企業が新しいサービスを始めようとする際、自社で0からビジネスモデルを立ち上げることが困難な場合も多いだろう。

そんなとき、他社が構築済の既存のビジネスモデルと連携することによって、相乗効果を引き出しつつ新しいビジネスモデルを生み出せることがある。この記事では、その良い例を紹介する。

スペースシェア「スペイシー」とスキルシェアサービス「サイタ」が業務連携をスタート

国内最大のワークスペースのシェアリングサービスと、サービススタート以来、27万件のマンツーマンのプライベートレッスンを創出してきたスキルシェアサービスが手を組んだ。

格安の個室を約4,900室以上取り揃えるスペースシェアサービス「スペイシー」を展開するスペイシーは、10月11日からクラウドワークスが運営する学びのスキルシェアサービス「サイタ」との業務連携によって、両者を掛け合わせた新しいビジネスモデルを展開すると発表した。

「サイタ」は、自身の得意を活かしたいと考えるコーチと、その得意を学びたいと考える受講生をマッチングさせる「学びのスキルシェアサービス」。

サイタでは今まで数多くのマッチングを成功させてきたものの、レッスンする場所について受講生より「カフェのようなオープンスペースでは周りの目が気になる」という声が寄せられていた。

一方のコーチ側からも「予約できない場所も多くレッスン会場選びが大変」との声が上がっていたという。

今回の連携では、スペイシーが有するシェアスペースを、サイタ利用者に使ってもらいやすい仕組みを整えるとのこと。これにより、サイタの受講生・コーチのレッスンスペースに関する悩みを解消し、快適にレッスンが行える環境作りを目指す。

スペイシーとしては、サイタと連携することで新たな顧客を獲得することができるため、今回の新しいビジネスモデルは、両者にとって実りある相乗効果が期待できる。

それぞれのビジネスモデルの強みを活かせる業務連携

ここ数年でシェアリングサービスが拡大。内閣府の発表によれば、2016年時点でシェアリングエコノミーの市場規模は最大で5,250億円にも上るとのことだ。

シェアリングエコノミーの拡大に伴って、年齢に関係なくスキルシェアで収入を得たり利用したりしたいという人が増えてきている。そんななかで、サイタでも順調に利用者数を伸ばしている。

しかし、さらなるサービス拡大のためには、コーチと受講生のレッスン会場選びにかかわる負担を減らし、快適なレッスン環境を整えてサービス品質向上を実現する必要があった。

一方のスペイシーでは、シェアスペースをより多くの方に利用してもらうため、新たな利用シーン創出や新規顧客獲得を目指していた。

このような状況を背景として、異なる分野でシェアリングサービスを展開する大手2社がそれぞれのビジネスモデルを活かして業務連携し、サービス品質の向上とサービス拡大を目指して新しいビジネスモデルを創出したわけだ。

両者の強みを活かしつつ、お互いのニーズを満たすことを期待できる業務連携の好例といえるだろう。

スペイシーではこの連携を通じ、自社が抱える遊休スペースを利用するユーザーが増え、よりリーズナブルに誰もが学びやすい環境を提供できると話している。

今後、さらに他のシェアサービスとの連携も検討し、シェアサービスによる新しいビジネスモデルを提案していくとのことだ。

相乗効果を生み出す業務連携は他にも

業務連携による相乗効果で、新たなビジネスモデルを成功させようとする例は他にもある。フードシェアリングプラットフォーム「tabeloop(たべるーぷ)」と、漁業・飲食店などのストアビジネスを展開するゲイトの業務提携もその1つだ。

tabeloopは、食品ロス削減を目指し生まれた日本初のBtoB向けフードシェアプラットフォーム。食べられるものの廃棄されてきた食品を、tabeloopにて掲載・販売することによって買い手・売り手を結び付けてきた。

対するゲイトは、値段をつけにくい魚を中心に買い付けを行い、現地で加工。それを自社の物流を用いて都内の居酒屋まで運送・提供するというサプライチェーンを運営する企業だ。

その他、市場に流通されない野菜を買い取り、居酒屋やカフェで提供するというビジネスモデルも展開している。

この業務連携では、類似するビジネスモデルを展開する両者が、互いのサービス・物流などの仕組みを相互活用したり、食品ロスなど食に関する広報・啓蒙・食育を協力して展開したりするとのことだ。

両者はいずれも、深刻になっている食品ロスの問題に取り組む期待の持てるビジネスモデルといえる。そんな両者がタッグを組むことで、さらなる成果が生まれることが期待される。

ビジネス×ビジネスは新たなビジネスモデルを生む

今回紹介した2つの事例は、2つのビジネスモデルそれぞれの強み・ニーズをうまく組み合わせたモデルケースといえるだろう。

社会的にも意義深い異なるビジネスモデルが掛け合わさることで、新たなビジネスモデルが生まれるというのは興味深く、実際、1つのビジネスモデルでは成しえなかった効果もあることだろう。

今後もこのような業務連携が登場することに期待したい。

img:PR TIMES