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日本での普及も期待されるビジネスSNS、LinkedIn
世界最大級のビジネス特化型ソーシャル・ネットワーキング・サービス「LinkedIn」。特に欧米圏における影響力は大きく、世界中で約5億4,000万人のユーザーを抱えている。日本での普及率はまだ低いが、フリーランスや副業などフレキシブルな労働形態が一般化する現在、グローバルにビジネスチャンスを発掘できるLinkedInに、今後より注目が集まることが期待される。
主にネットワーキングやビジネスチャンスの発掘を目的に活用されるLinkedIn。スキルや経歴などを登録しておくことで、リクルーターからメッセージを受け取ることができる。最新ビジネス情報のチェックはもちろん、就職・転職活動で求人を検索したり、選考を優位に進めるため過去の仕事相手から推薦コメントを寄せてもらったりと、活用の幅は広い。
そんなLinkedInが先日、コンテンツクリエイターを支援する「クリエイタープログラム」を創設すると発表し話題となっている。
LinkedInで活躍するコンテンツクリエイターを支援
コロナウイルスが労働市場に大きな打撃を与えた2020年。求人活動の増加で、LinkedIn上でのコンテンツシェア数は例年比で50%増となった。2021年はこの波にのり、より多くのコンテンツをプラットフォーム上で生み出すことが鍵となる。
今回のプログラムは、LinkedInのプラットフォーム上で独自のコンテンツを発表するクリエイター支援の枠組みを整備するというもの。サービスの詳細はまだ不明だが、LinkedIn上でコンテンツクリエイターのコミュニティを確立させ、影響力のあるユーザーがプラットフォーム上で広告やプロモーション活動を行えるほか、金銭的なインセンティブなどが追加されるのではないかと噂されている。
同社のHPによると、LinkedInのクリエイターとは、定期的にコンテンツをシェアすることでビジネスを拡張させ、人々をエンパワーし、学びを与えることのできる個人、組織、企業を指している。
LinkedInの編集長であるDan Rothは先日、「クリエイターはLinkedInにエネルギーを与える原動力だ」とツイート。「クリエイターは、投稿、ストーリー、動画、記事などオリジナルなコンテンツを生み出し、新しいフォロワーを開拓して多くの人にニュースを届ける影響力がある」と説明する。
今回のプログラムがスタートすれば、ブランドがLinkedIn上で活動するインフルエンサーを見つけ、動画の投稿やストーリーを活用して広告活動を行うなど、プラットフォーム上でキャンペーンやクリエイターとのコラボレーションが創発されそうだ。
テック・ジャイアントが続々とクリエイタープログラムに注力
LinkedInに限らず、各メディアプラットフォームにおいて、コンテンツクリエイターを重視する動きが現在加速している。これは、2020年から急成長している「クリエイターエコノミー」の潮流が原因だ。
クリエイターエコノミーとは、企業や組織に属さずに独自のコンテンツを生み出すクリエイターやアーティスト、キュレーター、ライターなどを中心に構築される経済圏を指す。
YouTubeやTikTokなどは、こうした個々のクリエイターが活動する素地となるプラットフォームであり、「クリエイターエコノミー創出」を戦略の一部として活動を展開している。アーティストやクリエイターの収益化を支援するプラットフォーム「Patreon」は600万ユーザーを達成し、インフルエンサーメッセージ動画「Cameo」の2020年の動画販売は100万本を突破した。
「Substack」など、ニュースレターによる収益化を可能にするプラットフォームにも関心が集まっている。Substackのユーザー数は25万人を突破し、上位10位の年間売り上げの合計は、1000万ドルを超えるという。
TikTokやSubstackといったプラットフォームの成功により、大手テック企業もこぞって、クリエイターエコノミーに投資を始めた。FacebookやSnapchatは、TikTokの競合的サービスをローンチし、Twitterはニュースレターのプラットフォーム「Revue」を買収したばかりだ。
クリエイターエコノミーのこれから
誰もがコンテンツを作って発信し、独自のオーディエンスを築いてマネタイズができる現代。日本では2020年12月にオリエンタルラジオが吉本興業から独立したニュースが記憶に新しいが、さまざまなコンテンツの担い手が、大手のプロダクション会社に属することなく活動を展開できる世の中となった。
今までクリエイターとは思われていなかったジャーナリストなどの層も、ニュースレターサービスの一般化に伴いクリエイターとしての動きを見せ始めているという声もある。
スタートアップが経済を牽引してきた時代から、2021年は個々のクリエイターが新しい形のエコノミーを生み出す年になるかもしれない。ビジネスに特化したプラットフォーム・LinkedInとクリエイターエコノミーの交差点は、これからどう発展していくのだろうか。
文:杉田真理子
企画・編集:岡徳之(Livit)