市場環境は急速に変化し、これまでのビジネスを続けていては、企業が持続的に利益を生むことが困難な時代に入った。
AIの高度化で、企業で働く人たちの仕事の代替は静かに進み、新型コロナウィルスの拡大が続くなかで、先の見えない時代の不透明さは深まっている。
そうした背景から注目が高まっているのが、アーティストたちが作品を生みだすときの考え方「アート思考」だ。また、イノベーションを起こすにはそれに付随して「デザイン思考」「ロジカル思考」という思考法も重要になってくる。
しかし、こうした新しい「思考法」は耳にしたことがあっても、実際にどんな違いがあるのか、どんな場面で活用できるのか、はっきりしたイメージを持ちにくい。 今回はクリエイティブ・ディレクターとして、トヨタ自動車やソフトバンクなど多くの新規事業の立ち上げに携わってきた柴田”shiba” 雄一郎氏(下記、敬称略)に、アート思考を身につける意義を伺い、その思考法を学べる動画も紹介する。
- 柴田”shiba” 雄一郎(しばた・ゆういちろう)
- 外部人材として企業の新規事業の立ち上げを支援する「フリーエージェント」で、一般社団法人i-ba代表理事を務めている。1998年にはインターネット放送局の立ち上げに参画。地方創生のため、ビックデータを見える化するサイト『地域経済分析システム「RESAS」』のプロジェクトマネージャーを務める。トヨタ、ソフトバンク、江ノ島野外音楽フェスや逗子アートフェスティバルのプロデューサーなど、多数の新規事業に携わってきた。現在、熊本大学と京都芸術大学で非常勤講師も務めている。
◇創造性をビジネスに活かせる!アート×デザイン思考実践セミナー
※新春セール期間は2021年1月7日まで
今後必要なのはAIと差別化するクリエイティブ
──この1、2年、アート思考という言葉を耳にすることが増えたように思います。そこにはどんな背景があるのでしょうか?
柴田 今回のコロナウィルスのパンデミックを受け、世界的に影響力の高い世界経済フォーラム(ダボス会議)の2021年のテーマが「グレート・リセット」と発表されました。
ダボス会議の創設者クラウス・シュワブ会長は、資本主義の限界を新しい価値を生み出す才能主義(タレンティズム)で補う必要がある、とも語っています。
生産性や合理性、所有することが優位だったモノの時代では、労働者は人材として生産性の一部に組み込まれていました。しかし、これからは自立して創造的な価値を生み出す人、つまり、人材から“人才”が重視される時代へ変わってきたということだと思います。
IT技術がどんどん進化する中で、ロジカルな最適解を見つけ出すのはAIの仕事になっていきます。これに対して、人間はもっと創造的な作業、つまりアート思考をしていくことで差別化を図る必要がある、という背景があります。
──アート思考に注目するようになったきっかけはどんなものでしたか?
柴田 これまでは、今までにないサービスやシステムを創る新規事業の現場にいることが多かったので、個人としては特に必要性を意識したというより、むしろ必然的に使っていたのだと思います。
講師という立場になって、アート思考・デザイン思考・ロジカル思考を状況に応じて、無意識に使い分けていたのだ、と改めて気がつきました。
「アート思考」では自分の経験や知識、感動の蓄積から自分軸で既成概念にとらわれず直感的にアイデアを妄想します。
そこで、今までにない新しいサービスや商品をひらめいたとします。そのアイデアは共感を呼ぶだろうか?多くの人がワクワクするだろうか?と、その商品やサービスでユーザーが楽しんでいる姿をイメージする、これはユーザーを軸に考える「デザイン思考」で、ユーザーニーズを満たしているかどうかを考えます。
さらに、アート思考とデザイン思考を行ったり来たりしながら妄想を膨らませていくのですが、この時点では衝動やワクワクといったパッションが最優先されます。
問題はここからで、この内発的な衝動を形にしなければなりません。妄想から説得力のある物語に仕立て上げる過程で、「ロジカル思考」が必要になります。
根拠や優位性は後付けで良いので、実現可能性を論理的に追求します。つまり、アート思考・デザイン思考・ロジカル思考をグルグル回しながら形にしていく作業をします。どれが優れているということではなく3つのバランスが大切なのです。
新規事業を開発するうえで、組織の中では特にバランスが大切です。アート思考をする人ばかりでは空中分解してしまうし、ロジカル思考ばかりでは新しいアイデアはなかなか生まれてきません。メンバーそれぞれの思考のフレームを共有し、共感し遭いながらプロジェクトを進める必要があります。
この3つは特に新しい考え方ではなく、実はみなさんが日常でも使い分けている思考法です。どう使っているかは、私の講座の中で実践的に体験してもらうことができると思います。
◇【論理的思考を身に付ける】売上・利益を上げるために使える24の実践フレームワーク
※新春セール期間は2021年1月7日まで
時代の変遷によって必要性の高まるアート思考
──講座の中では、ロジカル思考、デザイン思考、アート思考を時代の変化とともに紹介されていますが、どういった流れで変化してきたのでしょうか?
柴田 時代は「モノの時代」から「コトの時代」、「物語の時代」へと変化してきました。
昭和の日本ではテレビ、冷蔵庫、洗濯機が三種の神器と呼ばれていました。多くの人がこの3つの「モノ」をほしいと思っていたわけです。その頃は、生産性や効率を重視して合理的にモノづくりをすれば売れる時代で、ロジカル思考が主流でした。
しかし、1980年ごろまでに「モノの時代」が終わったと考えています。ほぼ全世帯にテレビ、冷蔵庫、洗濯機が普及し、作れば売れるという時代は終わりを告げました。
次にやってきたのは、私のほしいものと、あなたに必要なものが違う「コトの時代」です。
赤い洗濯機がほしい人がいれば、別の人は小さい洗濯機がほしいと考えるかもしれない。企業はそうしたユーザーのニーズに応えて、多様な商品を作って差別化を図りました。これはデザイン思考の考え方です。
◇【ベストセラー著者が教える】組織でイノベーションを生み出す!「デザイン思考」実践講座~入門編
※新春セール期間は2021年1月7日まで
今は、iPhoneかそれ以外のスマホかという感じになりましたが、少し前までは毎シーズン、ものすごい種類の携帯電話が売り出されていました。
縦型の携帯、横に開く携帯、ワンセグでテレビが見られたり、ラジオを聴けたりする機種もありました。
「モノ」にさまざまな「コト」が乗る時代が続き、やがて「モノ」が飽和状態になり、価値も飽和していきました。多くの「コト」がありすぎて、ユーザーはどれを選んだらいいのかわからない。
「コトの時代」が飽和状態になり、追い討ちをかけるように今回の新型コロナウィルスが広がりました。
──外出ができない中で、働き方をはじめ多くの変化が起きましたが、それは人々に何をもたらしたのでしょうか?
柴田 コロナの時代になり、多くの人が外出できず出社もしない状況下で自分のことを見つめ直すようになりました。「本当に出勤は必要なのか?」「この時間は何のためにあるんだろう?」と、さまざまなことを内省します。
自分自身に問いかける時間が増えてくると、本質的に必要なものは何かということを考え始めます。仕事のこと、家族のこと、健康のことなど、これが「物語の時代」の始まりです。
こうした背景から、これからのマーケットは、本質的な消費に移っていくと思います。
例えば、ダイソンの創始者ジェームズ・ダイソンは、ものすごくきれい好きで、もっといい掃除機を求めるなかで数千個の試作品を作ったと言われています。
きれい好きで、より良い掃除機を追求したら、究極の掃除機ができた。これはダイソンの創始者自身の物語です。
人々がそれぞれの物語を語り、その文脈に沿う本質的なプロダクトやサービスが求められる。これが物語の時代です。そして、ここで力を発揮するのが「アート思考」です。
ダイソンは、自分が本気でほしかった掃除機を、本気で作った。ダイソンの掃除機は、創設者の物語で開発された商品だと思っています。
何もないところからは、何も生まれません。無駄や失敗が積み重なってこそ、新しい価値は生み出されます。
アーティストは自分しかできない唯一無二の作品を内発的動機から生み出さないと価値がありません。それを生み出すために様々な要素を盗んできます。真似るだけではダメなんです。借り物ではなく盗み、トライアンドエラーを重ねて自分のものにする。
ビジネスも同様で、新しい事業やイノベーションを起こすのであれば、たくさんの無駄や失敗を積み重ねる必要があります。
今までにないものを生み出すのですから過去の成功体験に頼るのではなく、多くの新しい失敗が成功の種になる、くらいの考えでないと、これだけモノやコトが氾濫している中で本質的で新しい価値を生み出すことは難しいでしょう。
◇デザイン思考の先【アートシンキング(アート思考)入門講座】先行き不透明なVUCA時代をイノベーション創出で乗り越えろ!
※新春セール期間は2021年1月7日まで
──今回のUdemy講座では、ロジカル思考、デザイン思考、アート思考の中で、アート思考に多くの時間を割かれていますが、どんな狙いがありますか?
柴田 アーティストは社会課題や人間の本質、苦悩や幸福と向き合い、自分の内面から作品を生み出し、自分軸で自分なりの本質と対話をしてアウトプットしています。この自分軸という点が基本的な視点だと思っています。
例えば、人気のYouTuberたちに「自分の好きな動画を作ってください」とお願いすると、何を作ったらいいのかわからず悩んでしまう人が多いそうです。
なぜかというと、YouTuberはいわばデザイン思考が中心で、ユーザーが喜んでくれそうなことを一番に考えていますよね。だから人気が出るわけですが、本人たちは自分が本質的に楽しめることが何なのかわからなくなってしまっているのでしょう。
ユーザーニーズに応えることは必要ですが、本質的にいいモノを創り出せるかというと、そうとは限らない。デザイン思考の限界を表す例だと思います。
アート思考と聞くと、絵を描かされるのではないか、自分は美術館に行かないから理解できないのではないか、と考えてしまいがちです。でも、子どものころはみんな、自由に妄想し、自由に創造していたはずなのです。ピカソは「子どもは誰でも芸術家だ。問題は、大人になっても芸術家でいられるかどうかだ」と言っています。つまり、みなさん自身の中に創造性は元々あるはずなのです。
イノベーションを生み出すためのアート思考の活用
──アート思考をビジネスに活用するには、何が必要なのでしょうか?
柴田 基本的に講座では個人のマインドシフト、つまり単なる座学ではなく思考と行動を変えることを目指しています。
どれだけみなさんが、自分はクリエイティブじゃないと思いこんでいるかということに気づいてもらい、まずはその思い込みを外したいのです。
しかし、組織の中で1人だけがアート思考になると、最悪の場合、その人の孤立につながってしまいます。
会社のイノベーションのためにアート思考を実装するためには、組織全体が変わらないといけないんですね。
なぜなら、アート思考の人のアイデアを温めて新規事業をつくろうとしても、上司が「それ儲かるの?」という一言でつぶしてしまうことが多々あるからです。
なので、組織にアート思考を醸成させようとする場合、新規事業のトライアルには決定権のある人も入って、一緒にワクワクしながら情熱を持って一体にならなければ、失敗しか生まれません。必要なことは、成功のための失敗をたくさんつくることなのです。
考えてみてほしいのは、会社の中に周りと違うことを言う人がいたとしたら、その人はアート思考なのかもしれないということです。
その人に対して「あの人変わっているね」という意識で終わらせるのではなく、「おもしろい人だね」と言えるようになるといいなと思っています。程度の差はあっても、妄想や表現というのは、みなさんがいつもやっていることなのです。
すべての人がアート思考になると組織は成り立ちませんから、もちろんバランスも大事です。
ただ、会社にいるこうした人は、イノベーションを起こす可能性も秘めています。そのことに気づいてほしいなと思っています。
◇なぜ、幸せな組織は生産性が高いのか?〜明日からできる!「Happiness at Work」実践コース〜
※新春セール期間は2021年1月7日まで
──アート思考の重要性はわかってきましたが、例えば会議で新しいアイデアを口にするのは、なかなか勇気がいる行動だと思います。どう乗り越えればいいでしょうか?
柴田 そのハードルを超えるには自己肯定感が大事です。自己肯定感が低いと「こんなアイデアだめだ」と会議で発言する気持ちになりくいのではないでしょうか。
それぞれが、「こんなおもしろいこと考えたから聞いてよ」と言える環境の組織であれば、会社の企画会議でももう少しおもしろい意見が出てくるかもしれません。
もし、出席者が「こんなこと言ったらバカじゃないかと思われるかもしれない」と感じる会議があるのだとしたら、そんな企画会議はやめてしまうべきです。
そういった環境を壊すにはまず、決定権のある人が率先して突拍子もないことを言うことが重要かもしれません。最終的に採用されなくても、みんなが自由に発想して、自由に表現できる「心理的に安全な環境」をつくることが重要なのです。そうすることで自然にエンゲージメントも生まれてきます。
──生活の中で、アート思考の力を養うにはどうしたらいいでしょうか?
柴田 自分で講義をするようになって、「アイデアの出し方」に関する本をたくさん読みましたが、最終的にはすごくシンプルでした。いろんな人がほぼ、同じことを書いています。感動したことや、気になったことをメモして蓄積します。それらを一度手放して解放する。すると、その蓄積がどこかのタイミングで突然繋がって新しいアイデアとなって浮かび上がります。
レオナルド・ダ・ヴィンチは7千ページにも及ぶメモを残したとされています。つまり興味があったことは、流さず記録しておくんですね。
メモをすることで自分の中にアイデアを蓄積し、しばらくほったらかしにして寝かせておく。そうするうちに、いくつかの引き出しが結びついて、新しいアイデアになる。
そのためにはあえて「ぼーっとする時間」をつくってみることも大事です。そうすると、いつもは考えていないアイデアとアイデアが結びつく時があるんです。そのためにぼくは週に1、2回銭湯に通うというルーティンをつくっています。
──今後ビジネスパーソンがそれぞれのキャリアを模索するうえで、アート思考はどう活用できますか?
柴田 家族、学校時代などの友だち、仕事の人間関係以外の第4の人間関係が、これからすごく重要になると思っています。
僕のアート思考のワークショップを体験した人たちで構成されたFacebookのグループがあるのですが、そこは自己肯定感が高まり、とてもフラットな人の集まりになっていると感じています。
自己肯定感が高まれば、自分を表現することを怖がらなくなり、人とのつながりも生まれやすい。参加者たちが勝手につながって、新規事業を起こしたりもしています。
異業種交流会の場などでは、企業の肩書きに人が集まる傾向がありますが、もうそれはナンセンスだなと思っています。
なので、僕が開く集まりは、いっさい名刺交換をしません。そうすると大手企業の取締役と大学生が、お互いの立場をよく知らずに会話をしていたりするんです。
企業が複業を認めて、それぞれが会社の外に利害のない人間関係をどんどんつくっていく。こうした関係を会社が積極的に取り込んでいけば、そこから新しいビジネスが生まれる可能性があると思っています。
不透明な時代を照らす「アート思考」
アーティストの思考法をビジネスの現場や日々の生活に取り入れるアート思考。多くの人にとって縁がないと感じられるかもしれないが、実際は誰もが子どものころは身につけていたとても身近な思考法だ。
AIが台頭し、人間はクリエイティブにならなければいけないということはよく語られるが、ではそのために実際に何をし、どう考えればいいのかということに対するヒントが「アート思考」にはありそうだ。
先の不透明な時代を生きぬくため、日々の仕事や、今後のキャリア形成に対して「アート思考」を活用していく、という選択肢は今後重要性を帯びていきそうだ。
新年の学びはじめに最適!講座をリーズナブルに受講できるキャンペーン実施中
今回紹介してきた柴田氏の講座を含め、現在Udemyでは様々な講座を低価格で受講できる新春キャンペーンを開催している。
オンライン動画学習サービス『Udemy』とは?
『Udemy』とは、米国法人Udemy,Inc.が運営する世界3,500万人以上が受講するオンライン学習プラットフォームだ。Udemyは、C to C(Consumer to Consumer)プラットフォームで世界中の「教えたい人(講師)」と「学びたい人(受講生)」をオンラインでつないでいる。最新のIT技術からビジネス、趣味まで幅広い領域の学びをオンラインで学ぶことができ、世界で約13万コース、57,000名の講師が登録している。隙間時間にPC・スマートフォンなど好きなデバイスからのアクセスが可能で、学習期限はないため、必要なときに必要なだけ学習を進めることが可能だ。
◆新春セール概要
【期間】
2020年12月30日 ~ 2021年1月7日
【価格】
1,200円~
◆SNSキャンペーン
Udemy Japan公式Twitterアカウントでは、新春キャンペーン期間中、抽選で10名様に「アマゾンギフト券5000円分」が当たるフォロー&引用リツイートキャンペーンも実施します。
今回のキャンペーンでは、リツイート人数が増えるにつれて、最大50人まで当選者数が増加します。
【当選内容】
抽選で10名様に「アマゾンギフト券5000円分」をプレゼント(当選者には後日DMでご連絡)
【応募期間】
2020年12月30日 ~ 2021年1月7日
【応募条件】
Udemy Japan公式Twitterをフォローし、該当の投稿に「2021年の学びの抱負」を添えて引用リツイートしてください。
【その他】
詳細につきましては公式Twitterのキャンペーンについての投稿をご確認ください。
新年の学びはじめに最適なオススメ講座
▼【 速く、シンプルに伝える 】パワーポイントで学ぶロジカル・プレゼンテーション
▼【超実践】すぐに使えるクリティカル・シンキング!〜主体性を取り戻し、ぶれない軸をつくる意思決定スキル〜
▼企画が通る!選ばれる「コンセプト」の作り方〜初心者でも価値を生むVPキャンバス〜【デザイン思考 Vol.2】
▼ワクワクを引き出すビジョン作り〜メンバーが主体的に動き出す組織を作る『ビジョンアプローチ』〜
▼<実はこれだけマネジメント>組織で成果を出せるマネージャー養成講座~上に立つ人の人間力 & スキルを磨く~
▼このリーダーについていきたいと思われる!「リーダーシップセオリー」入門講座
▼オンラインで学べる「直感と論理をつなぐ思考法」!妄想からインパクトを生みだす【ビジョンのアトリエ講座】
※表示している価格は本キャンペーン期間中の価格で、期間終了後の価格は異なります。また、紹介した講座名や講座内容は記事執筆時点のものです。講座の一部はセール対象外となります。あらかじめご了承ください。
◆過去のUdemy記事