アイ・キューでは、日本最大のHRネットワーク『日本の人事部』会員140,000人(企業の人事担当者・経営者)に向け、大規模なアンケートを実施した。全8テーマ、146問のアンケートにのべ5,022社、5,273人が回答、2019年7月3日にその調査結果(一部抜粋)を発表した。

主なトピックは8つ。

  • 8割を超える企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実践できている企業は3割に満たない
  • 2020年卒採用では、「大学3年の6月以前」に学生との接触を開始した割合が、大手企業で大幅に増加
  • 「自社の人材育成施策で従業員を育成できていない」と感じている企業は5割超。業績の悪い企業では8割弱に及ぶ
  • 評価を昇進・昇格に反映している企業は多いが、「評価結果への納得」や「配置転換への活用」「業績向上につながっている」企業は3~4割にとどまる
  • 自社が「LGBTの従業員がカミングアウトしやすい職場」だと思う企業は、4.2%
  • 残業時間削減に取り組む企業は約85%。取り組む理由は「従業員の健康増進」「法規制への対応」「人材の離職防止」
  • 採用業務に「HRテクノロジー」を活用している企業は約3社に1社。昨年と比べ倍増、大企業では半数近くを占める
  • 「エンゲージメント」の重要性は9割の企業が認識しているが、実際に従業員のエンゲージメントが高いのは約3割

8割を超える企業が戦略人事の重要性を認識

「戦略人事」が重要であるかを聞いたところ、「当てはまる」(54.5%)、「どちらかというと当てはまる」(30.3%)を合わせて84.8%と、8割を超える企業が戦略人事の重要性を認識している。

では、人事部門は実際に「戦略人事」として機能しているのだろうか。回答を見ると、「当てはまる」は7.3%と少なく、「どちらかというと当てはまる」(21.1%)を合わせても、28.4%にとどまっている。一方、「当てはまらない」(35.9%)、「どちらかというと当てはまらない」(32.1%)は合わせて68.0%。戦略人事の重要性は認識していても、実際には戦略人事として機能していない実態が浮き彫りとなった。

企業の採用担当者に、「選考に影響を与えることを前提に、学生との接触を開始した(もしくはする予定)の時期」を聞いた。

「2019年卒採用」においては、2017年(大学3年)の6月以前に学生との接触を開始した企業は9.6%、従業員数5,001人以上の企業では5.9%だった。

相談相手がいないため、ネットやブログを読んで勉強する人や実践で学ぶ人が多いということが言える。

また、自分で勉強しているものの、金融リテラシー不足を感じている人が8割近くおり、自分の投資スタイルに不安を抱えたまま取引をしている人がいることが明らかになった。

65.9%が「従業員育成ができていない」

研修を実施している企業の育成担当者に「自社の育成施策によって従業員を育成できているか」を聞いたところ、もっとも多いのは「あまり感じない」(51.6%)で、過半数を占めた。

また、「全く感じない」は14.3%で、二つを合わせると「感じない」割合は65.9%に及ぶ。

一方、「感じる」(28.5%)、「強く感じる」(2.1%)を合わせると30.6%。多くの企業で人材育成に手応えを感じられていないことがわかる。

人事評価の結果について、項目ごとにどのような状況(活用実態)となっているかを聞いた。「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」を合わせた割合を見ると、もっとも高いのは「評価結果が昇給に適切に反映されている」(74.5%)で、4社に3社を占めている。

その後は「評価結果が昇進・昇格に適切に反映されている」(69.3%)が続き、以下、「被評価者は評価に納得している」(42.9%)、「評価が人材育成や配置転換に適切に活用されている」(41.3%)、「評価が会社の業績向上につながっている」(35.5%)となっている。

評価結果が昇給や昇進・昇格に反映されている企業は7割前後と多くなっているが、評価結果への納得や配置転換への活用、業績向上につながっているという項目では3~4割にとどまっており、今後の課題と言えそうだとしている。

進んでいない従業員のLGBTカミングアウト環境

「貴社はLGBTの従業員がカミングアウトしやすい職場だと思いますか」という質問に対して、「そう思う」と答えた企業は4.2%、「どちらかというとそう思う」(16.4%)と合わせても、2割強だった。多くの企業では、LGBTの従業員がカミングアウトできるような環境づくりがまだまだ進んでいないことがうかがえる。

働き方改革が進む中で、現在、残業時間の削減に「積極的に取り組んでいる」と答えた企業は34.8%、「取り組んでいる」という企業は49.8%で、合計すると84.6%となった。また、現在は取り組んでいないが今後取り組む予定」と回答した企業も9.5%あった。

では、企業はどのような理由から残業時間削減に取り組むのだろうか。残業時間削減に「積極的に取り組んでいる」「取り組んでいる」「現在は取り組んでいないが今後取り組む予定」と回答した企業に聞いたところ、「従業員の健康増進」をあげた企業が72.9%、「法規制への対応」が58.0%、「人材の離職防止」が51.8%で、トップ3となった。

HRテクノロジー活用の割合は1年間で約2倍に

採用におけるHRテクノロジー活用の割合は、「活用している・成果あり」(23.2%)、「活用している・成果なし」(9.1%)を合わせて32.3%という結果となった。昨年は15.1%だったので、この1年間で約2倍に増加したことになる。

従業員規模別に見ると、大企業で活用の割合が高くなっており、1,001~5,000人は46.9%、5,001人以上では47.2%と、半数近くを占めている。

いま、人事領域において大きな注目を集めている「エンゲージメント」。その重要性をどのように考えているのかを聞いたところ、「大変重要である」(48.6%)、「重要である」(41.4%)を合わせて90.0%に達しており、「重要ではない」(0.7%)「あまり重要ではない」(1.9%)はごく少数という結果になった。

実際に従業員のエンゲージメントはどのような状態にあるのかを聞いたところ、「高い」は3.3%で「どちらかというと高い」(27.3%)と合わせても、30.6%にとどまっていた。一方、「低い」(17.2%)、「どちらかというと低い」(39.7%)は合わせて56.9%と過半数を占める。


※調査概要
・調査時期:2019年3月19日~4月9日
・調査対象:『日本の人事部』正会員
・調査方法:Webサイト『日本の人事部』にて回答受付
・回答数 :のべ5,022社 5,273人
・回答者属性:企業の人事担当者・経営者
・詳細:https://jinjibu.jp/research/
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<出典元>
「『日本の人事部 人事白書2019』発刊  全国5,022社の人事実態調査」
アイ・キュー