NECは、卵巣がんおよび頭頸部がんの患者を対象に欧米で行われている個別化治療ワクチンTG4050の第Ⅰ相臨床試験において、がん患者の遺伝子解析で米企業と協業すると発表した。

今回協業するのは、がん治療向けウイルスベース免疫治療の設計開発を手掛けるバイオテクノロジー企業Transgene SA(トランスジーン、以下、Transgene)、生物医学ソフトウェアによりがん患者に最適な精密医療を提案するBostonGene Corporation(ボストンジーン、以下、BostonGene社)の2社。

Transgene社のmyvac®プラットフォームは、ウイルスゲノムエンジニアリングなどの革新的なテクノロジーを用いて、患者ごとに個別化された免疫療法の迅速なモジュール型製造を実現する。

TG4050は、がんワクチン接種のために最適化されたウイルスプラットフォームに基づくTransgene社独自のmyvac®プラットフォームと、NECのAI技術を用いて開発された個別化がん治療ワクチン。

同ワクチンは、ネオアンチゲンと呼ばれる腫瘍特異的な抗原変異へのT細胞応答を誘導するために、患者の免疫系を刺激することを目的としている。

ネオアンチゲンはゲノム変異に由来しており、がん領域で実績のある高度なAI技術を用いたNECのネオアンチゲン予測システムを使用して選択される。

TG4050は、最大30の患者固有のネオアンチゲンを標的とするように設計されており、Transgene社は、このウイルスによる個別化がん免疫療法における初の実証を目的として、2件の第Ⅰ相臨床試験を行っている。

同協業でBostonGene社は、2件の臨床試験に登録された患者さんから採取した原発腫瘍のゲノム解析と、トランスクリプトーム解析を実施し、TG4050への反応予測因子と、患者に投与されたワクチンへの反応を仲介する可能性のあるがん細胞の内因性および外因性因子の特定を試みるという。

BostonGene社のプラットフォームは、ゲノム解析とトランスクリプトーム解析を統合して、重大な体細胞変異の特定、遺伝子発現の評価、腫瘍の不均一性の推定、および微小環境の分類などを行い、腫瘍と微小環境の活動を同時に評価するとのことだ。

BostonGene社は、腫瘍の活動、腫瘍細胞の組成、免疫微小環境およびその他の腫瘍関連プロセスの機能を、データに基づき視覚的に把握しやすい概略図として描写した「Tumor Portrait Report」を作成する。

また、より詳細な患者さんの腫瘍の個々の発がん状態と免疫原性の洞察については、包括的なレポートとして提供するとのことだ。