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新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国。
24日には春節休暇が始まったが、正月ムードはなく、不安が社会を覆う中、中国の経済成長を支えるようになったテクノロジー企業が、続々と支援策を打ち出している。
武漢大学卒のXiaomiCEO、「疫病が落ち着いたら桜を見よう」
スマホメーカー大手、Xiaomi(シャオミ、小米科技)の創業者である雷軍CEOは湖北省出身で、武漢大学の卒業生。2019年12月に武漢に第二本社をオープンさせたばかりでもある。
雷軍CEOは春節休暇の始まった24日から、SNSのWeibo(ウェイボ、微博)で毎日「武漢加油(がんばれ)!」「湖北加油!」と投稿している。26日には満開の桜の画像と共に「疫病が収束したら、桜の花を見よう」と投稿した。
現地支援にも力を入れており、Xiaomiは24日、抗ウイルスマスク、医療用マスク、体温計など30万元超相当の医療物資を武漢に寄付。翌25日にも医療物資に加え1,000万元を武漢に贈った。
ジャック・マー「最前線の医療スタッフに敬礼!」
アリババのジャック・マー元会長は2カ月ぶりにWeiboに投稿。肺炎治療の関係者全般をねぎらい、「最前線の医療スタッフたちに敬礼、武漢頑張れ!」と締めた。
アリババは10億元の医療物資供給専門のファンドを立ち上げ、国内外から医療物資を買い付け、湖北省の病院に贈ることを決めた。既にアリババ社員がインドネシアや韓国など14カ国・地域で調達を行っている。
配車アプリのDiDi、医療関係者を無料送迎
配車アプリDiDi(滴滴出行)の程維CEOも春節期間に新型肺炎患者の治療にあたる医療関係者を無料で送迎するとWeiboに投稿。
防護服に身を固めた運転手100人が業務を担当するという。
このほか、多くのテクノロジー企業が続々と寄付を表明している。
主なものは以下。(2020年1月28日時点で1元=約15.7円)
Luckin Coffee(瑞幸咖啡、アプリを利用したコーヒーチェーン):マスク、防護服、消毒液など緊急医療物資への使用を想定し、中国の赤十字に1,000万元を寄付。
ByteDance(字節跳動、バイトダンス、ショート動画アプリ):新型肺炎対策のため、中国赤十字に2億元を寄付。治療の最前線で活動している人々が感染してしまった場合、10万元の見舞金を提供。また、多大な貢献と認めた活動や人物、組織に100万元を提供。
Kuaishou(快手、ショート動画アプリ):武漢の慈善団体に1億元寄付。
レノボ:武漢の救急病院にIT設備を寄付。
BiliBili(ビリビリ動画、動画配信):武漢支援のため湖北省の慈善団体に1000万元を寄付。そのほか医療機関に30万元相当の医療物資を寄付。
バイドゥ(百度、Baidu)3億元の新型肺炎専門ファンドを立ち上げ、治療薬の開発や長期的な公共衛生、安全のための取り組みを支援。人工知能(AI)など自社の技術で研究員を支援。
Pinduoduo(拼多多、越境EC):アプリ内で新型肺炎向けの医療・衛生用品に使える100億元のクーポンを配布。消費者が格安で入手できるようにする。
JD.com(京東商城、越境EC):武漢市に医療マスク100万個と医療用品6万個を寄付。自社の配送体制で直接届ける。
テンセント(騰訊、WeChatなどを運営):3億元で新型肺炎対策のファンドを設立。マスクや消毒液などを購入し、武漢など感染が拡大しているエリアに届ける。
Realme(新興スマホメーカー):医療マスクや防護服など緊急支援物資向けに、湖北省の慈善団体に50万元を寄付。
海外ではアップルのティム・クックCEOがツイッターでアップルとして寄付をする意向を表明している。また、日本では中国向け越境ECのインアゴーラが27日、アプリを通じてマスク5万枚を湖北省市民の自宅に無料で届けた。
インアゴーラの越境アプリのマスク無料コーナー
本来は春節の休暇期間であるため、各社ともとりあえずマスクなどの医療物資や現金の寄付に乗り出しているが、今後、それぞれのテクノロジーを生かした支援も広がりそうだ。
文:浦上早苗