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昨今バズワードのように語られるブロックチェーン。その歴史は2009年に始まったばかりだ。ブロックチェーンは、FinTechの一種であると思われがちだが、既に金融分野に限らず幅広い領域での導入事例が登場してきた。例えば教育分野では学位の詐称を防止するために、一次産業では産地情報の改ざんを防止するために、それぞれ国内でも活用が進んでいる。
そもそも、なぜブロックチェーンはこれだけ注目されているのだろうか。未来の社会にブロックチェーンは必要になるのだろうか。
「価値」に革命を与えたブロックチェーン
ブロックチェーンが注目されている理由と合わせて、まずはブロックチェーンについておさらいしておこう。
ブロックチェーンの歴史は、インターネットの歴史にとても似ている。「インターネットとは?」といわれて明確な定義が存在しないのと同様、「ブロックチェーンとは?」といわれても明確に定義することはできない。しかし、インターネットの定義が三者三様のまま我々の社会を変革したように、ブロックチェーンの定義も三者三様のままでいい。むしろ、誰の干渉も受けないのがブロックチェーンの特徴ともいえるのだ。
インターネットの普及により、我々人類は「距離と時間」を超越した。地方に住む家族にメールを送ることができ、直接顔を合わせなくても自宅で仕事ができる。これが、インターネットの起こした情報革命だ。
一方のブロックチェーンは「価値」に革命を与える。ブロックチェーンに少し詳しい人であれば、「価値のインターネット」という表現に違和感は感じないだろう。ここでいう価値とは、インターネットによってやり取りされるデジタルデータの内容を意味する。
先述の通り、インターネットの普及により我々は、距離と時間を無視してコミュニケーションが取れるようになった。この背景にはデジタル化の影響が大きく存在している。一方で、まだまだ不都合な仕組みも残ったままだ。
インターネットは性悪説から性善説へ
現状のインターネット通信における最大の課題は、やり取りされるデジタルデータの信憑性を証明することができない点にある。
例えば、AとBという人物間で契約書が作成されたとする。Aがメールで送った契約書にBが署名する場合、BはA本人から送られてきた契約書なのかどうかを証明することはできない。AからBにメールを送る途中でハッキングに合い、契約書の内容が書き換えられている可能性がゼロではないからだ。
こういった一種の性悪説の元に現状のインターネットは成立している。そのため、本人であることを確認するために印鑑が必要になったり、ファイルとパスワードを分けて送ったりしているのだ。(※ファイルとパスワードを分けてメールで送るというよくあるこの行為は、同じ通信プロトコルを使用しているため実は全く意味がないことではある)
これを解決するのがブロックチェーンだ。つまり、インターネットによってやり取りされるデータの内容を証明するのがブロックチェーンである。具体的には、電子署名とハッシュ関数、そしてタイムスタンプの仕組みを応用する。
ブロックチェーンで管理されるデータには全て、一意の電子的な署名が施される。まずこれにより、誰のデータなのかが明確になる。電子署名が施されたデータは一定量にまとめられ1つのブロックとして扱われる。
なお、ブロックが作られると同時に時刻も付与されるが、これをタイムスタンプと呼ぶ。タイムスタンプが付与されたブロックは、時系列に従って連結されていく。これこそ、ブロックチェーンがブロックチェーンと呼ばれるようになった所以だ。
ブロックが連結される際、後方に接続されるブロックには直前のブロックをハッシュ化した値(ハッシュ値という)が含まれる。そのため、特定のブロックの内容を改ざんするには、その前に連なるブロック全ての内容を改ざんしないといけない。これが、ブロックチェーンの耐改ざん性である。なお執筆時点で、ブロックは60万以上接続されている。
ブロックチェーンによるゲーム革命
データの内容を証明できるようになると、インターネットが性悪説から性善説に変わる。この影響は計り知れない。具体例をいくつかみていこう。
まずは印鑑を無くすことができる。ブロックチェーンによって、デジタルデータの内容を証明することが可能になるからだ。
続いてはゲームについて紹介する。ブロックチェーンは、デジタルデータの内容を証明できる仕組みと説明したが、これは言い換えると当該のデジタルデータに一意性を持たせられるということになる。つまり、ブロックチェーンで管理されるデジタルデータはコピーすることができず、世の中に唯一無二のものとなるのだ。
この特性が活きるのがゲームである。「ブロックチェーンゲーム」と呼ばれ、ゲーム上の全てのキャラクターやアイテムをブロックチェーンで管理する取り組みが進んでいる。つまり、キャラクターやアイテムに一意性を持たせることができるのだ。すると、そのキャラクターやアイテムには価値がつくようになり、ユーザー同士で売買されるようになるのだ。
昨今eスポーツが少しずつ熱を帯びてきているが、いよいよ本格的にゲームをするだけで生きていけるようになってきている。これは、ゲームの枠組みを超えた価値の革命だといえるだろう。
サーバーに負荷がかからないのもポイント
最後に、ゼロダウンタイムについて触れておきたい。ゼロダウンタイムとは、サーバダウンが発生しないことを意味する。サーバダウンは、予期せぬ瞬間的なアクセス増による負荷が原因で発生する。サーバがダウンしていると、当然ながらそのWebサービスは使用することができない。
例えば、年末年始の「あけおめLINE」や「金曜ロードSHOW!」の『天空の城ラピュタ』放送中の「バルス」ツイートがあげられる。SlackやGitHubで障害が発生し使用できなくなったことで、仕事にならなくなったという経験をした人も多いだろう。
このようなサーバダウンが発生すると、ユーザーが不便を被ることはもちろんのこと、企業側にも多額の損害が発生する。なぜなら、サーバダウン中はサービスを提供できないからだ。そのため、大規模サービスになるほど企業はサーバの増強に高額な費用をかけている。
一方で、ブロックチェーン上に構築されたWebサービスには、このようなサーバダウンが存在しない。インターネットが特定の数カ所に散らばるサーバから構築されている一方、ブロックチェーンは世界中に散らばる数万個のノードによって構成されている。これらが同時に全て破壊されない限り、ブロックチェーンは止まらないのだ。
ブロックチェーンが浸透した社会「Web3.0」
ブロックチェーンがどれだけ社会を変革する可能性を秘めているか感じていただけただろうか。ブロックチェーンは、インターネットによって成立している現在の社会を、根底から変える可能性がある。
このようなブロックチェーンによって成立する性善説の次世代社会のことを、世界的にWeb3.0と呼んでいる。Web1.0で情報がデジタル化され、Web2.0でデジタル化された情報が通信されるようになった。Web3.0では、通信される情報の内容を証明できるようになる。
従って、Web2.0における情報の内容を証明するために存在していた第三者は、Web3.0の時代で生きていくことが難しくなるかもしれない。
文:田上智裕