と意見を出し合うようになり、目の前の困りごとをどんどん解決していけるようになる。この高い汎用性で、現場の効率化だけでなく、職場環境へのポジティブな影響も与えていけるのが特徴です。

また、現場が課題を自ら改善していくだけでなく、これまで取れていなかった現場のデータが取れるようになることで、経営においてもより多角的な視点での分析ができるようになります。導入企業によっては、アプリのデータを基幹システムと連携させて使っているケースもあります。

――現場にPlatioを導入することが、会社全体のDXに繋がっていく、DX推進の足掛かりになっていくということですね。

大野 私たちとしてもDXの第一歩という形でPlatioを提案させていただいています。

DXは、ただデジタル化するだけでなく、デジタル化による業務のプロセス改善が本質です。だからこそPlatioは、手軽にプロセス改善に取り組めるような使いやすさ、コストの課題をクリアにし、「まずやってみる」ができるサービスに仕上げています。

やはりどの企業も、会社を支えているのは現場の方々です。現場の人がいなければ回らない企業がたくさんあるなか、現場はまだまだアナログで、改善点がたくさんあります。でもそれに経営者が気づくのはどうしても難しい。だから現場が気づいたときに、改善アイデアをアプリ上で形にして、すぐに実現していける環境を整えることがPlatioの目指す理想なんです。

――現場に特化しているのは、そういう理由からだったんですね。

大野 Platioでは現場ファーストという考え方を大切にしています。アプリを作るサービスのうち、BtoB向けのものはいくつかありますが、Platioはあくまでも現場に特化したサービスです。

また現場で活用していただくためには、ITに詳しくなくても簡単にアプリが作れること、誰でも直感的にアプリが使えることが重要だと考えているため、PlatioのUIはかなりシンプルになっています。特にアプリ画面はシンプルすぎるかもしれないくらいシンプルです(笑)

――Platioの特徴はどういったものでしょうか。

大野 「モバイルアプリ」であること。「ノーコード」であることが特徴です。

先程話したとおり、現場では「モバイルアプリ」を生かさない手はありません。Platioなら各々の現場に特化しつつもシンプルなUIで使いやすく、運用の定着もスムーズです。
また、オフラインでもアプリが使えるという点も好評です。現場によっては地下だったり大きな倉庫や設備の中で電波が届かなかったり、という状況もあるため、オフラインで使えることへのニーズがあります。「電波のないところでも撮影してその場で報告ができるので、抜け漏れも起こりにくく安心です」という声もいただけています。

その他にも報告内容に応じて自動で管理者へプッシュ通知を送り、迅速な状況把握と対応を支援する検知の機能や、アプリ上に入力したデータを一覧でまとめて確認できるデータ管理の機能もあり、データを活用したい管理面でのニーズにも応えています。

そしてこれらのモバイルアプリは「ノーコード」で作ることができます。ノーコードとはコードを書かずにアイコンのマウス操作などでアプリを作成する手法のことです。IT活用のハードルがぐっと下がり、IT部門でなくてもアプリを作れるので、最近注目されているんですよ。
Platioは、現場のフィールド業務に特化した100種以上のテンプレートから選択するだけでアプリのベースが一瞬で作成できます。点検や調査、検温や勤怠連絡など、用途に合わせてとにかく簡単に作れるようになっているので、現場が自らアプリを作って業務を改善できるんです。

現場の運用に合わせたカスタマイズも簡単で、写真や動画の共有、位置情報の取得機能なども3クリックで追加できます。QRコードの読み取り機能や一度書いたら消せなくできる署名機能もあり、輸送系の企業などでのニーズも生むことができていますね。
作成したアプリはすぐに配信し、現場での利用を開始することができます。もしアプリを修正したい場合は、アプリ作成画面から修正してその日に修正済みのアプリを使うことができるので、現場の運用の変化に応じてアプリを進化させられます。


Platioのアプリテンプレート(100種類以上)の一部

Platioによるアプリ作成の簡単な流れ

実際にPlatioによってアプリを作成する際の手順を、アプリ作成画面の画像を用いて図解にて説明する。

このように、簡単なステップによって作りたい内容のアプリを短時間で作成することが可能なため、最短であれば導入したその日のうちからの運用ができる。

現場のアイデアが形になることで生まれる好循環

――導入企業にはどのような業界が多いのでしょうか。また、どのような課題を持たれているのでしょうか。

大野 幅広い業界からお問い合わせをいただいていて、使い方もそれぞれ違いますね。Platioは汎用製品で、それぞれの現場の業務に合わせてカスタマイズしていけるという特徴を持っているので、例えば、製造業や小売りの店舗、点検のサービス業など、様々な業界業種で導入いただいています。

最近の事例ですと、京セラさんの現場に導入いただいた事例があります。もともと同社では倉庫にある40万点ほどの製品の棚卸報告を紙で運用していましたが、巨大な倉庫内を移動しての棚卸しと在庫照合の目視チェックに相当な時間がかかっていました。目視でのリストチェックでは人的ミスも発生することがあったため、在庫照合の精度向上に課題を持たれていました。

そんな時、新入社員から現場の業務で必ず使用するスマホを使って報告できないかという一言をきっかけに、Platioを導入して棚卸アプリを作成。アプリ上で在庫管理ができるようになり、用紙の受け渡しの手間と移動時間を削減することに成功。目視チェックによる人的ミスもなくなり、在庫照合精度の向上を実現されました。サービス導入から初期投資も必要なく、3日ほどで棚卸用のアプリが完成し、現場での運用が始まった事例になります。


アプリで棚卸し結果をその場で報告する様子(京セラの倉庫内にて)

さらに、同社の他部門の方がこの事例を聞きつけて、「うちの業務もアプリで効率化したい!」ということになり、別部門でも検討が始まり、今では他拠点の倉庫でもPlatioが活用されています。

――実際に導入されたクライアントからはどんな声が多いでしょうか。

大野 Platioのアプリは3日ほどで作成できるとお伝えしているのですが、実際に導入した企業の方からは、「1時間で作れました」とか「1日で終わりました」と言われることも多く、私たちが想像していたよりも簡単に作れているようです。

他には、アプリを作るときに、実際にアプリを使う現場の方々と作成画面を覗きながら一緒に作ると、意見を出し合う機会が増え、現場の雰囲気もよくなったとお客様からよく伺います。アプリ作成を通して、意見が形となり、課題を解決する実感が現場にいい影響を与えているようです。意見が出やすくなれば、その分改善サイクルをスピーディに回していけるようになる。このような相乗効果が起きているのはとても嬉しいですね。

「まずやってみる」が叶うPlatioのサポート体制

――Platioの導入に関しての価格やサポート体制について教えてください。

大野 Platioの強みの1つでもあるコスト面ですが、通常のアプリ作成となるとだいたい100万円以上、その後も保守やサーバー利用料が追加でかかるところが、Platioはかなりの低コスト、かつ固定料金でお使いいただくことが可能です。

料金は、どのプランでも初期費用0円。一番お手頃なプランで月額2万円からという低価格設定。しかもアプリは作り放題なので、何個作っても基本料金は変わりません。月単位での契約なので、1カ月だけ試して「違うな」と思ったらすぐに解約することもできます。30日間無料のトライアルも導入しているため、その期間中にアプリを作れば、導入に向けた上司へのプレゼン材料にもなるかと思います。

私たちは現場のDX化を実現するために「ITって難しいし、アプリ作成なんて高くて無理でしょ」という温度感を変えていきたい。だからこそ、フレキシブルな価格や条件設定をして、DXへのチャレンジがしやすいサービスを目指しています。

また、サポート面にも力を入れています。自力でアプリを作った場合、毎年AndroidやiOSのアップデートについていくのが大変ですが、そのメンテナンスは弊社が行っているので、Platio上でアプリを作っていただければ、そこの心配もありません。

Platioは海外製のアプリ作成ツールとは違い、日本で開発・販売をしているので、すぐにお客様の意見をサービスに取り入れられます。必要性のあるご意見に対しては、1カ月程で機能開発・反映を行なっていることから「スピード感をもってニーズをうまく拾ってくれる」という対応力に関する評価の声もいただけています。

今こそ現場をアップデートしよう

――Platioの今後の展望を教えてください。

大野 これまで現場のためのアプリ作成は、非常に導入ハードルが高く、そもそも検討の余地にも上がらないものでした。そのハードルを越え、ITに詳しくなくてもPlatioで効率化を実現できるんだということを、今後も様々な業界業種に伝えていきたいと考えています。

また、将来的な日本の課題としては人手不足の懸念もあります。今後日本企業は、きたる人手不足に備えて、今いる人員でいかに効率的な業務を行うかが大きな課題となってきます。しかし、この課題に経営層はなかなか気づきにくいことも現実です。だからこそ、現場の方々が業務改善に対する意識をアップデートしていくことがこの先重要になると考えています。

今回の新型コロナウイルス流行のような、時代や労働環境の大きな変化にも柔軟に対応できる強い現場づくりをPlatioで実現していきたいですね。

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取材・文:花岡 郁
写真:益井 健太郎