デロイト トーマツ グループは2019年4月22日、「TMT Predictions 2019 日本版」を発行したと発表した。
これは、デロイト グローバルがテクノロジー・メディア・通信(TMT)業界におけるグローバルトレンドを予測し発表した「TMT Predictions」をもとに、日本オリジナルの考察・分析を加えたレポート。今回は、このレポートの中からポイントをいくつか抜粋してご紹介する。
TMT Predictions 2019 日本版では、グローバルで発表した5G、AI、スマートスピーカー、eスポーツ量子コンピュータなどに関する10の業界予測に対して、各分野の日本の専門家が日本企業として変化にどう対処し、どう対応すべきかを「日本の視点」として解説している。
また日本独自のコンテンツとして、いま日本企業が取り組むべき4つのテーマとして「APIエコノミー」「IoTの活用」「IoTのリスク対応」「ロボティクス」を取り上げ、世界の動向や日本における現状と対応策などについて示している。
まず、「日本の視点」のポイントとしては、以下状況を解説している。
- 5G:共創による新しい市場作り
- Artificial Intelligence(AI):日本におけるAIの「民主化」
- スマートスピーカー:日本におけるスマートスピーカーの現状と今後の課題
- TVスポーツ/スポーツベッティング:スポーツベッティングによるスポーツ振興とアスリート支援への活用可能性
- eスポーツ:eスポーツ市場の持続的成長に向けて
- ラジオ:デジタルを活用したリスナー拡大と、音声領域での新たなビジネスモデル
- 3Dプリンティング:国内量産現場での課題
- 中国の通信環境:日本企業から見る中国データ経済圏の位置付け
- 中国の半導体市場:市場展望と日本企業の戦い方
- 量子コンピュータ: Next Technologyに向けて日本企業が取り組むべきこと
グローバルで端末の販売規模が、2020年までには1,500~2,000万台に伸びると推計される5G。日本においての5G浸透には「5G価値の消費者実感」「端末の低コスト化」「通信事業者の設備投資負荷」のハードルがある。日本における5G浸透に向けては共同事業による仕掛けづくりがポイントとなる。
グローバルでは2020年までにAIソフトウエア使用企業におけるAI統合型エンタープライズソフトウエアサービスの普及率は87%、クラウドベースAI開発サービスの利用は83%まで増加すると予測し、AIの利用が一般企業にも拡大する「AIの民主化」が進むと想定している。しかし日本における「AIの民主化」には「日本語」「実用性」「データガバナンス」の3つのハードルがある。
グローバルにおけるスマートスピーカーの2019年の市場規模は前年比63%増の70億ドルに拡大すると予測している。日本においては2017年にスマートスピーカーの発売が開始されたが、認知度が60%に達するのに対し、普及率は現状3%程度にとどまる。しかし、いくつかの技術的なブレークスルーにより各家庭での導入は急速に進むと想定される。
グローバル版では、米国において2019年にはテレビスポーツ視聴者の40%がスポーツベッティングに関与する機会があり、テレビ視聴のドライバとなると予測している。
一方日本においては法的、文化的な背景からスポーツベッティングが直ちにビジネスの主流となることは考えにくい。日本でもインテグリティの確立を前提とした導入について一考の余地がある点を解説する。
グローバルでは2019年に、特に北米のeスポーツ市場が、広告、放送権、フランチャイズリーグの拡大によって35%伸長すると予測している。今後日本においてeスポーツ市場がどのように拡大するか、企業視点でどう取り組むべきか、展望と課題を解説する。
グローバルでは世界のラジオ収益が2019年に前年比1%増の400億ドルに達すると予測している。日本のプレイヤーへの示唆となるような、デジタルを活用したストック型モデルへの転換やデジタルチャネルを活用した若者層の聴取獲得など具体的な事例を解説する。
グローバルでは、3Dプリンティングに関連する大手上場企業の売上は、2019年には27億ドルを超え、2020年には30億ドルを上回ると予測している。日本においても3Dプリンティング市場は堅調に成長し、日系企業も3Dプリンタの開発・活用を加速させている。国際競争力を保つためにも日本企業が解決すべき課題を解説する。
グローバルでは、2019年時点で中国が世界有数の通信網を構築し、その状況が中期的に続くと予測している。中国におけるデータビジネスの発展が、グローバルでデータビジネス展開を志す日本企業にとってどのような機会をもたらすかについて考察する。
グローバルでは、2019年に中国で製造される半導体の収益が約1,100億ドルに成長すると予測している。日本の半導体企業の市場シェアは減少傾向にある。市場の展望と日本企業の戦い方について、2つの戦い方、3つの方向性を提示する。
グローバルでは、量子コンピューティング(QC)は今後10年において、テクノロジー領域でもっとも期待できる収益機会の1つとして台頭するものの、従来型のコンピュータを代替する可能性は低いと見る。2030年代には量子コンピューティング市場はスーパーコンピューター市場と同等の年間500億ドル規模に成長すると見込まれる量子コンピューティングについて、日本企業はどう取り組むべきか解説する。
日本独自の4つのトピックスとは
また、日本独自のコンテンツのポイントとして以下の4つを解説している。
- APIエコノミー:企業の競争力の源泉となるAPIマネジメント力
- IoT活用における課題と処方箋:実証実験の壁を越えるには
- IoTが企業にもたらすリスク:DXに潜むセキュリティ脅威と機器設計段階からの対策
- ロボティクス:ロボティクスオートメーションの進化
日本においては開発の現場と特に大企業におけるビジネスの現場にギャップが存在しAPIエコノミーの活性化やAPIを活用したビジネスやイノベーションの創出、機動力を持った経営には至っていない。現状を打破するために必要な3段階のステップを概説する。
日本は普及率でグローバルに5年遅れているとも言われる。課題を乗り越えるためには日本企業がロードマップを策定することが必要だ。そのための要点を解説する。
すでに欧米ではセキュリティ要件を調達品に対して設けており、日本でも2020年4月からIoT機器のセキュリティ対策が義務化される。対策のために必要な視点と要点を解説する。
製造業などの生産工程ではすでにほとんどの工程が自動化されているといった印象もあるが、自動化が進んでいるのは加工工程中心で、工程全体における自動化率は現状でも50%に満たないと見ている。しかし、今後は認識技術やAI、通信技術の進歩によって急速に完全自動化が進むと考えられる。2020年以降に向けた自動化のステージと、関連技術ロードマップについて詳説する。
<参照元>
『テクノロジー・メディア・通信業界予測「TMT Predictions 2019 日本版」を発行
』デロイト トーマツ