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ブランディング、広報、マーケティングなど企業活動においても活用され始めているYouTube。
うまく活用できれば、既存の方法に比べ低いコストで会社やプロダクト/サービスに関する情報を広めることができる。
しかし、その使い方を間違ってしまうと、炎上し「低評価の嵐」を招いてしまう。低評価が増えると、さまざまなメディアでも取り上げられる可能性が高まり、悪評が悪評を呼ぶサイクルに陥ってしまう。
レピュテーションリスクを管理するには、どのような動画が低評価をもたらすのか、その先行事例を分析するのが得策といえる。
以下では、世界中のYouTube動画を対象にした低評価ランキングを参考に、炎上しないためのヒントを探ってみたい。
YouTube低評価ランキング、1位はYouTube?
今回参考にするのはウィキペディアの「List of most-disliked YouTube videos(低評価が多いYouTube動画一覧)」のページ。
同ページは、世界中のYouTube動画の中から、低評価の絶対数と割合が高いものを選定し、リスト化している。
2021年2月26日時点、これまで低評価の絶対数が最も多い動画として挙げられているのが、YouTube公式チャンネルが2018年12月6日に公表した動画「YouTube Rewind 2018: Everyone Controls Rewinds」。2018年に活躍したYouTubeクリエイターらが出演、同年のYouTubeトレンドを総括する内容となっている。
これまでの再生回数は2億1,300万回。高評価298万に対し、低評価は1894万、低評価率は86%以上。文字通り低評価の嵐である。
なぜこれほどまでに低評価が多いのか。
フォーブス誌2018年12月10日の記事がその不評の理由を次のように分析している。
YouTube Rewindは、その年に活躍したYouTubeクリエイターらが出演する総括の動画だ。しかし、2018年の総括動画には、YouTubeコミュニティの人々が出演すべきと考えるクリエイターらが出演しておらず、コミュニティが満足するものでなかったと指摘している。
この2018年総括動画の不評は、2019年のRewind動画にも影響を及ぼしている。2019年12月6日に公開されたRewind動画は、再生回数1億1292万回、高評価347万に対し、低評価は942万に上る。低評価率は73%。上記ウィキペディアの「低評価が多いYouTube動画一覧」では、低評価の絶対数で世界5位に位置している。
2018年のRewindは、クリエイターらが出演するYouTube公式チャンネルのオリジナル動画であった。しかし2019年のRewindは、動画のコメントでも指摘されているように、著名クリエイターらの過去の投稿を切り貼りしただけもの。このことが低評価の理由になっているようだ。
2018年に続き2019年も多くの低評価を生み出したRewind。これが影響したのかどうかは分からないが、2020年末の公開が見込まれていた2020年版Rewindはまだ公開されていない。
ネポティズム批判で、低評価1,343万越えのインド映画予告動画
「低評価が多いYouTube動画一覧」で、低評価の絶対数が世界で2番目に多いのが、インド映画「Sadak2」の予告動画だ。
2020年8月12日に公開され、現時点の再生回数は7800万回以上。高評価73万に対し、低評価は1343万、低評価率は94%以上。低評価率では、YouTubeの2018年版Rewind動画を超える数字となっている。
低評価が多い理由は、映画制作に関わった人物らが、とあるインド人俳優を業界から追放、その後その俳優が自殺したことにあるといわれている。縁故主義によって映画が制作されたと批判されており、自殺した俳優のファンが中心となって低評価で同映画のボイコットを呼びかけた格好だ。
この映画に関して一部のインドメディアがレビュー記事を出しているが、いずれも5段階で1〜2という低い評価になっている。YouTubeでこれだけの低評価を受けた映画を下手に評価してしまうと、バッシングを受けるリスクが高くなるため、各メディアも評価に慎重になっていることが見受けられる。YouTubeの低評価が、他のメディアにも何らかの影響をもたらすことを示す事例といえるだろう。
子ども向け動画が低評価になる理由
このほか「低評価が多いYouTube動画一覧」でランクインしているのは、ジャスティン・ビーバーのミュージックビデオ「Baby」(低評価数1,200万)、Pinkfongチャンネルの子ども向けソング「Baby Shark Dance」(1,160万)、前出のYouTube公式チャンネルのRewind2019(942万)、LooLoo Kidsチャンネルの「Johny Johny Yes Papa」(905万)など。
「Baby Shark Dance」といった子ども向けの音楽動画が多数の低評価を受けているのを不思議に思う人は多いのではないだろうか。
一般的に、子ども向けYouTube動画は、親が自身のアカウントを使い子どもに視聴させている。子どもが喜ぶため、何度も何度もリピートして視聴させていると、大人はその動画に嫌気が差し、低評価を押してしまうケースがあるといわれている。子ども向け動画の再生回数が伸びやすい一方で、低評価が多い理由の1つになっているようだ。
この先「低評価が多いYouTube動画一覧」はどのようにアップデートしていくのか。企業のYouTube活用におけるレピュテーションリスク管理のために、注目してみるのもよいのではないだろうか。
文:細谷元(Livit)
参考
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_most-disliked_YouTube_videos#cite_note-26
https://wearesocial.com/blog/2020/01/digital-2020-3-8-billion-people-use-social-media
https://www.theverge.com/2019/2/1/18207189/youtube-dislike-attack-mob-review-bomb-creator-insider