リスクモンスターは2019年7月22日、第7回「金持ち企業ランキング」調査結果を発表した。

主なトピック中から以下の3つ。

  • ランキング1位は「東芝」
  • 上位20社にランクインしている業種は、輸送用機械器具製造業が最多
  • 東芝は、経営再建の一環として有力事業(子会社)を他社に売却し、多額のCashを獲得

経営再建中の東芝が1位に

決算書の記載に基づき算出したNetCash(現預金-(短期借入金+長期借入金+社債+一年以内返済の長期借入金+一年以内償還の社債+割引手形))を比較した「金持ち企業ランキング」のランキング1位は「東芝」(NetCash 9,777億円)だった。

次いで「任天堂」が2位(同8,445億円)、「信越化学工業」が3位(同8,120億円)となり、以下「SUBARU」(同7,313億円)、「ファナック」(同6,071億円)、「SMC」(同5,123億円)、「キーエンス」(同4,682億円)、「日本航空」(同3,251億円)といた。

上位20社にランクインしている業種としては、輸送用機械器具製造業が最多の3社(SUBARU、三菱自動車工業、シマノ)を占め、その他に製造業が10社(東芝、任天堂、信越化学工業、ファナック、SMC、キーエンス、大正製薬ホールディングス、ローム、小糸製作所、バンダイナムコホールディングス)ランクインしたことで、上位20社のうち13社が製造業となり、製造業におけるCashの潤沢度合いがうかがえる結果となった。

前回順位との比較においては、「東芝」の大幅ランクアップ(2,813位→1位)が目立つ。同社は、経営再建の一環として有力事業(子会社)を他社に売却し、多額のCashを獲得したことによりランクインしたものと考えられる。

また、10位の「大正製薬ホールディングス」(前回22位)は、大幅にランクアップし、前回上位20社圏外からの上位進出となった。その他、17位「バンダイナムコホールディングス」(同28位)は、前回から大きくランクを上げているが、その他は上位の顔ぶれに大きな変化は見受けられない結果となった。

経営の安定性を確保しつつ投資や株主還元によってCashを有効活用せよ

同社は総評として、次のような分析を行っている。金持ち企業ランキングにおいて、第1回から第4回は「ファナック」、第5回と第6回は「信越化学工業」が1位となっていたが、7度目となる今回は「東芝」が1位となった。「東芝」においては経営再建を図る中、メモリ事業の売却により多額のCashを獲得したことがランクインした要因となっている。

経営の三大資源の一つである「カネ」を保有しておくことは、安定した経営を実現する上で必要だ。7月1日に発表された日銀短観で景気が2四半期連続で悪化している中、今回の上位20社にランクインした企業のうち、16社において、前回よりもNetCashが増加している点は、まさにそれらの企業が景気動向も考慮しつつ、経営の安定性を高めるための戦略としてNetCashの蓄積を進めているとも考えられる。

NetCashの増減額と営業キャッシュフローを比較すると、「任天堂」をはじめとする毎回上位にランクインしている企業の多くは、一定の営業キャッシュフローを確保して、その一部をCashとして蓄積している企業が多い。

そんな中、今回1位となった「東芝」は営業キャッシュフロー1,248億円に対して、NetCashが1兆3,518億円増加していることから、本業収益による現金創出ではなく、事業売却によって多額のCashを獲得している点において、他のランクインした企業との違いが際立っている。

上場企業においては、ROE(自己資本利益率)を高める経営戦略が求められており、上位20社中13社において、投資家が企業に求めると言われている10%の基準を上回っている点を考慮すると、このランキング上位企業においては、経営安定化のためのCashの蓄積と同時に、積極的なCash運用により利益創出につなげている様子がうかがえる。

ランキング上位企業のように、経営の安定性を確保しつつ、積極的な投資や株主還元によってCashを有効活用することで、日本経済をけん引していく企業が増えていくことに期待するとしている。


※調査概要
・調査名称:第7回「金持ち企業ランキング」調査
・調査方法:決算書の分析結果に基づく調査
・調査対象決算期:2019年6月17日時点で開示されていた
         2018年4月期決算以降の最新決算
・調査対象者:金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)、
         IFRS適用企業を除く決算短信提出企業
・調査対象企業数:2,876社

<参照元>
「金持ち企業ランキング」調査  話題のあの企業が初のランキングトップに?!」
リスクモンスター