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新型コロナウイルスによる自粛により、世界中の多くの企業でテレワーク(在宅勤務)の導入が進んでいる。ZoomやMicrosoft TeamsといったWEBシステムを活用したビデオ会議やオンライン商談、オンラインインタビューも一般的になりつつあると言えるだろう。
緊急事態宣言の解除後はオフィスに人が戻り始めているものの、一部の企業では今後もテレワークを継続する意思を表明。Twitter社は「希望する社員は恒久的にテレワークを認める」と、日本大手のカルビーでは「7月以降も原則テレワークを続け、業務に支障がなければ単身赴任も解除して家族と同居できるようにする」と発表し、話題を呼んだ。
驚異的なスピードで働き方が変化するにつれ、より柔軟な暮らし方の選択肢も増えている。今回は、「多拠点居住」や「旅するような暮らし方」を叶えてくれる独自サービス3つを紹介する。
1.外泊した分だけ割引される「unito」
頻繁に移動する暮らしをしたいと考えるとき、もっともネックになるのが「家賃」と「荷物」だろう。2020年2月にローンチした「unito」(ユニット)では、その2つの課題を解決に導くような配慮がされている。
最大の特徴は、外泊した分だけ家賃が割引される「「Re-rent(リレント)」機能で、これは日本初の料金システムだという。
例えば、ベッド・デスク・クローゼット・冷蔵庫・Wi-Fiが完備された渋谷の個室(上の写真の部屋)に滞在し、月に10日外泊した場合の家賃は以下のとおりだ。
134,000円(元家賃)ー45,000円(割引)=89,000円(最終家賃)
1泊4,500円として外泊分が割り引かれ、最高で15日まで外泊ができるとのこと(借りる部屋により諸条件は異なる)。よりお得なドミトリー(ポッド)タイプの部屋は、78,000円から用意されている。なお、初期費用は別途となる。
外泊している間、その部屋をホテルとして貸し出すことで、外泊割引のシステムを実現しており、シェアハウスとAirbnbを融合させたようなサービスだ。
現在は、個室ありのシェアハウスタイプ、ドミトリータイプ、ホテルをあわせた200以上の部屋が対象で、アクセスの良い都心の部屋が中心。シェアタイプの家の場合、共用のキッチンやバスルーム、洗濯機などがあり、基本的な調味料や洗剤類は用意されているため、余計なモノを増やさずに生活しやすくなっている。
外泊するときは鍵付きの保管場所が提供されるため、すぐに必要なもの以外は置いておくことができる。非対面、スマホだけで即日入居が可能という手軽さも、ネット世代の若者には喜ばれるポイントだろう。
基本的な家賃は高めに設定されているものの、出張が多い人、友人・恋人宅、実家など自宅とは別の場所に泊まることが多い人、頻繁に旅行をするような人だと、一般的な住宅を借りるよりも家賃を下げられる可能性がある。
利用者の中には、アクセスの良い第2の自宅として、集中するためのオフィスとして借りている人もいるそうだ。
それぞれの用途、スケジュールに応じて臨機応変な暮らし方を好むミレニアル世代には、魅力的かもしれない。
2.定額で世界中住み放題「HafH」
2019年のローンチ以来、驚異的な勢いで拠点を増やし続けているのが、世界中に定額で住める「HafH(ハフ)」だ。現在、22カ国に277の拠点(2020年6月時点)を構えており、国内の定額住まいサービスの中では、群を抜いて広範囲の地域をカバーする。このネットワークこそHafHの最大の強みだろう。
筆者自身、海外ノマドワーカーとして生きていることもあり、ローンチされた当初は、周囲の海外ノマドや固定の家を持たずに暮らすアドレスホッパーたちの話題をさらっていたことを記憶している。
HafHのネットワークには、台湾、マレーシア、バリ島、ホーチミン、オーストラリア、ハワイなど、旅行者に人気の地域が多数含まれる。豊かな自然に囲まれた施設やノスタルジックで写真映えしそうな内装など、「旅をしながら暮らしたい」という欲求に応えるサービスだと言える。
現在の料金プランは以下の4つ。
1.おためしHafH 3,000円(滞在2日)
2.ちょっとHafH 16,000円(滞在5日)
3.ときどきHafH 32,000円(滞在10日)
4.いつもHafH 82,000円(滞在1ヶ月)
いつもHafHには「風」と「土」の2タイプがあり、拠点をなくして常に移動していたい人は「風」を、拠点は持ちつつ時々移動したい人には「土」がオススメだ。「土」プランの場合、1つの専用拠点に入居した状態で、月に10日までHafHのネットワーク上の拠点に滞在できる。
ただし、個室の滞在は毎月1日に付与されるHafH Coinの使用が必要で、このHafH Coinは購入することができない。個室にある程度連続して宿泊するには、HafH Coinを溜めておかなければならない仕組みがあることは注意しておこう。
とはいえ、敷金・礼金・保証金などが一切不要で、暮らしに必要な家具類などは完備されているため、HafHを利用することで移動しながら暮らすことは容易になるはずだ。
加えて、テレワークをしやすい施設が多いのも魅力。Wi-Fi環境が整った併設のコワーキングスペースで集中して仕事をしつつ、合間に周囲の人と雑談を交わし、出会いを楽しむ人もいるという。
現在、EU諸国をはじめ、少しずつ海外との国境が開きつつあるため、もう少し情勢が落ち着けば、HafHを使って「旅と暮らしの両立」が再び楽しめるようになるかもしれない。
3. 初期費用なし・15,000室掲載の「NOW ROOM」
そのときの予算や気分に合わせて、住む場所を気楽に変えたいという人には、初期費用・審査なし、5秒で家が探せるとうたっている「NOW ROOM」(ナウルーム)が需要を満たしてくれるかもしれない。
2020年5月にローンチされたばかりの「NOW ROOM」は、フリーランスや在留外国人を中心とした「入居審査に通りづらい人々」の課題を解決し、多様化するライフスタイルのニーズに応えることを目指している。
既出の2つのサービスも柔軟性があり誰でも入居しやすいサービスだが、「NOW ROOM」は15,000室という部屋数の多さが目立つ。
アプリをダウンロードして部屋を検索してみると、月4万円台で住める格安のドミトリーから、月15万円以上のゆったりと過ごせるラグジュアリーな部屋までがそろう。現状は東京・大阪・福岡のみでの展開となっている。
中には、浅草橋駅から徒歩10分と利便性が良く、鍵付きの個室でありながら45,000円という格安の部屋も存在していた。初期費用なし・家具付きであることも踏まえると、かなりお得なのではないだろうか。
さまざまなタイプから気軽に部屋を選べるため、1ヶ月単位で住む場所を変えてみる、気分転換に引っ越しする、旅行で外泊が多い月は家賃が安い部屋で済ませる、なんてこともできそうだ。このコロナ禍で急に引っ越しが必要になった人にとっても、メリットが多いサービスかもしれない。ただし、荷物は引っ越しの都度すべて移動する必要がある。
現在の世界情勢だと、自由に国境を超えて旅をしながら暮らせるのはもう少し先になりそうだが、今後もテレワークが続けば、これらのサービスのメリットを最大限に活用し「旅と暮らしを両立させる生活」は、もはや夢ではないと言えるのではないだろうか。
いずれもサービスもまだまだ発展途上であり、今後も部屋数の拡大やより柔軟な暮らしを叶える新制度など、さらなるサービスのアップデートに期待したい。
※掲載内容は執筆した7月初旬時点の情報です。
文:小林香織