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「『ラスベガス』スタイルの結婚式」と聞いて、何を想像するだろうか。少人数の家族や親しい友達のみが立ち会う、温かみのある結婚式か、比較的安上がりで行える式といったところではないだろうか。
実は米国を中心に今トレンドになっているのが、この「ラスベガススタイル」をよりスタイリッシュに、美しくし、ライブストリームを加えた「マイクロ・ウェディング」だ。新型コロナウイルス禍だからこそ誕生し、コロナと共生せざるを得ない現代にぴったりの結婚式といわれている。今をときめくマイクロ・ウェディング。一体どんな結婚式なのだろうか。
コロナがウェディング市場に与える損失は約710億円
米国国内で、今年予定されていた結婚式は100万件に上るといわれている。これは米国を拠点に世界15カ国のカップルを対象に、結婚式のプランニングや、アイデアの提供を行うウェブサイト、ザ・ノットによる予想だ。
しかし、3月中旬からコロナに対する規制が始まり、挙式が難しいと判断したカップルは、もともと予定していた式にできるだけ近い日にずらしたり、今年から来年や再来年に先延ばしにしたりするカップルが増えた。中には、キャンセルを決めたカップルもいた。
米国内の市場調査会社であるアイビスワールドは、コロナによる結婚式の縮小化・延期・キャンセルが、挙式やイベント催行会社に与える損失は6億7,000万USドル(約710億円)に上ると見込んでいる。
国内のカップルが結婚式に費やす平均金額は約3万4,000USドル(約360万円)だそうだ。これには結婚式、披露宴、婚約・結婚指輪の費用が含まれる。2万7,000組のカップルを対象に、結婚式の情報を提供するウェディングワイヤーが行った調査の結果だ。
アイビスワールドによれば、ウェディング産業は7,400億USドル(約78兆円)の規模の、非常に大きな産業だ。120万以上の雇用も創出している。今回の損失は数字上では、そのほんの一部。しかし、損失には変わりない。
マイクロ・ウェディングの魅力はバーチャルにあり
来年や再来年に当初の計画通り、大きな規模の結婚式を挙げようというカップルの中には、今年中に内輪だけの式を挙げてしまいたいと考える人もいる。また、コロナによる不況で失職し、収入が見込めなくなったため、結婚式をこぢんまりしたものに変更せざるを得なくなったカップルもいる。どちらにしてもひっぱりだこなのが、マイクロ・ウェディングなのだ。
マイクロ・ウェディングは、1社で複数のパッケージとオプションが用意されていることが多い。パッケージの1つを選び、好みでオプションを付け足すようにする。自分たちにぴったりくるものがなかった場合は、カスタムメイドも可能だ。
マイクロ・ウェディングの一番の魅力は何といっても家族や友人などにバーチャルで式に参列してもらえる点だ。集会に集まれる人数に制限があるコロナ禍では、それを選ぶメリットはカップル自身はもちろん、家族や友人にもある。
コロナの感染を避けるため、衛生面への配慮が式に取り入れられていることもある。ドレスコードに従った手袋とマスクや、ハンドサニタイザーが式に登場するのだ。
ゲストが簡単にストリームにアクセスできる「ラブ・ストリーム」
マイクロ・ウェディングを企画・催行する1社、ラブ・ストリームによる「バーチャル」ウェディングには、3パッケージが用意されている。
350USドル(約3万5,000円)、850USドル(約9万円)、1,350USドル(約14万3,000円)のどのパッケージにもカップルの好みを反映したウェブサイト、バーチャル・ゲストブック、皆にストリームした結婚式の映像、Eメールの技術サポートなどが含まれる。値段によって違うのは、ストリームの時間や映像用のカメラの台数などだ。
ラブ・ストリームによるストリームの良い点は、ゲストが簡単に式のストリームを見られるところ。アプリのダウンロードやログインなどの必要はなく、ウェブサイト・アドレスにアクセスするだけでいい。またゲストの数に制限はないので、好きなだけゲストを招待できる。
従来の結婚式とは違う点が多いだけに戸惑うこともありそうだが、そのためにどこかに出向き、話を聞く必要などはない。ラブストリームのスタッフとのやりとりはチャットなど、すべてバーチャルで済ませることができる。
マイクロ・ウェディング専用のアプリも
アプリとして評判を呼んでいるのが「ウェブウェッド・モバイル」だ。1日24時間、1年を通し、いつでもどこでも結婚式を挙げるチャンスを提供している。
結婚式のライブ・ストリームを家族や友人に見てもらうことができるだけでなく、米国の結婚許可証の手配など、法に基づいた、正式な結婚をする際の手続きなども請け負ってくれるのが特徴だ。費用はパッケージ内容により399USドル(約4万2,000円)、599USドル(約6万3,000円)、899USドル(約9万5,000円)となっている。
またZoomとのコラボで式と披露宴のストリームを行うアプリ「ウェドフリー」もある。ストリーム中の2時間、スタッフが司会役を務めたり、メディア機器を操ったりとかゆいところに手が届くサービスを提供している。費用は1,200USドル(約12万7,000円)。カメラの追加や、e-viteでの招待状作成、Zoomの操作方法がわからないゲスト5人のアシストなどがオプショナルとして用意されている。
マイクロ・ウェディングを催行しているわけではないが、情報提供を行っているウェブサイトもある。
例えば、「ヒア・カムズ・ザ・ガイド」。カップルが自らマイクロ・ウェディングを創り上げるために必要な情報を掲載している。とはいうものの、カップルだけでの実現は難しいので、全米のウェディング関連業者のリストがズラリと揃えられている。興味深いのは、会場や関連会社との相談、結婚式後の披露宴といった多くのことが、家から一歩も外に出ずに見学やオーガナイズができるとアドバイス。本番の式だけでなく、準備もバーチャルで、というわけだ。
来年も人気?バーチャル・ウェディング
2020年も残り少なくなってきている。来年、2021年の結婚式のトレンドはどのようになるだろうか。ライブストリームを含めたマイクロ・ウェディングの人気は続いていくものだろうか。
家族や友人が違う、遠くの国に住んでいたり、飛行機に乗ってやってくることが難しい人がいたりするなどといった状況はそう簡単に変わるわけではないだろう。
増してコロナを経験して私たちは、どんなに遠くに住んでいようとも、愛する人、大切な人と交流することの大切さを思い知った。その点から考えると、コロナの有無に関わらず、式や披露宴のライブストリームの人気は衰えるどころか、加熱するのかもしれない。
文:クローディアー真理
企画・編集:岡徳之(Livit)