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スポーツにITを活用し今までにない価値や体験を提供する「スポーツテック」産業が活発になっており、徐々にサービスがリリースされている。
東京オリンピック・パラリンピックでは、テクノロジーによるスポーツの進化を体感できると期待されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大により延期となり、その機会が先延ばしになってしまった。
そこで今回はスポーツテックを体感することができるサービスや取り組みを紹介する。
足の動きをデータ化する「EVORIDE ORPHE」
アシックスが販売するスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライド オルフェ)」は、履いて走るだけでランニング中の足の動きをデータ化し、一人ひとりの走り方の特徴を可視化することができる。
ミッドソール(甲被と靴底の間の中間クッション材)の内部には角速度センサおよびジャイロセンサを埋め込まれており、専門アプリと連携することで一歩ごとにデータを取得するという。
これにより、走行中の距離やラップタイム、ペース、ストライド、ピッチ、着地エリア・時間、接地の角度、着地衝撃などのデータを分析し、それらのデータとアシックススポーツ工学研究所のバイオメカニクスに関する知見を組み合わせ、脚と足元にフォーカスした5項目で走り方を評価したスコアを算出する。
また、ランナーの足運びの特徴や改善すべきポイントを可視化するほか、自分だけのコーチのように、その特徴に応じて一人ひとりにパーソナライズされたアドバイスやおすすめのトレーニングメニューを提供。ランニング中にリアルタイムで音声コーチングを受けることも可能となっている。
水泳中にタイムを表示するARゴーグル「Form Swim Goggles」
水泳のスマートゴーグルを開発するFORMの「Form Swim Goggles」は、片側のゴーグルにARディスプレイが内蔵されており、水泳中のタイムや距離、スプリットなどの情報をリアルタイムに表示する。
また、専用アプリを使用することで、ゴーグルで記録したトレーニング内容や進捗状況を共有することができるという。ゴーグルに表示する数値や、水泳中やターン後、休憩中など表示するタイミングもカスタマイズも可能となっている。
なお、同製品は、同社のウェブサイトで200米ドルで購入でき、国外発送も行なっているという。
IoTボールとスポーツ行動認識AIによる投球パフォーマンス診断「アスリーテックラボ」
続いて紹介するのは、KDDI、KDDI総合研究所、アクロディアが提供している「アスリーテックラボ」。
野球向けセンサー内蔵型ボールから取得したデータと行動認識AIを活用し、投手の投球パフォーマンス診断や投球フォーム解析をすることができるという。
同サービスでは、ボールから取得した球速や回転数のデータを同世代選手と比較し個人の投球偏差値を確認することができる「パフォーマンス診断機能」や、スマートフォンアプリで撮影した投球動画から全身65カ所の骨格点を抽出して投球フォームを解析できる「投球フォームチェック機能」が利用可能。
同世代選手の中での選手個人の偏差値からより明確な自身の立ち位置を確認できるだけでなく、データ化された自身の投球フォームを活用してフォームの改善やコンディション管理ができるという。
また、現在サービスリリースには至ってはないが、アクロディアは3次元モーションセンサーを搭載したサッカーボール型IoTデバイスを開発している。
開発中のIoTデバイスは、スマートフォンとペアリングを行い、センサーより送られてくるデータを基に「球速」「回転数」「回転軸の角度」などを専用アプリで解析できるとのことだ。
専用アプリでは、動画を同時に撮影。解析データと映像データの2つを同期させた状態で保存することができるという。
また、実際にスポーツを行っている際に使用するサービス以外にも、スポーツ観戦を通じてスポーツテックを体感できる取り組みも紹介する。
自宅から野球観戦ができる「バーチャルハマスタ」
横浜DeNAベイスターズとKDDIは、先端テクノロジーを活用して、自宅にいながら球場の雰囲気を味わい、選手を応援することができる「バーチャルハマスタ」を開発。
新型コロナウイルス感染症の影響により球場への来場人数が制限される中、バーチャルハマスタの無料トライアルを8月11日に実施。
バーチャルハマスタは、バーチャル空間上にもうひとつの「横浜スタジアム」の一部を構築し、自宅からスマートフォンやパソコン、VRデバイスを使ってバーチャルハマスタに来場できる。
また、オリジナルのアバターを使い、バーチャルハマスタ内を自由に動き回りながら、他のファンとコミュニケーションも取ることができ、一緒に応援するなど球場の雰囲気を楽しめる次世代型のスポーツ観戦となっている。
両社は、横浜DeNAベイスターズの各種事業領域との連携強化を目的とした「ビジネスパートナーシップ」を締結している。
au 5Gを取り入れたスマートスタジアムを構想するとしており、横浜スタジアムのau 5G対応のほか、横浜DeNAベイスターズ選手に対するICT技術を使ったトレーニングを実施するとのことだ。
ロボットを活用したリモート観戦席「Future Box Seatβ」
電通は、ロボットを活用したリモート観戦席「Future Box Seatβ」の実証実験をファイターズ スポーツ&エンターテイメント社と共に、7月14日に札幌ドームにて開催されたのプロ野球公式戦で行っている。
この取り組みは、ロボットを通して遠隔で、①選手に応援の拍手を送れたり、②ロボットの頭についたカメラを自由に360度動かせたり、③モニターに自分の顔を表示し、選手と会話を楽しめるなど、会場にいるかのように観戦ができる仕組みとなっている。
スポーツだけではなく、音楽コンサートや劇場公演など、大小問わず、さまざまな会場で行われるエンターテインメントのイベントにおいて、活用することが可能とのことだ。両社は、2021年の実用化を目指しているとしている。
発展途上のスポーツテック
今回紹介した、スポーツテックのサービスや取り組みは一部に過ぎず、観戦や応援の新しい形の提案や、選手のトレーニングやコンディション管理をサポートするなどのサービスを開発するスタートアップが世界中で次々と登場している。
日本では東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えているということもあり、今後スポーツテックの普及が急速に進み、私たちの生活との接点が増えることだろう。
これを機にスポーツ観戦や運動など、各々にあったスポーツテックを体感してみてはいかがだろうか。