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海洋プラスチック問題への関心の高まりにともない、テレビや雑誌など最近国内メディアでは「脱プラ」や「プラなし」をテーマにした記事や番組が増えている印象だ。普段の生活の中でプラスチック利用をどう減らすのか、実践者たちのさまざまなアイデアが紹介されている。
一方、海外においてこのような「脱プラ」の動きを促進しているのはソーシャルメディアのインフルエンサーたちだ。「zero-waste influencer」とも呼ばれ、インスタグラムなどでは数十万〜100万人以上のフォロワーを持ち、文字通り多くの人々のライフスタイルに影響を与えている。
海外の「脱プラ・インフルエンサー」とはどのような情報を発信し、どれほどの影響をもたらしているのだろうか。
28歳女性社会起業家ローレン・シンガー氏、インスタフォロワー37万人以上
「脱プラ・インフルエンサー」としてまず名が挙がるのが、ニューヨークで「パッケージ・フリー・ショップ」を立ち上げた28歳の女性起業家ローレン・シンガー氏だろう。
28歳の女性起業家ローレン・シンガー氏(パッケージ・フリー・ショップ・ウェブサイトより)
2012年に「zero waste(ゼロ廃棄)」ライフスタイルを普及させるためのブログ「Trash is for Tossers」を立ち上げ、プラスチック利用を減らすアイデアを発信し続けている。
2015年にTEDに登壇したほか、2017年にニューヨークで「パッケージ・フリー・ショップ」を立ち上げたことで注目度が高まり、ソーシャルメディアにおける影響力が高まったようだ。
現在インスタグラム(@trashisfortossers)では37万人以上のフォロワーを抱え「#zerowaste」とともに脱プラ・ライフスタイル情報を発信。
一方、ブログでは料理でできるだけ廃棄を減らす方法や古着のリサイクル方法などについてのアイデアを共有している。また、YouTubeチャンネルの登録者数は25万人以上で、これまでの累計再生回数は900万回以上。
直近では、フォーブス誌の2020年社会起業家アンダー30にも選出され、この先ますます注目度と影響力が大きくなることが見込まれる。
YouTube累計再生回数1億回以上、インスタ100万人以上の女性ビーガンアクティビスト
インスタグラムで100万人以上のフォロワーを持つ女性ビーガンアクティビスト、クリスティーナ・キャリロ氏(@fullyrawkristina)の影響力も無視できない。
1987年生まれで現在32歳。16歳のときに高血糖症と診断されたことをきっかけに自身の食事や健康について強い関心を持つようになったキャリロ氏。
大学生のときにキャンパスで有機食品を販売するファーマーズマーケットを開設、その経験とネットワークを生かし、2007年20歳のときに米テキサス州でオーガニック/ビーガンの食品協同組合Rawfully Organicを設立した。
2013年にはクラウドファンドを通じてRawfully Organicの姉妹ブランド「FullyRaw Juice」を開設。また2016年には著書『The Fully Raw Diet』を発表するなど精力的に活動を展開している。
インスタグラムでは、主にビーガンやヨガをテーマにした写真やメッセージを発信。直接的に「脱プラ」という言葉は用いていないものの、その写真は多くは「プラなし」ライフスタイルを示唆するものとなっている。
YouTubeチャンネルの登録者数は110万人、累計再生回数は1億1,000万回以上。
フォロワー25万人以上、「ゼロ・ウェイスト」ムーブメントの生みの親
前述した28歳女性社会起業家ローレン・シンガー氏が感銘を受けたというベア・ジョンソン氏も大きな影響力を持つ脱プラ・インフルエンサーだ。
2008年から脱プラ生活を送るジョンソン氏。脱プラ・ライフスタイルのパイオニア的存在で、シンガー氏が感銘を受けたというように、若い世代にも多大な影響を与える力を持っている。
ベア・ジョンソン氏(Zero Waste Homeウェブサイトより)
2009年に自身の脱プラ生活の経験を記したブログ「Zero Waste Home」を開設。ジョンソン氏の取り組みは2010年にニューヨーク・タイムズ紙に取り上げられ、多くの人々に知られるようになった。
当時「zero waste」は製造業や自治体の廃棄マネジメントに対して使われる言葉だったが、ジョンソン氏によって家庭でも用いられるようになったという。
2013年には著書『Zero Waste Home』を発表。日本語にも訳された同著、2019年時点では27言語に訳され世界中で読まる人気書籍になっているようだ。
ジョンソン氏のインスタグラム(@zerowastehom)フォロワー数は25万人以上。
女性インフルエンサーが活躍、インスタグラムにおける「脱プラ」ライフスタイルの普及
上記3名のほかにも影響力を持つ「脱プラ」インフルエンサーは多く存在する。
インスタグラムで13万人以上のフォロワーを持つキャサリン・ケロッグ氏(@going.zero.waste)。ごみを出さないライフスタイルを実践し、2018年には2年間で出したごみの量が16オンス(約470ミリリットル)のビンに収まったとしてナショナル・ジオグラフィックに取り上げられた。
2018年に著書『Zero Waste』を公表したシャイア・スー氏(@_wastelandrebel_)もインスタグラムで10万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーだ。同著は英語に加え、ドイツ語と中国語にも翻訳された。
このほかインスタグラムではフォロワー53万人以上のエレン・フィッシャー氏(@ellenfisher)、15万人以上のアンネマリー・ボノー氏(@zerowastechef)、6万6,000人以上のミーガン・ウェルドン氏(@zerowastenerd)など女性インフルエンサーの存在感が顕著となっている。
さまざまなニュースメディアによって連日報道される気候変動関連のニュースやごみ問題を目の当たりにし、多くの人々は過剰消費を前提にしたライフスタイルを変えたいと考えるようになっている。
しかし、一度習慣になってしまった行動を変えるのは容易なことではない。また、実際にどのように「脱プラ」を実践すればよいのか分からないことも多い。
この障壁を取り払うのが「脱プラ・インフルエンサー」たちの役割といえるだろう。ライフスタイル・シフトを担うインフルエンサーたちの今後の活躍に注目していきたい。
文:細谷元(Livit)