JR東日本は、GNSSおよび携帯無線通信網を活用し、ローカル線への展開を目指した新しい列車制御システムの開発を進めており、同システムの踏切制御機能について、実車による走行試験を9月から八高線にて開始すると発表した。

今回開発している列車制御システムは、GNSSを用いて列車の位置を把握し、携帯無線通信網を活用した地上・車上間の情報伝送により、踏切制御および列車の速度制御を行うシステム。

このシステムは、踏切制御機能と列車の速度制御機能を、最新のICT技術と汎用技術を活用して実現する世界初のシステムとなっており、列車運行の安全性向上と列車制御システムの大幅なスリム化を同時に実現するという。

なお、同社は同システムのローカル線への導入・展開を目指すとしている。

現在の踏切は、列車の位置を検知する地上装置と、情報伝送用のケーブルや異常を知らせる信号機など、多くの地上設備により構成されている。

今回、試験を行う同システムの踏切制御機能は、GNSSにより列車の位置を車上で把握し、列車と地上設備間の伝送装置に携帯無線通信網を活用するもので、最小限の地上設備により踏切制御を実現。

また、踏切で異常が発生した場合には、無線通信により列車を自動的に停止させることで、衝突事故等を防止し安全性の向上を図るとしている。

今回の走行試験では、実用化に向けて、無線伝送の安定性とGNSSによる位置測位の精度の確認を行うとともに、システム動作の安全性を検証するとのことだ。

現在の踏切制御の概要
新しい踏切制御の概要

さらに、同システムによって期待される効果として、以下が挙げられている。

安全・安定輸送のさらなる向上

  • 無線伝送技術の活用により、踏切の異常時には列車に対して自動的にブレーキ制御を行うことが可能となり、踏切の安全性向上。また、通信に異常が発生した場合においても、列車を自動的にブレーキ制御するとともに踏切での警報を行うという。
  • 線路沿線の設備の削減により、設備の故障が大幅に減少し、輸送の安定性向上。
    例)踏切制御子・特殊信号発光機やケーブルの故障による輸送影響の削減
      台風などの災害後、確認設備の大幅な削減による運転再開の迅速化
踏切で異常が発生した際の列車制御イメージ
通信異常が発生した場合の列車制御イメージ

コストの削減

  • 線路沿線の設備の減に伴い、踏切が期に関わる初期約およびメンテナンス費用の20%程度の削減を目指しているとのこと。

なお、今回の走行試験は、2020年9月~2021年1月に八高線高崎駅~高川駅間で実施。その後、結果の評価を行い、2024年度の導入を目指すとしている。

また、列車の速度制御機能については、2021年度の試験を予定しているとのことだ。