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海外における事業進出の第一歩として、アメリカの中でもハワイを拠点とする企業が存在する。これは世界の観光地というメリットを生かし、集客の爆発力を狙ってのものだ。実際にハワイでの成功によって、ニューヨーク、ロサンゼルスといったアメリカの他都市や他国へと進出している例も存在する。
しかしハワイは、観光地としての華やかさを持つ一方で、人材確保の困難さやコネクション社会であることなどから、ビジネスを独自で成功させるには大変難しい環境だとも言われている。中には、開店1年で撤退するケースや開店準備中に諦めるケースもあるぐらいだ。しかし、これを事前準備と調査を行えば避けることも可能だ。
もちろん自ら全てを行うことは不可能ではないが、ハワイで着実にビジネスを成功させるには、日本と現地のことが分かり、相談に乗ってくれる「アドバイザー」が求められる。
そこで今回はワイキキの中心に位置するワイキキショッピングプラザ内に作られた日本食グルメ街「ワイキキ横丁」の創始者でもある、クラーク・フランク氏に話を聞くことにした。
- フランク・クラーク
- 米マサチューセッツ州ボストン生まれ。ロードアイランド州ブライアント大学卒業。日・英バイリンガル。元ゴルフ場ジェネラルマネージャー。1997年PR、広告、マーケティングを行うトータルビジネスコンサルティング会社「C.G.International」を設立。アジアからハワイ不動産プロジェクトへの投資や日本のディベロッパーのハワイ進出のサポートなどを手掛け、2010年に「リアルセレクト」設立。
クラーク氏は大の親日家で、日頃から「自身の人生は日本の影響を受けている」と語るほどである。また母親が日本人であり、過去には父親の仕事の関係で日本に住んでいた時期もあるため、日本の文化や言葉にも精通している。そんな彼が、自身の愛する日本をもっと海外の人たちにも知って欲しいと、ワイキキ横丁を立ち上げたのだ。
ワイキキ横丁とは天丼の金子半之助をはじめ、和をコンセプトとしたカフェのナナズ・グリーン・ティーなど14の日本企業を誘致したワイキキの中心にあるグルメ街である。同施設は、連日観光客やローカルで賑わい、まるで日本にいるかのような経験を得られる場所である。
クラーク氏は飲食業界をはじめ、アパレル、雑貨、リゾートなど多様な業界においてハワイ店舗を出したい企業の進出サポートをはじめ、ビザ取得、店舗買収などを含め包括的な支援を行なっている。
これ以外に、不動産開発やバケーションレンタル、ハワイのコンドミニアムの販売や仲介といった不動産業も行っており、「トランプタワーワイキキ」「ザ・リッツカールトン・レジデンス・ワイキキ・ビーチ」などを扱い、大きな成功を収めている。
今回は、2019年7月に実施されたハワイビジネス向けのイベント取材を通して、ハワイビジネスの現状をお伝えすると共に、ScoopUSA.comというサービスがどういうもので、登場した背景についてクラーク氏にインタビューした。まずはScoopUSA.comについて見てみたい。
日本市場に特化したScoopUSA.com
ScoopUSA.comは、日本市場に特化したハワイの商業用不動産とビジネス機会を提供する新たなオンラインプラットフォームだ。
いくつも障壁があるハワイビジネスをサポートしようと、2019年7月に日本市場向けWebサイト「ScoopUSA.com(スクープユーエスエードットコム)」がサービスを開始した。同サイトの目的は、日本企業のハワイ事業立ち上げをワンストップで進むよう手助けすることである。本サイトは、ハワイに拠点を持つリアルセレクト・インターナショナルと同社の最高経営責任者であるフランク・クラーク氏(以下、クラーク氏)が運営する。
フランク・クラーク氏が語る、観光都市ハワイのビジネスで成功に必要なこと
2019年7月7日に都内で開催されたイベントでは、クラーク氏をはじめ、同じくハワイで会計事務所を営むマレク氏(プロワークス・グループ)、弁護士の小林剛氏(GO法律事務所)が登壇した。
各人がこれまでのサポート経験を生かし、ビジネス投資や法人設立の注意点、ハワイビジネスのケーススタディなどを参加者にレクチャーしたが、クラーク氏は自身の講義でハワイビジネスの現場について次のように語る。
クラーク:ハワイは観光都市としては多くの人の素敵な思い出になります。しかしビジネスにおいては、そうとも言えません。
正直に述べると、十分なリサーチと知識がない状態でハワイビジネスに参入しようとすると90%の人にとってハワイは最悪の思い出になります。それはハワイにおける建築のプロセスや労働環境といったビジネス習慣の理解不足、法律や文化の違い、ハワイ独特の島文化といった高い壁などが挙げられます。
ビジネスパートナーの重要性という視点から、次のように続ける。
クラーク:もしあなたがハワイに友人がいたら、その人を頼ってしまうかもしれません。しかし、その友人がハワイのビジネスで多くの成功体験をしていなければ、失敗する可能性の方が高いです。それは、ハワイのビジネスの実態について、詳しく知らないからです。だからこそ着実にビジネスを前に進めるためにも、経験豊富なパートナーが欠かせません。
他地域でのビジネス同様、ハワイのビジネスも甘くはありません。しかし、徹底した事前リサーチと良きパートナーが近くにいれば、成功する確率は格段に高まります。
「ハワイは甘くはない」クラーク氏はしきりにこのフレーズを聴衆に伝えた。それだけ同氏は、日本企業のハワイにおける成功も失敗も見てきたのだろう。
どれだけ起業前に準備をし、ビジネスパートナーに誰を据えて行動するか。それによって、大きく運命が別れるのがハワイビジネスといっても過言ではないことがクラーク氏の言葉から伺える。
ハワイ観光客と日本への興味を繋ぐ
20年以上同ビジネスに携わってきたクラーク氏。日本企業のハワイビジネスに対する厳しい側面を語る彼は、どのような思いからScoopUSA.comをオープンさせたのか。クラーク氏の単独インタビューを通して、彼が日本とハワイのビジネスに抱く気持ちを伺った。
――ScoopUSA.comというのは、日本企業をターゲットにしているとのことですが、その理由を教えてください。
クラーク:ScoopUSA.comは、日本の皆さんにワンストップでハワイ事業を立ち上げるためのプラットホームとして有効利用してほしいと思い作りました。
これまで多くのパートナーを見てきたからこそ、夢の実現に向けて覚悟を決めて進出したい人達に対し、ハートフルそしてスムーズにサポートして行くサービスを自分が作らなくてはと感じたのです。
実は22年間、日本・ハワイの両企業を相手に仕事をしてきましたが、どちらのニーズにも的確に答えられる企業やプラットフォームはほとんどありませんでした。
特にWebプラットフォームについては、欧米向けのサブスクリプションサービスがほとんどです。私たちがリサーチした範囲では、日本語で書かれた日本人向けのプラットホームはScoopUSA.comが登場するまでありませんでした。
ハワイのクライアントも安心して依頼できる日本企業を求めていることもあり、両者のマッチングを促進させるためにもこのプラットフォームは不可欠です。
実際に本サービスについてあるハワイ不動産開発大手の代表に伝えたところ、「35年間、このサービスを待っていた」という言葉をもらいました。
――本サイトはユーザーのどのような部分を支えるのでしょうか?
クラーク:一言でいうと、“日本企業のハワイビジネスへの参入サポートと難しさの解消”です。日本企業がハワイビジネスに参入しようとするとき、まず障壁となるのが「コネクション」「リサーチ」の2つ。無料で登録できるScoopUSA.comを、ぜひハワイビジネスの足がかりとしてほしいと思います。
東日本大震災以降、ハワイの賃貸物件をはじめ、不動産に注目する人が明らかに増えました。しかし多くの人は適切な物件を探す方法を知らないため、手を拱いているのが現状です。
日本は2020年にオリンピックを控えていますが、きっとオリンピックを通して日本に関心を持った人たちが、日本をより経験したいと思うはずです。世界中からハワイを訪れる観光客と、日本企業を繋げる役割をScoopUSA.comは担います。
「Alohaは置いておいて、ビジネスはHakaka(勝負)。そして成功へ」
多くの企業が進出失敗を経験するハワイ。飲食業界を事例に挙げて、クラーク氏は次のように説明する。
――日本企業の失敗の具体例を教えてください。
クラーク:皆さんはミシュランの星獲得数合計の世界No.1は日本ということをご存知でしょうか。しかし日本市場だけでは、企業が大きな成長を見込むのは難しいのも事実。そのため事業拡大を見据えて世界へ飛び出す企業が出てきました。
ですが、出店都市の市場リサーチ不足、商習慣や労働法に対する知識不足などによって、1年以内の撤退を余儀なくされるケースは後を絶ちません。中には出店前の準備段階で資金枯渇によってギブアップしてしまうケースもあります。
また日本文化をそのまま持ち込もうとすることで、現地人材の負担や日本から渡米する従業員のビザ問題なども進出失敗に影響します。
だからこそ「Alohaは置いておいて、ビジネスはビジネス」としっかりと割り切ることが重要だと伝えたいです。
では、厳しい印象が否めないハワイビジネス。成功するにはどのような要素が必要なのか。クラーク氏は次のように説明してくれた。
クラーク:「徹底した事前リサーチ」「専門領域を専門家任せにしない」「ローカルネットワークとのコネクト」の3つです。
まずリサーチについては、残念ながら力をかけていない企業が多すぎます。例えば日本では800円ラーメンが、ハワイでは2,000円近くで販売できるのです。残念ながら、多くの企業はその事実を知りません。だから日本の感覚で経営計画を練って失敗してしまうのです。
むしろ物価のことを考えると、それぐらいの金額で販売しないと収益が見込めません。そのため顧客には1億円の建築費用を入れる前に、ある程度の予算をかけてベーシックリサーチをしっかりしてほしいと伝えているぐらいです。
これはあくまでも販売価格ですが、リース契約、商圏、マーケティング、競合相手などリサーチするべきことはたくさんあります。これを行わないと後々苦労することになります。
――「専門領域を専門家任せにしない」「ローカルネットワークとのコネクト」についてはいかがでしょうか。
クラーク:各種専門家の力があるからといって彼らに任せすぎず、自分たちで徹底的に「なぜ?」と問う必要があります。彼らは専門性の面でサポートできますが、皆さんのビジネスを深く知っているわけではないからです。どんどん自分たちから前に進んでいく必要があります。専門家だからと言って任せ切っては良くありません。
ローカルネットワークとのコネクトについてですが、ハワイは、「〇〇高校を卒業した」「△社長と友達です」のように繋がりを大事にします。特に、人材面においてはこの繋がりが重要です。いきなりローカルネットワークに入ることは困難なため、自身のビジネスを理解してくれる現地パートナーを探す必要があります。
――最後に、ハワイビジネスと向き合っていく上で最も重要なことを教えてください。
クラーク:「Never give up」です。月並みな言葉ですが、この一言に尽きます。このプラットフォームをリリースするまでに約2年半かかりました。実は構想としては何年も前からありましたが、中々周囲にニーズを理解してもらえず、前へと進めなかったのです。
しかし、諦めずに本サービスの重要性を伝え続けたことで少しずつ理解者が現れ、結果としてScoopUSA.comのオープンまでこぎつけました。
これまで日本で経験と実績を積んできた皆さんのアメリカ進出の足がかりとして、私たちがハワイの商業分野で築いてきた信用がお役に立ててもらえたらこれほどまでに嬉しいことはありません。
両国を熟知するプラットフォームがビジネスの成長を加速させる
米国進出の最初の第一歩として、ハワイ進出を手助けするプラットフォームScoopUSA.com。
異国の地でビジネスをすることは大変であるが、適切な現地パートナーを日本に居ながら見つけることも困難だ。
だからこそ、ハワイと日本の両方の企業を熟知しているクラーク氏のような存在がその知識とノウハウを注ぎ込んで作り出したプラットフォームは、これから両国を視野に入れて動こうとする人にとって、きっと重要なツールとなるだろう。