トランスは、「HRファクトフルネス(※)」調査と題して、会社役員が人事戦略において統計上の事実と異なり、勘や経験に基づく思い込みや、過去の常識にとらわれ、誤った内容を認識していることに関して調査を行い、その結果を2019年11月17日に発表した。

調査結果の主なトピックスは以下になる。

  • 約7割の会社役員が「給料を増やせば退職者は減る」と回答
  • 約7割の会社役員が「従業員との関係性を強めれば退職者は減る」と回答

「給料を増やせば退職者は減る」と会社役員の約7割が回答

「従業員の「給与」を増やすことで退職者は一定減ると思うか」という問いに「思う」と回答した会社役員は74%(「非常にそう思う」「そう思う」「ややそう思う」の合計値)となり、トピックス①と同様に従業員の「給与」を増やすことで退職者は減ると考えている会社役員が多い結果となった。

しかし、ある1000人の組織の若手に対し、弊社が行った調査結果によると、「給与を増やした回数が多いほうが、退職率が高い」ことが明らかになっている。

この結果は、「若手の場合、“2番手”評価が退職しやすい可能性がある」(最も評価が高く給与が上昇している人は、退職率は低い)ことを示している。

例えば、組織において最も活躍している人は、「表彰」や「抜擢」をされ、注目されることも多いが、“2番手”は、一定仕事で成果を残しているにも関わらず、注目されないことも多い。一方、“2番手”は仕事の能力が高いため、外部からの引き合いも多く、退職率が高まっている可能性があると考えられる。

しかしながら、実際に「給与の増加」と「退職率」を定量的に分析したことがある経営者は1割未満。これは過去の“常識”にとらわれ、現状を正確に認識できていない可能性があると言わざるをえず、多くの経営者が間違えた意思決定を行ってしまっているかもしれない。

「従業員との関係性を強めれば退職者は減る」と会社役員の約7割が回答

「従業員のエンゲージメントを高めることで退職者は一定減ると思うか」という問いに「思う」と回答した会社役員は67%(「非常にそう思う」「そう思う」「ややそう思う」の合計値)となり、従業員との関係性を強めれば退職者は減ると考えている会社役員が多い結果となった。

確かに、「エンゲージメント調査」や「エンゲージメント向上」を商材とする企業の調査結果によると、「エンゲージメントスコアの高さと、退職率の低さは相関関係がある」としている調査も少なくない。

しかし、102の組織・チームに対し弊社が行った調査結果によると、エンゲージメントスコアが高くても、退職率が低くならないという実例がある。

この結果は、組織によっては「退職理由は必ずしもエンゲージメントだけではない」ことを示していると考えられる。例えば「エンゲージメントスコア」が高くても、「自身の成長・キャリアアップ」のために退職する人も存在する。

そのため「エンゲージメントスコア」が、本当に自社の「退職理由の原因を見極められているか?」を確認しないと、意味のない指標を計測しまっている可能性もある。


【調査概要】
調査対象:26歳から79歳の会社役員 N=1000人
調査方法:インターネット調査
調査期間:2019年10月

<参照元>
<第1回「HRファクトフルネス」調査>「給料を増やせば退職者は減る」と会社役員の約7割が回答 しかし、実際は給与を増やしたほうが「退職者が増える」場合も
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