大事な選考を通過するための面接の準備。コロナの状況下でリモート採用が増えるにつれ、「リモート面接」への対応も必要となってきている。

今回は、国内外で実際にあったトラブルや、そうしたトラブルに冷静に対処するための方法など、リモート面接の対策と心構えをお伝えする。

ビデオ面談中のトラブル実例

多くの人が緊張して迎える採用面接や選考過程の重要なプレゼンテーション。普段でも緊張を強いられるが、リモート面談の場合、自分だけでなく、複数の面接官の環境も影響する。参加者が増えれば増えるだけ、予想外の音声や背景のトラブルが起きている。

6月上旬、ベネッサはオランダにある大学院での博士論文の公開発表を、緊張の面持ちで迎えていた。彼女自身はベトナムに在住し、研究と講義をしており、5年かけた博士過程をようやく論文の口頭試問をもって終わらせるところだ。

博士論文の審査をする教授は合計5名。各人が別の場所におり、オランダを中心にインドから参加する教授もいた。公開口頭試問のため、Microsoft Teamsのリンクを渡された知り合いや他のクラスメイトも参加できる形式で、参加者は40名を超えていた。

最後の5人目の教授の質問中、いきなり赤ちゃんの泣く声が画面に響き渡った。教授は質問を続けるものの、雑音として内容に集中できるものではなかった。ファシリテーターは、「参加者は全員マイクをミュートにするよう、再度確認お願いします」と途中注意を促したが、赤ちゃんの声とそれをあやす母親らしき声は5人目の教授の質問中続いていた。ベネッサは完全に質問を把握したかわからない状態で時間が来て答えなければならなかった。

後からわかったことだが、この時の赤ちゃんの声は、5人目の教授のところから出ていたものであった……。

別の事例として、スーザンは重大な選考の最終選考で、リモート審査を迎えていた。審査員は6名でこれも各地から参加しており、彼女は最終選考のトップバッターの面接者と聞いていた。

当日、彼女のプレゼン時間は15分与えられていたが、ファシリテーター側の電波が不安定となり、プレゼンは途中で中断された。他の審査員には聞こえているものの、ファシリテーターがプレゼンの声が聞こえないという状況だった。

再開後、そこから中断分を延長して継続してほしいと伝えられたものの、スーザンは何分延長となったのかわからず、結局最後まで到達せずに彼女のプレゼンは終了となってしまった。彼女が入念に準備してきた内容が伝えられずに終わってしまうという、とても残念な結果となった。

これらは参加者自身の不手際ではないものの、リモート面接ならではのトラブルだ。不運なことに、彼女たちの本来の成果が出し尽くせなかった例ともいえる。審査される側だけでなく、採用や審査する側も最善を尽くす適切な準備が必要と言えそうだ。

リモート面接、避けられないトラブルにも対応するための準備

こうしたれ状況を受け、海外メディアではリモート面接への対策の記事が増えている。その中からいくつか必要な準備を挙げ、以下にまとめた。

ソフトウェアのアップデート・終了や備品のチェックをしておく
PCや携帯などの機器は、面接前に充電しておき、電源の確保があるかなどもチェックする。面接中にPCが急にソフトウェアのアップデートなどを始めてリスタートをしてしまわないよう、全てのソフトウェアのアップデートは面談前に完了しておくのがよい。背景で起動しているYouTubeなどのプログラムやBluetoothなどの接続も終了や切断しておくと、間違って押して音楽が再生されるなどして慌てずに済む。携帯などセカンドデバイスを側においておく時は、サイレントモードにしておくこと。

ビデオツールの確認とダウンロード
ZoomやMicrosoft Teamsなど先方指定のビデオツールは、事前に友人や自分の他のデバイスなどでテストをしておく。また、これらのツールをインターネットブラウザを通じて使用していると、画面共有などの機能に制限がかかって使えない場合もある。面接では即興でプレゼンやプロファイルを見せたい時など、画面共有が必要になることもあるかもしれない。ブラウザでの接続より、ダウンロードしたアプリケーションからの接続が懸命だ。

Wi-Fiの接続性を高めておく
リモート時のトラブルは、インターネット接続の不良が原因である場合が多くある。接続やフリーズが多い場合は、壁越しではなくルーターのある部屋からのアクセスが好ましい。さらにWi-Fiを早くするには、接続されているデバイスの数を少なくするとよい。特にリモート作業の仕事に応募する人は、面接で強いWi-Fi環境にいることを証明することが賢明だ。

静かで周りに人がいない環境で行う
できる限り「人」「物」「雑音」が入り込まない個室環境を用意する。イヤホンやヘッドホンを準備し、環境によってはいつでも装着できるように準備しておく。

身だしなみを整え、デバイスのカメラ位置はできるだけ目線の位置に合わせる
リモート面接でも、もし立ち上がってお辞儀をした時などに、下も映る可能性がある。パジャマのズボンが見えないように、通常の面接のように全身身だしなみを整えて臨む必要がある。また、PCでもモバイルでも、画面を出来るだけ自分の目線の高さに合わせるのがよい。目線よりも低い位置にカメラを設置すると、面接官を見下ろしているように映ってしまい、相手に威圧感を与えかねない。できるだけ自分の目線に持ってくるように本など下に敷いて高さを調節する準備をする。

不具合が起こってしまった場合は、なによりも落ち着いて対応することが第一

上記のような準備はしたけれども、相手の環境や通信環境によっては、不具合が起こってしまうこともある。リモート面接のトラブルでは、接続切断まではいかなくとも、カメラ映像が止まる、音が途切れる、雑音が入る、エコーがかかるなどの、トラブルが起こることが多くある。そのような時も、慌てるのは厳禁で、なによりも落ち着いて対応することが第一である。

相手を気遣って「聞こえておりますでしょうか?」という声掛けを手振りを入れてすることや、チャットからメッセージを送るなどの対応が必要だ。必要に応じて一度切って、再接続することもあり得るため、面接時間は通常より長めに取っておくと、次のスケジュールへの支障もでない。

万が一、接続切断されてしまった場合は、素早くルーターをリセットしてパソコンを再起動し、接続しなおす。もしくは、2台目の機器があればそれを作動し、そこから入れる準備もしておくとよい。

面接再開後、相手にこちら側に非があれば理由と丁寧な謝罪をしてから、冷静な様子で続けよう。スーザンの経験からも、プレゼンに必要な時間は、中断して再開するのに要する時間も見ておくとよい。

切断によって時間がきてしまい、やむなく終了になるケースもあるかもしれない。このような場合は、理由がどちら側にあっても、必ず面接官などへメールやメッセージを送るなどのアフターフォローがよいだろう。

面談する側、される側ともに極力事前準備でトラブルを回避するのが好ましい。普段とは違った事前準備をリスト化して前日にしておけば、当日に焦らなくともすむだろう。それでも起きてしまう接続不具合や突然のトラブルには、お互いのことを考慮して、冷静かつ迅速に対処する。そうすることで、柔軟に対応できる能力をアピールするチャンスにもなるだろう。

文:米山怜子
編集:岡徳之(Livit