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ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン(以下ヘイズ)が、アジア5ヵ国・地域を対象に実施した「2019/2020ヘイズ アジア ダイバーシティ&インクルージョン レポート」を発表した。
レポートは、中国、香港、日本、シンガポール、マレーシアのアジア5ヵ国・地域で働くおよそ2,000人を対象に、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)に関する意識調査を行った結果をまとめたもので、ヘイズが毎年実施しているもの。
今回の調査に参加した回答者のうち、アジアの出身者は87%、女性は54%を占めており、39%が管理職を務めている。調査では職場におけるD&Iについての意識や企業内でのD&Iの実践とその影響などについて質問している。
主な調査結果は以下の通り。
- アジアでは職場におけるD&Iのメリットについての理解は進んでいるものの、導入のペースは遅く、ごく限られた地域でしか進展していない。
- 日本の男女格差は改善されているものの、多様性を欠く上司職
- アジア全体では平等に対する理解が浸透
- アジア全体で着実に進む多様化、日本は後手に
- 「リーダーは昇進に際して外見や自らと見解や行動を同じくする人を不当に優遇している」と感じている人は60%。59%は採用の過程でも同様の不平等を感じている。
日本の状況:男女格差は改善されているものの、多様性を欠く上司職
日本でもD&Iについての理解は広まっており、特に男女格差の問題については、国全体で管理職への女性の登用を推進するなど大幅な進展が見られている。
その一方で、調査の結果、直属の上司が女性だと答えた回答者の割合は33%となった。
なお、この割合は2018年の28%、2017年の21%からは確実に上昇しているものの、女性管理職の割合は依然として低く、回答者の53%が「リーダーシップにおける多様性は実現されていない」と答えている。
また、44%の従業員が職場で「マイノリティーグループから管理職への登用を促進する取組みが行われているとは思わない」と回答。さらに4分の3近くの従業員が「管理職の多様性を高めることが、より多様な人材の流出防止につながる」と回答した。
一方で、「差別により、プロジェクトへの参画を疎外された、意見を聞いてもらえなかった、もしくは尊重されなかったと感じたことはない」と回答した従業員の割合は35%。
この割合は本調査の対象となったアジア5カ国と地域内で、中国の32%に次いで2番目に低くなっている。さらに、17%の従業員が「常に疎外されている」と回答しており、この割合は他の国と地域に比べてはるかに高い結果となった。
一方で、こうした差別の理由として最も多く挙げられたのは、回答率の高い順に年齢(48%)、民族(44%)。この結果は、組織が早急に対応策をとらなければ、日本の企業にとってさらに深刻な問題を引き起こす可能性を示唆しているという。
アジア全体の状況:平等に対する理解が浸透
組織内でD&Iの実践によって最も大きな影響を受けると考える分野については、回答者の76%が「企業文化」と答えており、昨年に続いて最も多くなっている。次いで、「イノベーション」が59%で、アジアの職場においてD&Iに対する理解が進んでいることが示されている。
さらに53%の従業員が「人材の流出防止」と回答し、昨年の「組織のリーダーシップ」に代わって3番目に多い結果となった。
平等に対する意識は依然として高く、回答者の38%が年齢や障がいの有無、民族、性別、家庭環境や配偶者の有無に関わらず「同等の能力があれば同等に昇進機会が与えられている」と感じており、35%が「概ね平等」と答えている。
アジア全体で着実に進む多様化、日本は後手に
昨年の調査では、直属の上司が女性だと答えた回答者は39%だったが、今年はその割合が40%となり、わずかながら上昇した。
全回答者のうち57%が、自分の働く組織のリーダーシップチームには多様性があると確信しており、日本が27%と大幅に低かったことで、アジア全体の平均を低下させているものの、最も回答率が高かった中国では70%の従業員がリーダーシップに多様性があると回答している。
その一方で、「仕事に関して年齢、性別、民族、障害、性的嗜好、家庭環境や配偶者の有無を理由に疎外された経験は全くない」と答えた回答者は40%という結果となった。
3分の1の回答者が何らかの差別を経験したと答え、その半数以上がそうした体験を過去1年間で経験したと答えている。
依然として高いリーダーシップにおける偏見
リーダーシップチームにおける多様性は比較的高くなっているものの、D&Iにおけるリーダーの役割については依然として明確には認識されていない。
回答者の60%が「リーダーは昇進に際して外見や自らと見解や行動を同じくする人を不当に優遇している」と感じており、59%は採用の過程でも同様の不平等を感じていた。
こうした認識は、回答者の72%が「リーダーが無意識の偏見を取り除く研修を受けることで、より多様な人材を採用できる」と考えていることからも明確に示されている。しかし、中国のみ64%となっているものの、実際にこうした研修を実施している組織はアジア全体の49%に留まっている。
なお、ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクター、リチャード・アードレイは次のように述べている。
「アベノミクスが始まって以来、日本政府が『女性活躍推進』のスローガンを掲げて女性の社会進出を推進してきたおかげで、この分野においては確実な改善が見られています。こうした進展は今回の調査でも明確に示されているものの、男女の役割については依然として根強い偏見が残されたままになっています。本調査結果が示すように、より多くの従業員がD&Iの実現によるメリットを認識するようになっており、こうした取り組みを行っていない企業は、イノベーションを含めてビジネスでの優位性を大幅に損なうことになり、大きな打撃を受けかねないことが明白になっています。」
<参照元>
「2019年・2020年ヘイズ アジア ダイバーシティ&インクルージョン レポート 」
ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン