環境保護への関心の高まりに伴い、環境と密接な関係がある「フードロス」も避けられない課題として重要視されている。国際連合が定める「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)にも、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」が含まれている。

世界規模で見ると、食料廃棄量は年間約13億トンに及び、生産されている食料の約3分の1を捨てていることになる。日本でも、毎日大型(10トン)トラック約1,760台分もの食料を廃棄しており、1人当たりの年間食品ロス量は51kg。これは、1人当たりの米の年間消費量(約54kg)に相当するという。

このような楽観視できない現状もあり、近年はフードロスを解決に導くサービスの成長が勢いを増している。これらのサービスは社会課題の解決を助けつつ、家計にもやさしいのが大きな特徴だ。ここでは国内の「フードロスサービス」を7つピックアップし、各サービスの概要を紹介する。

サブスクリプション型フードロスサービス

まずは、利用頻度が高いほどメリットが大きい「サブスクリプション型フードロスサービス」。利用地域は限られているが、住まいや会社の近隣地域に加盟店があれば、かなりお得に食事を楽しめるかもしれない。

■余剰食品をお得にテイクアウト「Reduce Go」

現在地周辺の余剰食品をアプリ上で購入し、各飲食店でテイクアウトできるサービス。1,980円の月額料金を支払って会員になると、1日に2回まで注文ができる。

GPSを利用してユーザーの現在位置に近い順に商品が表示されるため、近隣のお気に入り店を新たに探す楽しみにもなりそうだ。現在は関東エリアと名古屋エリアの219店が加盟しているが、順次エリアを拡大していくとのこと。利用料金の2%は、社会活動団体へ寄付される。

<利用方法>
1、アプリをダウンロードして立ち上げる
2、余剰食品を探し、注文・決済する
3、指定時間に各飲食店を訪れ、注文品を受け取る

■飲食店のおまかせメニューを格安で食べられる「FOODPASSPORT」

加盟する飲食店が余剰食品を使って提供するメニューを月額980円で月10回まで食べられるサービス。

10回利用すると、1食1,000円前後のメニューが1食98円と格安での提供となり、有名店の料理やFOODPASSPORTだけの限定メニューもあるのが魅力だ。関西・関東エリアで利用でき、加盟店が1,200店以上と他サービスに比べて多いため、好みの食事を選びやすいのも嬉しいところ。

また、企業での導入も可能なため、近隣のレストランで利用できるなど条件が合えば、利便性の高い福利厚生にもなりえる。利用料金の一部をフードバンクへ寄付することもできる。

<利用方法>
1、アプリをダウンロードして立ち上げる
2、本日のおまかせメニューをチェックする
3、各飲食店に来店し、アプリ上で注文を確定する

店頭での都度購入型フードロスサービス

こちらは、店頭でその都度購入するスタイルのフードロスサービス。サブスクリプション型に比べて、お得感は薄れるものの「気軽に利用できる」という点では優れているだろう。一度、試してみたい人や必要なシーンで限定的に利用したい人には最適だ。

■お得に試せるテイクアウトサービス「TABETE」

加盟する飲食店や小売店がアプリ上で販売する余剰食事を都度購入し、店頭で受け取るスタイルのサービス。現在は、金沢、名古屋、浜松、大阪、神戸などの550店以上が加盟しており、気になるレストランや小売店の味をお試し感覚で楽しめるのが魅力だ。

同社では、フードロスの意識向上やフードロスの実態についての認知向上も重要な課題として位置づけ、サービスを展開しているとのこと。

<利用方法>
1、アプリをダウンロードして立ち上げる
2、地域ごとに出品メニューをチェックし、アプリ上で注文・決済する
3、指定時間に各店舗に来店して、注文品を受け取る 

■コンビニや小売店の食品をお得に買える「No Food Loss」

大手旅行会社として知られる株式会社エイチ・アイ・エスが、2019年2月に立ち上げたサービス。コンビニエンスストアや小売店で、販売期限や季節限定パッケージの都合上、安全においしく食べられるのに廃棄せざるを得ない商品を中心にラインナップされているそうだ。

レストラン等と違い、小売店には消費・賞味期限の前に「販売期限」がある。同社はこの点に注目し、コンビニ・小売店特化型でサービスを展開しているとのこと。

あえて事前予約や決済機能を付けていないことで、クレジットカードを持たない学生等も利用可能。全国各地に約100店舗と利用エリアはかなり限定的だが、これからの展開に期待したい。利用料金の一部は、開発途上国の子供たちの学校給食代金として寄付される。

<利用方法>
1、アプリをダウンロードして立ち上げる
2、各店のクーポンを検索する
3、該当店舗に来店し、レジでクーポン画面を提示し購入する

オンライン販売型フードロスサービス

続いては、来店よりも気軽に利用できるオンライン販売型フードロスサービス。既出のサブスクリプション型と都度購入型は、どうしても地域が限定されてしまうが、これらのサービスは、一部の地域や離島を除き、日本のどこに住んでいても利用できる点が最大のメリットだろう。

■半額以下の大幅値引き商品が多数「KURADASHI」

「気軽に社会貢献ができること」を打ち出したサービスで、会員になると食品ロス削減に賛同するメーカーが協賛価格で提供した商品をオンラインで購入できる。

商品の多くは、ある程度まとまった数量(10個入、12袋セットなど)での販売となっており、半額以下の大幅値引きで提供されているため、お得感は十分にあると言える。利用料金の一部は社会貢献団体へ寄付される。

<利用方法>
1、WEBページにアクセスし、会員登録をする
2、ジャンル別や売れ筋ランキングから商品を探す
3、オンライン上で決済し、宅配便で商品を受け取る

■アイテム数豊富で好みを見つけやすい「Otameshi」

サービス自体は、一つ前のKURADASHIと大きく変わらないが、アイテム数が豊富で好みを見つけやすい印象がある。

基本的にはまとめ売りなので、家族が多い家庭や食べざかりの子供を持つ家庭には、より重宝するのではないだろうか。社会貢献にも注力しており、売上の一部は日本赤十字社や特定非営利活動法人 国境なき医師団など、10の社会貢献団体へ寄付される。

<利用方法>
1、WEBページにアクセスし、会員登録をする
2、ジャンル別や売れ筋ランキングから商品を探す
3、オンライン上で決済し、宅配便で商品を受け取る

■売り手から直接買える独自プラットフォーム「tabeloop」

メルカリやヤフーショッピング等のサービス同様に、売り手が直接サイト上に出品した商品を購入できるサービスで、大量に収穫された余剰野菜や形が不揃いの規格外野菜、賞味期限間近の商品などが並ぶ。

購入した商品は売り手から直接発送されるほか、レビュー機能、チャット機能の導入により、売り手と買い手の距離を縮める工夫が見られる。売上の1〜2%は、飢餓に苦しむ人々を支援する団体に寄付される。

<利用方法>
1、WEBページにアクセスし、会員登録をする
2、ジャンル別や価格帯などから商品を探す
3、オンライン上で決済し、各売り手から宅配便で商品を受け取る

賢く利用すれば、節約と社会貢献が同時にできる

いずれのフードロスサービスも、まだ歴史が浅いこともあり、幅広い地域、幅広い年齢層に浸透しているとは言えないが、じわじわと広がりを見せている。利用者に節約のメリットを提供しながらフードロスの解決にダイレクトにつなげる各社の取り組みは、評価されるべきものではないだろうか。

これらのフードロスサービスを利用することで、消費者一人ひとりが自身の「消費パターン」を見直す好機にもなりそうだ。

※掲載内容は、2020年3月中旬時点の情報です。

取材・文:小林 香織