インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供するヴァリューズは、一般ネットユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用して、決済アプリ利用ログからキャッシュレス決済の利用実態を調査した。

また国内の20歳以上の男女10,038人を対象に、キャッシュレス決済の利用意向に関するアンケート調査を実施した。そして、2019年8月23日にそれらの結果を発表した。

主なトピックは3つ。
・キャッシュレス決済アプリユーザー数ではQRコードとチャージ式が拮抗

・主要キャッシュレス決済アプリではPayPayが6月利用者851万人と推計され、トップを独走中

・QRコード決済利用者は約半数が週に1回以上サービスを利用し生活に根付きつつある

利用の最多はクレジットカード

アンケート調査では、キャッシュレス決済を「クレジットカード」、Suica、PASMOなど「交通系チャージ式電子マネー」、楽天Edy、WAONなど「交通系以外のチャージ式電子マネー」、PayPay、楽天ペイなどの「QRコード式」、iD、QUICpayなど「後払い式」、「デビットカード」、「仮想通貨」に分けて、店頭での利用経験をたずねた。

最多は「クレジットカード」で86.7%。現在もっとも利用頻度が高い手段も、「クレジットカード」54.7%と群を抜いていた。次いで利用経験者が多いのはチャージ式だった。SuicaやPASMOなどの交通系電子マネー64.6%、楽天EdyやWAONなど交通系以外が48.5%だった。

2018年12月のPayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」など各社のキャンペーン攻勢でも話題をさらったQRコード式の決済アプリは24.9%と4人に1人が利用経験ありと回答したが、「最も利用」だと約5%程度だった。

なお、デビットカードは15.8%が利用経験ありながら、現在「最も利用」は1.4%にとどまった。「特に利用していない」現金主義の回答者も9.0%と、ネットアンケートの回答であっても、まだまだキャッシュ好きは一定の割合で存在しそうだと同社はみている。

続いて、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を用いて、主要なキャッシュレス決済アプリの利用ユーザー数と所持ユーザー数を調査した。

行動ログでは、アンケートに比べてチャージ式よりもQRコード決済アプリの所持ユーザーが多い結果となった。物理カードからサービスを開始しているチャージ式や後払い式電子マネーは、まだまだアプリ利用よりもカード利用が多いと同社では推察している(例えば、Suicaの発行枚数は2109年3月時点で7,587 万枚)。

アプリに関してはPayPay(2018年10月リリース)、d払い(2018年4月リリース)、楽天Edy(2016年12月リリース)、楽天ペイ(2016年10月リリース)と、新サービスほどユーザーが多い傾向である。

現時点では物理カードの方が生活に浸透している

アプリ利用ユーザーでみると、ヴァリューズが発表した前回調査と変わらずPayPayがトップを独走中で、6月の利用ユーザーは851万人をマーク。チャージ式の楽天Edy752万人がこれを追い、QRコード決済ブームにあやかって急増したd払い663万人が続いた。楽天ペイは525万人で、同じくチャージ式のモバイルSuica536万人に肉薄した。

濃淡はありますが、QRコードはいずれも2018年11月から2019年6月の8ヶ月間右肩上がり。PayPayは12.4倍、d払いは2.7倍、楽天ペイは2.5倍、Origamiは2.6倍にユーザーを増やしている。

もともと利用が多かったチャージ式の楽天EdyやモバイルSuicaも、アプリユーザーを1.1~1.2倍に増やしているが、QRコードに比べると伸びは控えめだった。同社では、これらサービスは、現時点では物理カードの方が生活に浸透しているのだろうとみている。

QRコード決済利用者は約半数が週に1回以上サービスを利用

2018年12月に実施されたPayPay第1弾キャンペーンの衝撃を経て、現在は各社とも10月消費増税を見据えた「ファースト財布としての定着」へと軸足を移しているわけだが、ユーザーの利用頻度はどうだろうか。

QRコード決済の利用経験者2,283名のうち、もっとも多いのは「週に1~2日」の利用。「毎日」使う人は3.7%にとどまったが、53.2%は週1回以上利用していて、生活に定着している様子である。「週に1~2日」に次いで多かったのは「1カ月に2~3回」だった。「1カ月に1回未満」は11.0%にとどまり、利用経験者の約9割はある程度定期的にQRコード決済を使用しているようだ。

QRコード決済を使う理由は、「キャンペーン中の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が49.0%、「普段の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が42.5%。一方、「キャンペーン中の利用で購入時の支払い金額割引」は16.4%で、同じおトクキャンペーンでも、割引よりキャッシュバック/ポイント還元に軍配が上がった。

「普段よく買い物をする店舗で利用できる」は27.2%、「利用できる店舗が多い」は12.1%と、店舗対応はおトクに比べると控えめな利用動機のようだ。まだまだ利用可能な店舗が限られる、あるいは利用可否がわかりづらい面もあるのかもしれないと同社ではみている。

「クレジットカードで決済できる」、「アプリが利用しやすい」はそれぞれ20%強だった。

QRコード決済利用促進を阻む要因は何だろうか。QRコード決済を使ったことがない7,535人を対象に、使わない理由をアンケートで聴取したところ、「QRコード決済サービスがよくわからない」27.6%、「使い始めるきっかけがない」27.5%がほぼ拮抗した。

3番目に多かったのは「どのQRコード決済サービスを使えば良いかわからない」19.6%だった。還元率や対応店舗数以外の差別化要素を打ち出しづらいなか、こうした層に対する施策としては、LINE Payが実施した「お友だち同士で送金」のような「家族や友人からのクチコミ」を誘発するキャンペーンなどが、ひとつの解といえるかもしれないとヴァリューズでは分析している。


※調査概要
全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、2019年5月31日~6月5日に「キャッシュレス決済サービスに関するアンケート」調査を実施した(回答者10,038人)。
また、全国のヴァリューズモニター(20歳以上男女)を対象として、主要決済アプリの行動ログを分析した。
※アンケート調査は性年代別人口とネット利用率に合わせたウェイトバック集計を行っている。
※行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用。
※アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。
※「LINE Pay」は決済機能単独でのログが取得できないため、主要決済アプリの対象外としている。

<参照元>
「【キャッシュレス決済利用動向調査】消費増税に向けユーザー囲い込みにしのぎを削るキャッシュレス決済業界を調査 QRコード決済利用者は全体の4人に1人にまで拡大」
ヴァリューズ