中国自動車メーカーGeelyによる米Terrafgiaの買収、テンセントによるドイツLiliumへの出資など、中国大手企業による空飛ぶ自動車企業の囲い込みが進んでいる。

中国では今後、大小含め500カ所で空港の新設が計画されている。空飛ぶ自動車向けの重要インフラになる可能性もあり、大手企業は中国市場の立ち上がりを見据えて買収や出資を行っているようだ。

2018年11月、上海で開催された国際見本市CIIEでは、中国複合企業Baoneng(宝能)がスロバキアの空飛ぶ自動車企業AeroMobilとの戦略提携を発表し、中国での販売に注力する姿勢を明確に示した。

AeroMobilは1990年頃から空飛ぶ自動車のコンセプトモデルを開発してきた。

モデル1.0(1990〜1994年)、モデル2.0(1995〜2010年)、モデル2.5(2010〜2013)のコンセプトフェーズを経て、2014年にプロトタイプであるモデル3.0の開発に移行。モデル3.0は2015年に実際飛行している姿が公開され、多くの注目を集めた。その後さらに開発を進め、現在モデル4.0とモデル5.0が主力モデルとなっている。


AeroMobilモデル3.0の試験飛行(AeroMobilチャンネルより)

モデル4.0はモデル3.0を踏襲した短距離離着陸(STOL)機だ。翼は折りたたみ式となっており、離着陸には約600メートルの滑走路が必要となる。

地上での最高速度は時速160キロ、飛行時の最高速度は時速360キロ。75%の出力で、約750キロの距離を飛行することができる。

2020年の販売開始を目指している。販売価格は明らかにされていないが、150万ドル(約1億7,000万円)ほどになると見られている。


AeroMobilモデル4.0(AeroMobilウェブサイトより)

一方、モデル5.0は滑走路を必要としない垂直離着陸(VTOL)機となる。同社ウェブサイトよると、販売開始は7〜10年後になる見込みという。


AeroMobilモデル5.0(AeroMobilウェブサイトより)

CIIEでは、同社はモデル4.0を展示するとともに、モデル4.0とモデル5.0をベースとした中国向けモデル「Sky Dragon」のコンセプトを公開。中国で好まれる赤を基調としたデザインを採用しており、中国での販売を目指す同社の意気込みをアピールする形となった。


AeroMobil「Sky Dragon」(AeroMobilウェブサイトより)

今回AeroMobilとの戦略提携を締結した中国複合企業Baonengはアリババやテンセントのように名の知れた企業ではないが、近年の積極的な買収攻勢で注目を浴びるようになった。また創業者のYao Zhenhua氏は長者番付に名を連ね、一代で巨大な複合企業を作り上げた敏腕起業家として広く知られている。

Baonengは1992年に小売企業として創業され、現在では中国国内に40店舗以上のショッピングモールを運営している。一方、事業分野を拡大し、不動産、ロジスティクス、金融サービスなどを提供する複合企業となった。

2017年12月には中国の自動車メーカーQorosを買収し、自動車分野への進出を果たしている。Qorosはラグジュアリーブランドとして認知されており、Qorosの顧客層とAeroMobilの親和性は高いと考えられる。

今後、Qorosのネットワークを生かして、空飛ぶ自動車が販売される可能性もある。

ボストン・コンサルティング・グループは2030年の空飛ぶ自動車市場を4つのシナリオで予測している。もっとも控えめなシナリオでは、空飛ぶ自動車は世界で1万台しか普及しないという。これは高コスト、インフラ不足などの問題が解決されていない場合だ。

一方、これらの課題がクリアでき、かつテクノロジー発展速度が予想を上回る場合、もっとも楽観的なシナリオとして6,000万台の普及が見込まれる。このほか2つのシナリオでは、普及台数をそれぞれ20万台、800万台と予想している。

中国の空飛ぶ自動車市場は今後どのような発展を見せるのか。AeroMobilの動向だけでなく、中国政府のインフラ、法規制の整備動向からも目が離せない。