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緊急事態宣言の影響によって、企業は従来とは違った働き方を求められるようになった。
その中で、テレワークはその柱として注目されてはいるものの、厚生労働省とLINEが4月12日から13日にかけて実施した調査では、全国でのテレワーク導入率は27%。東京都の52%が全体平均を押し上げていることもあり、まだ普及率は高くないといえる。
東京商工会議所の調査「新型コロナウイルス感染症への対応について」(4月8日発表)によると、テレワーク実施を検討する上での課題として「社内体制の準備」「機器やネットワークの整備」「セキュリティ上の不安」といった項目が上位を占めている。
また、そもそも「出勤せず、同僚と机を並べずに働く」ということ自体に対する抵抗感や効率低下などへの懸念によって、テレワーク取り入れに足踏みしてしまうケースもあるだろう。特に中小企業でその傾向が顕著なようだ。
そこで本記事では、中小企業の経営者の方に向けてテレワークのメリットについて、AMP編集部の実例を交えながら解説する。また、テレワーク導入時に必要となるおすすめPCやWeb会議システムにも言及しているので、ぜひ参考にして欲しい。
テレワークは、時代に求められる働き方なのか
テレワークはここ数年、都市圏を中心とした電車通勤の混雑によるストレスの緩和、育児や介護をしながら働くための環境整備の促進から提唱されてきた。加えて今回、冒頭のとおり、緊急事態宣言に基づく政府や自治体からの出勤自粛の要請によって、臨時的にテレワークを導入した企業が増えた。
現況では、オフィス内での感染リスクを下げることはもちろんだが、子どものいる従業員にとっては学校や保育施設の閉鎖・日替わり登校などによって、通常どおりの出勤ができない状況の対応策にもなっている。
こうした社会的な背景によってテレワークが浸透しつつあるものの、経営や業務の推進という意味ではテレワークがどんなメリットをもたらすのかわかりづらい面もたしかにある。
AMPがビジネス系Webメディアという立場で、さまざまな企業からよく聞くのは次のような声だ。
「うちの業種はテレワークに向かない」
「従業員が少ないから、導入してもしなくても変わらない」
「顔を見て仕事をしないと成り立たないことが多い」
結論を先に述べてしまえば、これらのケースであってもテレワークは一定の効果を発揮する。さらにテレワークを積極的に行うことは、経営上メリットが大きいといえる。
以下ではその理由と、経営視点におけるテレワークのメリットについて、いくつかの事例を交えながら紹介していく。
緊急時でなくともテレワークは企業価値向上の手助けとなる
テレワークを取り入れた中小企業の経営者や総務・人事担当はこの制度をどのように捉えているのだろうか。
ここではまず、実際にテレワークを導入し、自社の経営状態に変化が起きた事例を紹介する。
オフィスの必要性や、あり方を見直す企業が増えてきた
今回の自粛期間を契機に、一部の企業ではオフィスを解約する動きも出始めている。それは必ずしも、賃料が払えないといったネガティブな理由ではない。
筆者の知人が勤める、都内にある従業員80名規模の技術系の企業では、執務スペースと実験スペースの2フロアを借りていた。しかし3月末から全面的にテレワークを導入し、2カ月間が経過したところで、執務スペースの必要性がないという結論に達したそうだ。そしてオフィスを解約したという。
オフィスの賃貸料は毎月発生するコストであり、これをカットすることで販管費の削減につながる。上述の企業では実験スペースが残っているが、ソーシャルメディアではスタートアップ経営者が全オフィスを撤廃したという話も複数見かけるのが実情だ。
上記とは別のケースを見てみよう。従業員40名規模のECサイトなどのコンサルティングを行う企業では、オフィスの解約はせず、スペースの使い方を変えるべく内装を変更中とのことだ。元から用意していたクライアントのECサイトの商品を撮影するスペースを拡大し、動画撮影ができるスタジオを目指しているという。そのために執務スペースを間引いた。
これらの例は、オフィスというこれまで変えられないと思っていた前提に踏み込み、「リアルな“場”として業務に本当に必要な空間は何か」、そのあり方をアップデートしたことがポイントだ。もちろん最低限の環境を用意する必要はあるが、従業員のデスクとパソコンがある場所=オフィスという概念ではなく、生産性と効率化の最大化を体現する好例かもしれない。
こうしたメリットは、上で挙げたような業種や従業員数といった条件に関係なく享受できるものだろう。
また、もう一つの懸念である「直接顔を合わせない不安」について、上で紹介した2社はどのように考えたのだろうか。話を聞くと、普段からチャットやメールなどを使い、業務上の連絡事項を文面にする文化が根付いていたので、その懸念は必要なかったという。
打ち合わせも直接会わないとはいえ、ビデオ会議ツールを活用すれば相手の顔を見ながら話せるので、文面だけでは感じ取れない機微も汲み取りやすいと話す。
優秀な人材の確保、採用ブランディング手段に
この考え方を突き詰めていくと、オフィスでないとできない業務は絞られてくる。
言い換えれば、オフィスではない場所でできる業務が増える。これがどのような意味を持つか。
これも上記で挙げた技術系企業の話だが、従業員の中には「基本的にはテレワーク、何かあればオフィス出社」という働き方をしている社員もいる。しかも部下を持つマネージャー職で、さらに言えば営業職だという。
ソーシャルメディアでは、緊急事態宣言を機に「東京に住むデメリット」を意識した人のコメントが目立つようになった。彼らの主張は「テレワークが可能ならば、高い家賃と満員電車に我慢してまで東京に住む必要はない」という論調だ。
日常的なリモートワークを可能とする企業であれば、従業員を募集するときに勤務地という制限がなくなる。
これは地方の企業にすれば都会に住む人材にアクセスできることにつながり、逆に都市部の企業は地方にいる優秀な人材の確保にもつながることになる。また、テレワークを推奨しているというイメージが外部に広まれば、採用ブランディングとしても効果を発揮するだろう。
テレワークを選択肢として持っていない企業のリスク
テレワークは人材獲得、従業員満足度アップのチャンスにもなる一方で、企業にとっての「標準装備」として一般化することも十分想像できる。そうした場合、求職者や従業員にとってテレワーク制度がないことが企業のマイナス評価につながる可能性もある。
現在は大企業やWebサービス系の企業での導入が目立つが、総務省や各自治体によるテレワーク導入補助制度を使うことで、今後は企業規模を問わず導入事例が生まれてくることが考えられる。
また別の観点では、いつ来てもおかしくないと言われている首都直下型地震をはじめ、台風などのオフィスに通うことができない状況が訪れるリスクもある。
以上を踏まえると、テレワークは遅かれ早かれ導入する日がやってくる制度である可能性が高く、その準備ができていないことが経営上のリスクにもなりうる。
テレワーク体験から見えたメリットとデメリット
前項では中小企業がテレワークを導入した結果やメリットについて述べた。
ここからは、現場レベルでのメリットを読者の方々に知っていただきたく、AMP編集部メンバーである筆者がテレワークを実践した際の感想をお伝えする。
▼移動時間が減り、作業時間の確保が可能に
筆者は現在AMPを含む複数のメディアの編集チームに所属しており、フルタイムの契約ではないのでこれまでも状況に応じて自宅で仕事をすることがあった。それ以外では契約している企業のオフィスに行き、従業員と同じようにデスクワークをしたり、打ち合わせを行なっている。それぞれの編集チームは多くても8人程度と、比較的小規模の人員で構成されている。
契約先の企業に出向くことがない状況下となり、移動はさらに減った。勤務時間の8時間の中で、移動の割合がゼロになると、純粋な業務だけに時間を割くことができる。
テレワークを行ってみてまず感じた大きなメリットとしては、打ち合わせが続く日でも、「片付けるべき作業に着手できずに1日が過ぎた」ということが減った点だ。特に人員が少ない企業の場合、客先に出向いて営業もすれば、オフィスに帰って事務処理もする、といったケースもあるだろう。
移動中にスマートフォンやタブレットを使った業務が効率を高めるのと同じように、移動自体がなくなることにもそれと同等以上の効果がある。
▼会議はオンラインのほうが良い場合もあることに気づく
緊急事態宣言下では、あらゆる打ち合わせの場がオンラインに移行したことで、
一部は今後もオンラインで代替されると考えるようになった。その理由は、移動時間の削減にも紐づくが、オンラインでの打ち合わせは、双方にとって“会う”ことのハードルを下げるからだ。
例えば、相対的に優先度が低い打ち合わせ、あるいは関係性を保つ上で断りづらい打ち合わせなどをオンラインにすることで、時間の使い方をコントロールしやすくなる。
また、せっかく足を運ぶ・来てもらうからという理由で、「1時間は確保しないと失礼」という感覚はオンラインにするとなくなる。逆に、「オンラインで30分だけお時間いただきたい」といった依頼もしやすくなる。
トヨタの豊田章男氏はビデオ会議ツールを使うことで、従来だと1カ月以上先の予定を抑えなければならなかった海外の競合ブランドのCEOらとの会話が、逆にしやすくなったという。
事前に知っておくべき懸念点
テレワークになったことで新たな懸念も生じる。
例えば経理業務においては、制度の調整などが必要になる。受発注書類や請求書など、印鑑が必要な場面もあり、それを解決するサービスも既にあるが、有料であったり企業方針から取り入れづらい場合もあるだろう。
また、意外な盲点となるのが作業環境だ。
筆者は独立して外部企業とのやりとりが増えた頃、唯一のパソコンが小さいモニターのノート型だったため、作業効率UPのためモニター、キーボート、マウスを購入した。それによって快適に作業が行え、作業環境も業務効率に大きく影響を及ぼすと実感した。
テレワークの増加により、パソコン用品販売店ではビデオ会議用のウェブカメラが4月半ばから「売り切れ、5月末入荷」となってしまうケースも散見される。
それ以外にも重要となるのは、使用するパソコン自体のスペックだ。パソコンのスペックによってはツールの機能が正常に作動しないケースもあるようだ。
今後のオフィス機器はテレ/オフィスワークに対応できることが必須
時代の流れや業務効率、人材に対するアプローチの手段などを鑑みると、今後はテレワークにもオフィスワークにも対応できるパソコンを活用することが望ましい。
2020年4月時点で338企業の会員を有し、総務省や経産省といった省庁とも連携しながらテレワークの普及活動を行う「一般社団法人日本テレワーク協会」によると、テレ/オフィスどちらのワークスタイルにも対応できるパソコン選びのポイントとして、以下の条件が拳げられるという。
・生産性を高める性能があること
・安心・安全に使えること
・ビデオ会議に対応できること
・持ち運びしやすいこと
・セキュリティ対策が万全なこと
下記は上記条件を満たしている推奨パソコンだ。なおこれらの各パソコンには最新 Office 2019 が搭載されているので、安心してすぐに使うことができる。
以下、それぞれの特徴を見ていこう。
NEC VersaPro J タイプVM
デスク業務の使いやすさ、スムーズな持ち運びを両立する、スリムベゼルを採用した「14型フルHD液晶」を搭載。A4ファイルサイズの鞄にすっぽり入るサイズで、オフィス内の移動を考慮したコンパクト性も備えているため、フリーアドレスオフィスでの活用にも適している。
より詳しく知りたい方は、こちらへ
dynabook G/GX/GZ
ボディは薄く、軽く、26方向の落下にも耐える堅牢さを持つ。高性能、長時間駆動、拡張性、安全性など、ビジネスに求められる要素を何ひとつ犠牲にすることなく、すべてを満たすことを目指したモバイルノートPC。
より詳しく知りたい方は、こちらへ
DELL New Vostro 15 5000 (5501)
日々の快適なビジネスをサポート。耐久性に優れた、Office 2019搭載ビジネス向け15インチ ノートパソコン。Webカメラのプライバシーシャッターをはじめとする高度なセキュリティ機能を搭載。
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HP Elite Dragonfly
現代の多様な働き方に柔軟に適応し、時間も場所も選ばず最高のパフォーマンスを可能にするビジネスコンバーチブルPC。筐体は重量999gと軽量ながら、圧倒的な堅牢性と多彩なセキュリティ機能を兼ね備えている。
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FUJITSU LIFEBOOK U9310/D
片手で軽々、カバンに入れて持ち運びたくなるモビリティ、多彩なセキュリティも備え、安心で快適なテレワークを実現する超軽量モバイルPC(約777g、約15.5mm)。Webカメラ、有線/無線LAN、USB Type-Cなど装備も充実。
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Lenovo ThinkPad X1 Carbon
モバイル性能とビジネスシーンでのパフォーマンスを徹底的に追求。究極のパフォーマンスを実現しながら、天板にカーボン繊維素材を使用し、妥協なき堅牢性を備えたプレミアム・モバイルPC。
より詳しく知りたい方は、こちらへ
Microsoft Teams を選ぶべき4つのメリット
テレワーク・オフィスワークに有用なPCを選んだ次は、最適なWeb会議システムを選ぶ必要がある。
現在、AMP編集部ではMicrosoft Teamsをメイン業務で採用している。数あるWeb会議システムの中でなぜMicrosoft Teamsを選んだのかと言えば、最大の理由はセキュリティレベルの高さだ。
普段、大企業や上場企業のブランディングを支援する際に、プロジェクトに利用するツールのセキュリティ条件などを求められることが多々ある。その際に、脆弱性のあるツールやセキュリティ面での不安要素があるものは当然使えない。その点、Microsoft Teamsであればまず問題がない、という判断をされるため非常にコミュニケーションがスムーズになるためだ。
そのほか誰にとってもMicrosoft Teams をおすすめできる理由として、以下の4つがある。
①SNS感覚でコミュニケーション可能なチャット機能
②プロジェクトを円滑にするビデオ会議システム
③チームでのOfficeファイルの共同編集
④堅牢で高いセキュリティ
①SNS感覚でコミュニケーション可能なチャット機能
ビジネスコミュニケーションにおいて、まだメールしか使ったことがない方は、メールの文頭に「お世話になっております」や「よろしくお願いします」を1日に何度も使っているだろう。1回では大した手間ではないが、それが毎回・毎日となると大きな時間ロスとなる。チャットでのコミュニケーションが可能となれば、そうした挨拶文は不要になる。
②プロジェクトを円滑にするビデオ会議システム
Web会議ツールによっては事前に専用ソフトウェアをダウンロードしなければならない場合も多い。Microsoft Teamsは外部のメンバーでもすぐにビデオ会議ブラウザ上から参加することができる(アプリもあり)。会議中であってもチャットのやりとり、ファイル共有など、プロジェクトを円滑にするための機能が豊富で、まさにビジネスコミュニケーションにおけるワンストップソリューションだといえる。
③チームでのOfficeファイルの共同編集
Officeファイルの共同編集がチーム内で行えることも大きな特徴だ。たとえメンバー同士が離れていても、リアルタイムで同時作業を行うことで効率的にプロジェクトを進めることができる。
④堅牢で高いセキュリティ
AMP編集部が最も推す理由としても挙げているのが、セキュリティ面の強さだ。仮に、顧客の機密情報がシステム上で流出してしまえば、企業存続の問題にもなりかねない。
そもそもMicrosoft Teamsはプライバシー保護を前提とした設計がされており、サービス契約終了時にはユーザーの全てのデータが消去されるようになっている。また、Microsoft社は日々8兆件以上(2020年5月現在)のセキュリティシグナルを処理し、脅威からユーザーの安全を守っている。その上、データ転送時には暗号化され、それらは日本国内の安全なデータセンターで守られている。
現状、最も安心・安全なWeb会議システムは何かと問われれば、Microsoft Teamsの一択だろう。
また、先ほどご紹介したテレ/オフィスワーク推奨PCメーカーの各ページにて、無料で始められるMicrosoft Teamsを DL(ダウンロード)できるので、ぜひ参照してほしい。
中小企業にとってテレワークは経営メリットしかない
改めて本記事で紹介したテレワークの5つのメリットについて整理しておこう。
・固定コストの最適化
・採用ブランディング
・災害リスク対策
・移動時間カットによる作業時間確保
・効率的な会議
ここまでで紹介した通り、中小企業におけるテレワークのメリットは多岐に渡る。
テレワークを半ば強制的に導入したことで、「オフィスに行かないと仕事にならない」という常識をさまざまな観点で実際に検証してみると、じつはテレワークをしたほうが効率的・生産的な部分もあるという点に気づけた企業やビジネスパーソンは多いだろう。
加えて、実際に導入した企業の例を見ると、コストカットや採用ブランディング、次なる不測の事態を想定したリスク対策としても、テレワークが有効であることがわかった。
緊急事態宣言が解除され、経済が再スタートした今でも、一人での作業を優先させたい日はテレワークを認めたり、オフィス勤務をする場合でも積極的にビデオ会議を取り入れることは、使い所次第で業務効率に良い影響を及ぼす。
また紹介した通り、テレワークにおいてはパソコンをはじめWeb会議システムなど、従業員の仕事環境を整えることも欠かせない。テレワークを必要に応じて選択できる状況にするためには、まずはデバイスやクラウドサービスといった「平時でも必要で、低コストで行える」投資から始めることが必要だ。
生産性の最大化を実現するため、今後の働き方の選択肢を改めて考える岐路に、いま私たちは立っているのかもしれない。
文:小野 祐紀