清水建設と順天堂大学は、順天堂大学大学院医学研究科感染制御科学の堀 賢 教授が中心となり、建物内の感染防止機能を評価する「感染リスクアセスメントツール(オフィス版Ver.1.0)」と感染対策リスト「ソリューションマトリクス」を共同で策定するとともに、日常生活や業務の場面に感染対策が予め織り込まれた建築「Pandemic Ready」の実現に向けた共同研究契約を締結したと発表した。
両者は、2009年の新型インフルエンザのパンデミック(Pandemic=世界的感染爆発)以来、建築設計の知見と医学的な知見とを融合し、感染リスクを低減する建築内部の空間・仕様・施設運用の在り方について共同研究を進めてきた。
こうした中、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オフィス向けの「感染リスクアセスメントツール」と「ソリューションマトリクス」を策定。
今後、未知の病原体によるパンデミックが、より短期間のうちに繰り返し発生すると予想されていることから、人が多くの時間を過ごす建物内部の感染リスクの低減を図る研究は、感染症拡大防止の観点からも、その重要性は高まっているという。
「感染リスクアセスメントツール」は、新築・既存を問わず、建築計画とその運用方法について、既知の(1)接触、(2)飛沫、(3)空気に新たな感染経路とされる(4)マイクロ飛沫を加えた4つの感染経路ごとに、感染対策の効果をポイント化して評価するツール。
設計者は、「感染アセスメントツール」により対象物件を評価し、建物所有者や管理者と感染リスク低減グレードを設定のうえ、その目標レベル到達のために必要な具体的対策、例えば換気方法や気流制御、非接触化、家具レイアウト等を「ソリューションマトリクス」に照らして提案するとのことだ。
清水建設は今後、オフィスを対象にした感染対策のコンサルティングを展開し、顧客が求める感染リスク低減グレードに適した建築計画と運用方法を提案することで、新築・改修工事の受注増を目指すとしている。
また、両者で病院や学校、宿泊施設、大型商業施設、ホール等、各用途に対応したツールを策定し、広く感染対策を提案していくことを予定しているとのことだ。
一方、今回締結した共同研究の核は、マイクロ飛沫の挙動解明であるという。
飛沫が体外に出てからの径の変化やウイルス活性残存時間、室内での浮遊状況などの特性を明らかにし、それに基づく空調気流や強制換気等の新たな対策を提案。
明らかにしたマイクロ飛沫の挙動を「感染リスクアセスメントツール」に順次フィードバックし、アセスメント精度の向上を図るとのことだ。
さらに、これに並行して、ウイルスを不活性化、除去する空調システムの共同開発や社会実装化にも取り組む計画であるとしている。