富士通は、東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通研究所は、理化学研究所と富士通で共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」を活用して、沿岸域の津波浸水を高解像度かつリアルタイムに予測するAIモデルの構築に成功したと発表した。
世界最高の計算速度を誇るスーパーコンピュータ「富岳」により多数の高解像度津波シミュレーションを実施し、そこから得られた沖合での津波波形と沿岸域の浸水状況を教師データとして、今回新たなAIモデルを構築。
構築したAIモデルに、地震発生時に沖合で観測される津波波形を入力することで、津波到達前に沿岸域の浸水状況を3m単位の高い空間解像度で予測することが可能となる。
これにより、臨海都市域での建物や構造物、道路などの社会インフラの影響を取り入れた、局所的な津波の高まりなど、区画ごとの詳細な浸水予測情報を把握でき、より適切な避難行動を支援できるという。
開発した技術の特長は以下のとおり。
今回、「富岳」の高速性を活用することで、3m単位の高解像度シミュレーションに基づき、2万件の想定津波シナリオに対する教師データを生成。
さらに、この2万件のデータを学習することで、地震発生時に沖合で観測される津波波形情報から陸域の浸水状況を3m単位の高解像度で予測できるAIモデルの構築を実現した。
教師データの生成において、3m単位の高解像度で津波の浸水をシミュレーションすることで、臨海都市域での建物や構造物、道路などの社会インフラの影響を取り入れ、局所的な津波の高まりを含めた浸水状況を高精度に予測することが可能になったという。
また、AIモデルでは、沖合で観測した津波波形から陸域の浸水状況を粗い解像度で概算するAIと、概算した浸水状況を高解像度化するAIの2段階構成を持つ、ディープラーニング技術を拡張した新たなAI技術を開発し、「富岳」での学習向けに計算性能の最適化を実施。
通常、シミュレーションに適した計算機とAIに適した計算機は異なるが、今回、シミュレーションとAIの双方に性能を発揮できる「富岳」の特長を生かし、生成した教師データを「富岳」上でそのままAI学習に利用することで、高精度津波予測に向けたAIの構築効率を格段に高めたという。
同技術を南海トラフ沿いで想定される巨大地震による東京湾内の津波浸水予測に適用したところ、内閣府が想定した津波波源モデルなど、多様な津波シナリオに対して、一般的なパソコンを用いて数秒で、高精度な予測が可能であることが確認できたとのことだ。
「富岳」の大規模性や高速性を今後さらに活用し、更なる多様な津波シナリオの学習を進めることで、想定外のない津波予測や、より広範囲の津波浸水予測に向けたAI構築が可能になるという。
今後、3者は、同技術の実用化に向け、AI技術の拡張や予測精度の評価を進め、国内外での津波防災対策に貢献するとのことだ。