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バイドゥ、テンセント、アリババとIT大手が開発を競う中国自動運転車市場。
バイドゥは自動運転車開発のオープンプラットフォーム「Apollo(アポロ)」をローンチ。アポロには、BMW、フォード、ホンダ、フォルクスワーゲン、インテル、マイクロソフトなどグローバル企業が多数参加、これによりバイドゥは中国での自動運転車開発を1歩リードする存在として認知され始めている。一方、テンセントとアリババは国内やシリコンバレーで人材獲得に乗り出しており、自動運転車開発をさらに加速させる計画だ。
IT大手がしのぎを削るなか、自動運転車開発に特化した中国スタートアップが登場し、開発競争は激化の一途をたどっている。有望視されているスタートアップは、Roadstar.ai、Pony.ai、WeRide.aiの3社だ。これらスタートアップの創業・主力メンバーたちは、バイドゥ、グーグル、テスラなどの自動運転車プロジェクトに携わった者が多く、注目度は非常に高い。
2020年までに1,000台生産計画、深センのRoadstar.ai
Roadstar.aiは深センを拠点とするスタートアップ。設立されたのは2017年5月とつい最近だ。創業者の1人Xianqiao Ton氏はバイドゥの自動運転車プロジェクトに携わった経験を持っている。それ以前にはアップルやNVIDIAなどでソフトウェアエンジニアとして働いていた。
設立1年後の2018年5月にはシリーズAラウンドで1億2,800万ドル(約144億円)を調達し、中国の自動運転車企業としてそれまでの調達額記録を塗り替えたとして話題を呼んだ。
同社が開発している自動運転ソフトウェアAriesは、これまで難しいとされてきた雨天や夜間の自動運転を誤差5センチで可能にするといわれている。自動運転技術は評価されており、中国政府からは国内2都市での公道試験走行ライセンスを取得している。
チャイナ・デイリーが2018年7月に伝えたところでは、Roadstar.aiは2020年までに電動自動運転車を1,000台以上生産する計画を発表。中国だけでなく北米、欧州、日本などに事業拡大する計画もあるという。
また同社の自動運転車を活用した配車サービスを展開することも考えており、今後中国配車サービス最大手Didiとの提携可能性もあると示唆している。すでに生活関連オンラインサービスのMeituanと提携し、自動運転車によるデリバリーサービスの開発を進めている。
シリーズAラウンド過去最高額を記録したPony.ai
Pony.aiもバイドゥの自動運転車プロジェクトに携わった人物らが中心となって設立されたスタートアップだ(2016年12月設立)。北京、広州、シリコンバレーに拠点を構えている。
共同創業者兼CEOを務めるJames Peng氏は、バイドゥでビッグデータやクラウド部門のエンジニアを経て、自動運転車部門のチーフアーキテクトに抜擢。バイドゥに入る以前はグーグルでソフトウェアエンジニアをしていた。
Pony.aiのもう1人の共同創業者でCTOのTiancheng Lou氏もバイドゥの自動運転車部門でトップエンジニアを務めた経験を持つ。バイドゥに入る前はグーグルの自動運転車プロジェクトに携わっていた。
同社は2018年7月シリーズAラウンドでRoadstar.aiを上回る2億1,400万ドル(約240億円)を調達したことがメディアで大々的に報じられ、その名前が広く知られるようになった。
2018年2月に広州市南沙区で、同年6月には北京で、自動運転車の走行ライセンスを取得。CNBCによると、現在南沙区で約50台の自動運転車で配車サービスを提供しているという。
無人タクシーサービスなどに携わるWeRide.ai
WeRide.aiは、Roadstar.ai、Pony.aiと比較すると若干知名度が下がるかもしれない。同社は2017年4月にJingChiという社名で設立されたが、2018年10月にWeRide.aiに社名を変更。
社名変更の理由は定かではないが、創業者のWang Jing氏が2018年2月末頃に辞職したことが背景にあると考えられる。Jing氏は起業前、バイドゥの自動運転車部門・上級バイスプレジデントを務めていた。バイドゥは2017年12月、Jing氏が競業禁止契約に背き自動運転車に関わる技術を不正流用したとしてJing氏とJingChi社を相手取った訴訟を起したのだ。地元メディアはJing氏の辞職はこの訴訟の影響によるものと推測していた。
Jing氏の辞職後、バイドゥはJingChiに対する訴訟を取り下げ、協力関係を打診したといわれている。実際、2018年3月にはJingChiはバイドゥのアポロプラットフォームに参画することを発表、バイドゥの協力のもと自動運転車の開発を進める方向を示した。
2018年10月末、WeRide社へ社名変更すると同時に、シリーズAラウンドの資金調達を実施したと発表。調達額は明らかにされていない。この調達ラウンドを主導したのは、ルノー・日産・三菱による合同ベンチャーキャピタル「アライアンス・ベンチャーズ」だ。今回の資金調達により、WeRideは広州市と安慶氏で事業化に向けた試験走行を進め、2019年までに500台の自動運転車を生産する計画という。
2018年10月末には広州市で中国初の無人タクシーサービスが開始されたと報じられたが、WeRide.aiはその技術基盤を提供しており、今後の開発進捗に期待が寄せられている。
バイドゥ、アリババ、テンセントなどのIT大手、中国の自動車メーカー、そして今回紹介したスタートアップが入り混じり、競争が激化する中国の自動運転車開発。バイドゥが優位であるといわれているが、スタートアップへの資金流入や支援を見ていると、この先どのような展開になるのかは未知数といえるだろう。
文:細谷元(Livit)