しないとモッタイナイ。手間とお金のコスパ最強な環境のための5つのアクション

TAG:

「世界中の人々が日本人と同じ生活をしたら、地球が2個必要」

みなさん、「地球にやさしい生活」していますか?

それとも、「『そもそも気候変動など起きていない』派」ですか?

筆者は、「環境問題の規模の大きさを知れば知るほど途方に暮れつつ、でもすべては小さな一歩からなので自分にできることはしようとしつつも、日々バタバタと余裕のない生活の中で多くは出来ていない派」です。地球さんごめんなさい。

私ほどの「貧乏暇なし」ではない皆さんの中にも、多かれ少なかれ似通った罪悪感を持って生活している人はけっこういるのではないだろうか。

数年前の国立環境研究所による国民の意識調査においては、我が国の78%の人が気候変動は人間の活動に原因があると認識し、気候変動とエネルギー問題に関して「自分自身の生活や習慣を変えなければならないか」という問いに対して、「そう思う」「ややそう思う」と回答した人が73%を占めた。

俳優・映画監督の伊勢谷友介氏は、環境問題に対する懸命の取り組みの末、人々の環境への意識に関するひとつの洞察を示している。

同氏は、「人類が地球に生き残るためにはどうすればいいか?」という壮大なテーマのもと、さまざまな環境保護ビジネスを展開する「株式会社リバースプロジェクト」を11年前に設立。

エコロジカル・フットプリントから算出すると、世界中の人々が日本人と同じ基準の生活をしたら、地球(資源)が2個必要(アメリカ基準なら5個)という事実に直面し、

「我々人類は、今すぐにでも地球1個分の暮らしができるようライフスタイルを最適化する作業を始めなければいけない。この状態を作ったのは我々先進国の人間だと知っていながら、何も行動せず地球の足を引っ張るのは、あまりにダサい」

と行動を起こした。

国内の企業などの1,000万着の制服を順次サステイナブルなものに切り替えていく、年間200万トン排出される規格外野菜の有効活用を目指すなどのプロジェクトはとても「俳優の社会活動」の枠に収まるレベルではない。しかし、そんな彼は会社を立ち上げてからのこの10年間、思い描いていたほど社会を変えられない残念さを常にかみしめてきたという。そしてその原因を考え抜いた末、

「多くの人が地球の課題を自分ごと化できないのは、自分の人生をまっとうするのに精いっぱいだから」

という結論に至ったとのこと。

確かに世界一の長時間労働に身をささげる忙しい日本人に、「地球に優しく」しようという気力・体力がそう多く残されていないことは想像に難くない。

仕事や家事育児で疲れ、将来の不安を抱えて日々を乗り切っているところに、グレタ・トゥーンベリ氏のような耳の痛い警告をガンガン発する若者が出現すれば、「勘弁してくれ」という気分にもなるだろう。そうでなくとも誰だってライフステージの中で特に忙しく、環境への配慮まで手が回らない時だってある。

「隗より始めよ」の言葉もある。忙しい人にもできるエコアクション

そこで今回は海外の信頼できるソースから、(筆者の独断で)手間もお金もかからない(むしろ節約な)エコアクションを選んでまとめてみたい。参照したのは主に以下の2件の発信。

・David 鈴木氏『Top 10 things you can do about climate change』。カナダで愛される国民的生物学者おじさんの同氏は、1992年の地球サミットにおいて「直し方も分からないもの(環境)をこれ以上壊すのは、もうやめてください」という伝説のスピーチを残した現環境活動家のSevern 鈴木氏のお父様。日本では二人同時に「地球環境の殿堂」入りしている。

・RESET『12 Things You Can Do Right Now on Climate Change』。同団体はサステイナビリティへのスマートソリューションをサポートするドイツ発の国際的シンクタンク。

以下、筆者の独断による「コスパ最高のエコアクションランキング」をどうぞ。

1.肉や乳製品の消費を減らす。週に何日か「ミートレスデー」

上記の両者ともが強く推していたのが、「食生活の最適化」である。具体的には肉や乳製品の消費量を減らすこと。

「ベジタリアニズム」は、もはやエキセントリックな動物好きヒッピーのクレイジーな食生活ではない。近年欧米では環境・健康意識に基づいて肉の消費を減らしたり止めたりする取り組みと、関連ビジネスが花ざかりだ。

(画像:Pexels)

EUでは温室効果ガスの12~17%が畜産業から排出されており、それは全ての交通手段(車、飛行機、列車、船)の合計よりも多い。つまり同じ栄養とカロリーを含む一食分の食材として、肉は生産に非常に多くの水とエネルギーを消費し、さらにその過程で温室効果ガスも多く排出する、効率の悪い(贅沢ともいえる)食材なのだ。

ある試算によると、例えば1キロのじゃがいもを生産するのに必要な水は630リットル。肉と同じたんぱく源である大豆でも2,000リットルに対し、牛肉は43,000リットル(21,5倍)。温室効果ガスの排出量は、牛肉100g強で乗用車10kmの走行と同程度と言われている。

「だからといってベジタリアンになる必要はありません」とRESETは言う。それだけ影響が強いということは、ほんの少し肉の消費量を減らすだけでも環境への負荷を効果的に減らせるということだ。

水資源の消費量や温室効果ガスの排出量の話に限れば、牛肉よりも豚肉を、豚よりも鶏を、鶏よりも魚、魚よりも豆(や豆製品)を選ぶだけでだいぶ違う。

ポール・マッカートニー氏が提案した「ミートフリーマンデー(月曜日だけ肉を食べない運動)」のように、例えば週に1回だけ肉を避けるなど、誰もが取り組めるカジュアルな活動も世界的に広がりを見せている。

今後拡大が見込まれているチェーン店のベジタリアンメニューを、「どんな味だろう」と一度選んでみるだけでも立派な取り組みだ。

食べ物関係ではもちろん他に、フードロスを減らすなどもおすすめされている。食べきれる量だけや、見切り品の食品を買うようにしたり、Reduce GoやTABETEなどのフードロス対策アプリを利用すればお財布にも優しい。

2.プラスチック製品を避ける

「プラスチック汚染」としてその利用後の処理が大きな問題になっているプラスチックはまた、その生産過程でも水、石炭、天然ガス、そしてもちろん原油などの有機資源が大量に消費され、温室効果ガスが排出される(例えば1kgのプラスチックの生産にあたっては、200リットル近くの水が必要で、6kgの温室効果ガスが排出される)。世界で「リサイクル」に出されたプラスチックのうち実際に「再利用」されているのはわずか9%とも。

RESETは、「私たちはプラスチック製品(特に使い捨て製品)の消費を避け、なるべく他の材料で作られたものを選ぶことができます」と訴える。食品などを買うときにより簡素な包装のものを選ぶ、ペットボトル飲料の購入を控えることも推奨されている。

ちなみに、今では主に海洋汚染などの文脈でプラごみのシンボルのような存在になってしまった「レジ袋」は元来、ゴミとしては厄介なその耐久性を見込んで、繰り返し利用することを当然の前提として「地球を救うため」に開発されたものだった。

森林破壊の一因となっていた紙袋の代替品として、1959年にプラスチックのショッピングバッグを発明したのはスウェーデン人エンジニアのSten Gustaf Thulin氏(日本でも『森を守りましょう』とプラスチックのレジ袋がエコアイテムとして推進されていた時代を覚えている老人は筆者だけではあるまい)。

彼の息子のRaoul Thulin氏は昨年BBCのインタビューに答えた際、「自分が開発したプラスチックの袋を人々が一度使っただけで捨ててしまうようになるとは、父は思いもしなかったでしょう」とコメント。常にたたんだレジ袋をポケットに入れて持ち歩いていた父の姿を回顧している。

つまり、レジ袋を捨てずにたたんで取っておき、再利用するのは開発者も実行していた、正しい使い方なのだ。恥ずかしがらずにどんどんお店に持って行こう。

3.人や物の移動を少なくする

RESETとDavid鈴木氏の資料は両者とも、もっと直接的な言い方をしている。いわく「飛行機に乗るな」だ。

人間の日常的な移動手段の中で最も多くのCO2を排出する空路での移動は、環境意識の高い人にとってはスウェーデン発の「飛び恥(flight shame)」という概念さえ定着させるほどの罪悪感の対象となっている。

(画像:Pexels)

かといって、海外出張の際にヨットで大西洋を横断したり、海外旅行に客船で出かけたりする時間的な余裕がある日本人がどれだけいるかという話である。

とりあえず私たちは、旅行先を決めるときや、選択の余地がある移動手段を決めるときに、とにかく空路は環境への負荷が高いことを頭の片隅に置いておくことから始めるのはどうだろう。

陸路で行く手段はどうか?今回の旅行は、本当に飛行機で海外まで行く必要があるだろうか?と少しだけ考えるうちに、違った選択肢が見えることもあるだろう。

どうしても空路での移動が避けられない人のうち余裕のある向きは、MyClimateのような環境負荷を相殺するためのサービスを利用するのもいいかもしれない。フライトの情報をいくつか入力するだけで自分のCO2排出量を算出し、ちょうどそれを相殺する程度の環境保全活動への寄付をするサポートをしてくれる。

また、CO2を排出しながら遠路はるばる移動しているのは私たち人間だけではない。お店に並んでいる商品は「工場直売」でもない限り、例外なく何らかの交通手段で輸送されているのだ。David鈴木氏も「地産地消」を勧めているが、ローカルビジネス・国産の製品を選ぶことは地元経済のみならず環境への配慮にもつながる。

4.環境負荷の高い電力の利用をなるべく控える

「省エネ」というととかく面倒なイメージが付きまとうが、簡単にできてお財布に優しいこともたくさんある。

新しい電球や電化製品を買うときは、省エネタイプのものを選ぶ。買い換えた後は製品が勝手に省エネしてくれる。

電化製品の使用頻度を下げる。なにも洗濯板で服を洗えとか、薪で調理しろとか言っているわけではない。洗う必要のない服を洗わない、たまには手の込んだ調理をせずにサンドイッチのような簡単な食事で済ませるというようなむしろラクになる選択が、「手抜き」ではなく「省エネ」のために積極的に推奨されている。

特に夏は部屋の温度を上げるので長時間の煮炊きは避けましょう、とのことだ。ちなみに筆者の暮らすオランダでは夏だろうが冬だろうが加熱調理した温かい食事は一日一回のみである。

シェアできるものはする。たとえば車。トヨタが「クルマを作る会社」から「モビリティ・カンパニー」への大きなブランディング変革を遂げたのは記憶に新しいが、これからはシェアリング・エコノミーがどんどん世界に広がっていくと見込まれている。服、本、日用品、居住スペースなど、シェアしたり中古のものを選ぶのは環境にも家計にも優しい。管理する手間も省ける。

一度だけ変更の手間はかかるが、電力会社を環境と家計に優しいグリーンエネルギーのものに乗り換えるのも両資料からのおすすめだ。

5.インターネットのデータ利用量を抑える

恥ずかしながら筆者は、インターネットのデータ利用が逐一環境に負荷をかけていることは、今回調べるまで考えたこともなかった。しかし世界のデジタルテクノロジーの維持により排出されるCO2量は、2018年に航空業界のそれを上回ったそうだ。

動画を観る際には「毎回ストリーム」よりも「ダウンロード+保存」、不要なメール(自動返信の『問い合わせありがとう』メールだとか、他の媒体でメッセージを送ったことを報告するメールとか)を送らないことに罪悪感を抱かない、などが推奨されている。

番外「消費や無駄を減らして、人生をもっと楽しむ」

ちょっとお手軽エコアクションと呼ぶには哲学的だったのでランキングからは除外したが、David鈴木氏のサイトからのメッセージ。「自然の中で時を過ごしたり、愛する人と一緒に過ごしたりといった人生の何気ない喜びを味わいましょう。モノを買ったり消費するより幸せになれます」。 

もっと世界に売り出してほしい日本の「二大美徳」

さてここまで書いて改めて思い出したのだが、現在エコビジネス先進国で暮らしていて常々「これは本当は日本の方が上なのに!ビジネスとしてもっと国際的にリードすればいいのに」と残念に思っていることがふたつある。

一つが我が国において禅宗の伝来とともに発達し、800年近い歴史をもつ精進料理。菜食主義人口が少なく、そこへの配慮を打ち出している企業が少ない日本は「ベジタリアニズム後進国」と海外のベジタリアンにはひどく評判が悪いが、いざ精進料理や精進インスパイア系の新しいジャンルの開拓に日本が乗り出したら、さぞかし無限大の引き出しが広がっているだろうと思う。

詳しくはまた別の機会に譲るが、これだけは言わせてほしい。日本の「がんもどき」は、近年ヨーロッパで人気の「肉もどき」の100倍おいしい。

そしてもうひとつが「もったいない精神」。

ノーベル平和賞受賞者のケニア人環境活動家・ワンガリ・マータイ氏が「モッタイナイ」を環境保護のスローガンに国連で演説をしたのが2005年、経済の低迷も相まって「もったいない」の地位は庶民的なお母さんの口癖から地球を守るための崇高なマインドセットへと押し上げられた…感は若干あるものの、やはりまだまだある種の恥ずかしさ、恰好悪さは伴うのではないだろうか。

しかし日常生活の中で「もったいない精神」は先進国の中でも日本人がけた違いに持っていると感じることが多い。

オランダでフードロス削減やサーキュラーエコノミーをアグレッシブに、スタイリッシュにお金にしている各種の新エコビジネスを見るにつけ、「日本人が手持ちの『もったいない精神』をもっとストレートにビジネスにしたら彼らに負けなかろう」という思いは残る。

「手間もお金もかからない」に限定してまとめた今回のエコアクション。生真面目で白か黒か思考で、なにかと「こんな小さな行動に本当に意味があるのか?」と考えてしまいがちな私たち日本人のために、もう一つDavid鈴木氏からのメッセージを書き留めておきたい。

「人間が70億人いるこの世界において、私たち一人一人は皆バケツの中の一滴です。でもその一滴がじゅうぶん集まれば、どんなバケツも満たすことができます」。

文:ウルセム幸子
編集:岡徳之(Livit

モバイルバージョンを終了