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「好きなことを仕事にしたい」「だけど自分のやりたいことが分からない」
近年、このような悩みを抱えて相談にくる20〜30代の若手キャリアパーソンが増えていると感じます。
厚生労働省の調査によると、卒業後3年以内に離職した人の割合は中卒で約7割、高卒で約5割、大卒で約3割にのぼるなど、早期に退職する傾向があるという。
離職した理由は男女ともに各学歴で「仕事が合わない、又はつまらないから」と答える方の割合が最も高く、一度就職しても自発的な離職をしてしまうのが近年の若年層の特徴といえます。
筆者は転職エージェントのキャリアアドバイザーとして多くの方の話を聞いてきましたが、「自分は一体何がしたいのか」という問題に悩まれている方が非常に多いと感じています。
今回は、キャリアに悩まれている方、将来の方向性に迷っている方に向けて“やりたいことの見つけ方”を筆者なりの考え方でお伝えします。
好きなことを仕事にしなければならない風潮
ネットニュースやブログでは「好きなことを仕事にして社会にクローズアップされる一般人」を目にする機会が増えました。TwitterやFacebookなど、SNSのタイムラインで日常的に流れてくる友人の仕事やプライベートを羨む一方、「やりたいこと」が見つからず日々をただ過ごしている自分と比較して落ち込む毎日…。
「やりたいことがないのですが、どうしたら良いでしょうか」。
そんな悩みを抱えてキャリアドバイザーのもとへ相談に訪れる求職者の方が後を絶ちません。
嫌なことを我慢しながら生きる必要はない、というブームは定期的に訪れます。90年代のバブル期には「フリーターブーム」と称された正社員を辞めることがカッコイイという風潮に後押しされ、退職を決意する若者が急増しました。昨今もノマドブーム、副業ブームなどにより、学生起業や新卒でフリーランスの道を選ぶ若者が増えています。
その一部の活躍がメディアで取り上げられる度に「好きなことを仕事にしないなんて人生損している」という強いメッセージが、若者を悩ませているように思います。
20代でやりたいことが見つけられない人は8割
多くの求職者と向き合う中で、やりたいことを見つけられる人とそうでない人には、考え方自体に大きな違いがあると感じます。
まず前提として多くの方に共通している価値観の一つに、「やりたいことが分からない=マイナスなこと」という考えがあるのではないでしょうか。
「やりたいことを仕事にしよう!」とSNSやメディアで発信され続けていたり、自分の周囲にそうした願望を実現させている人がいれば、羨ましくなってしまうのは当然の感情です。
ですが本来、「自分のやりたいことなんて若いうちは見つけられなくても良い」、というのが筆者の考えです。
人生の方向性が見えないこと自体に危機感を持つのは良いことです。その感情が行動へ繋げますから。ただそれが理由で自分を否定したり、ダメな存在だと思い込んでしまうのはNGです。特に「デジタルネイティブ 」と呼ばれる世代は、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育っており、彼らの知りたい情報はスマホから手軽に手に入るので、成功事例ばかりを目にして現実とのギャップに思い悩む傾向があります。
圧倒的な行動量が”やりたい”気持ちを生み出す
実際筆者は、年間600名以上の若手求職者にお会いしていますが、8割以上の方は自分は何がやりたいのかわからない、何が向いているのかわからない、求人サイトを見ていてもピンとこない、といったキャリアの方向性に関するご相談です。
また、キャリアアドバイザーとして厳しいことを言ってしまうと、残念ながら転職活動やインターネットでの情報収拾を通じて運命的にやりたいことに出会うのは難しいのではないかと思っています。経験したことのない仕事を、はじめから「これが心底やりたい仕事だった」と感じて入社を決める方は決して多くはないのではないでしょうか。
では、やりたいことを見つけている人にはどんな共通点があるのか。
それは、「今は興味がないけど、まず挑戦してみる」と先入観を持たずに行動できるというフットワークの軽さです。
やりたいことがある人は一箇所に留まらず、溢れるように連鎖的にやりたいことが生まれてくることが多く、その理由は「圧倒的な行動量」に隠されています。
実際に「行って」「見て」「人に会って」「聞いて」「体験をする」ということに対する努力や投資を惜しまない人が多く、その経験を通して新たな気づきと発見がうまれ、やりたいことが雪だるま式に増えていきます。
やりたいことが未だ見つかっていない人の最大の特徴は、「行動までの着手が遅い、もしくは行動しない」こと。そしてやるべきことを先送りにし、面倒くさがり屋で腰が重い人です。前述の行動をコストと考えて億劫になってしまうんですね。
人間は経験の中から「やりたいこと」「やりたくないこと」という二つの判断をしているのですが、経験がないことに対してはこの判断がつかないんです。実際にやってみれば判断はつけられるのですが、興味が持てないかもしれないことに時間を割いて労力をかけるのは惜しい、と考えてしまう癖があります。
人間は本来、興味がないものに対しコストをかけたくないと思う生き物です。だからこそスマホから手軽にインターネットで検索したり、身近な人に相談することで見つけようとするのですが、外に答えは見つかりません。
経験の中にしかやりたいことが生まれないと考えれば、現段階では「興味はない」けれど、「やりたいこと」「やりたくないこと」かどうかを見極めるため挑戦してみることが大事だと気付くはずです。
必要なのは、飛び込んでみる勇気
筆者は1986年、男女雇用機会均等法が制定された年に生まれ、親世代と比較すると生まれながらに何でも整った環境で育ちましたが、日々「やりたいこと」に溢れ24時間365日じゃとても時間が足りず困っているほどです。思い返すと10代の頃から恐ろしいほど行動量が多い学生でした。
短大では4年分に匹敵する単位を2年間で履修するため毎日朝から夕方まで授業はぎっしり。サークルも2団体に所属し、学校帰りのプリクラやショッピングを抜かりなく楽しむそしてアルバイトは週7日ほぼフル稼働、バーや飲食店、ビールの売り子、キャンペーンガールなど5つを掛け持ち、成人式の同窓会の幹事をしたり、思いきり恋愛も楽しみました。もちろん、就職活動も精力的に活動しました。本当にいつ寝ていたんだろう、と不思議なくらいとにかく動き回っていた記憶しかありません。
その2年間で、後のやりたいことにつながる「人に喜ばれることが嬉しい」「沢山の人と関わることが楽しい」「稼ぐことにやりがいを感じる」という原体験を手に入れることができました。
新卒で自動車業界、その後は美容業界、人材業界と2度の転職をしましたが、いずれも初めは心底「やりたい」とは思えませんでした。美容業界にいた時は、脱毛するときに人の裸を見るのは抵抗がありましたし、人材業界では激務なイメージがありました。
ですが、学生時代に楽しいと思えた「人に喜ばれる」「沢山の人と関わる」「稼げる」は共通していたので、やりがいを感じられるか分からないけど、まずはやってみようという気持ちで飛び込んでみました。
もちろん大変なことも多く経験しましたが、結果として美容業界ではカウンセラーや新規出店の経験を通して人の悩みや課題を解決すること、組織をつくることが好きだと気付くことができました。そして、キャリアチェンジやマネジメント経験からキャリア育成に関心が高まり、現在は天職だと思える「キャリアアドバイザー」への道が拓かれたことは、こうした過去の行動による偶然の産物です。
キャリアアドバイザーとして日々多くのビジネスパーソンと出会うことで、視野が広がりさらなる「面白い」「やってみたい」が溢れる充実した毎日を送れています。
いま「やりたいこと」が見つからないという方は、興味の有無で行動するかどうかを決めずに、「興味ないけどとりあえずやってみる」という未知の領域に足を踏み入れる勇気を明日から少しだけで良いので出してみてください。きっと新たな「やりたいこと」に出会える日がくるはずです。
文:えさきまりな
- えさき まりな
- キャリアアドバイザー
短大卒業後、大手自動車会社の事務職やエステサロンのカウンセラーを経験。現在は都内の転職エージェントでキャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザーを務める。現場のみならずオンラインでも活動の場を広げ、「キャリアアドバイザーの本音」と題したTwitterアカウントが好評。現在約7,000フォロワーを獲得するなど、高い発信力を誇っている。