商品に値しない規格外の食材や消費期限切れによる商品の廃棄などの食品ロスが、深刻な問題となっているのはご存知だろうか。環境省の2015年度の調査によると、日本では年間でおよそ646万トンの食品ロスが出ているという。

一方で、飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量は年間約320万トン(平成26年)。その約2倍の量が廃棄されているというのが現状だ。

こうした食品ロスの削減に向けて取り組むフードシェアリングサービスは、日本でもみられるようになってきた。物流網の問題や連携先の確保など取り組むべき課題が多いなか、他社とのサービス連携によって拡大を図ろうとする試みが始まった。

プラットフォームとサプライチェーンの相乗効果を目指す

フードシェアリングプラットフォーム「tabeloop(たべるーぷ)」と、漁業、飲食店などのストアビジネスを展開するゲイトが、包括協力協定を締結した。両社の強みを活かし、食品ロスおよび食品ロス以前の問題に取り組むという。

tabeloopは2018年6月に開始された、食品を売りたい人と買いたい人をつなぐサービス。食品ロス削減を目指した、日本初のBtoB向けフードシェアプラットフォームだ。

これまで食べることができるが廃棄されてきた食品を、tabeloopを通して掲載・販売することで、買い手と売り手を結びつけるという仕組みだ。

一方ゲイトは、三重県で値が付けにくい魚を中心に買い付け、現地で加工後に自社物流便にて都内へ運送し居酒屋にて提供するという一連のサプライチェーンを実施している。

東京都内で飲食店やヘルスケアなど14店舗のストアビジネスを展開するとともに、三重県尾鷲市での漁業だけでなく、同県や神奈川県、栃木県、千葉県の農家と連携し、市場に流通されない野菜を買い取り、魚同様に自社が運営する居酒屋やカフェにて提供をしている。

今回の包括協力は、食にまつわる社会課題をビジネスに乗せて解決しようとしている両社が、既存のサービスや物流などの仕組みを相互活用しようという試みだ。

協力内容は以下の5つを柱とする。

  1. 双方が掲げるSDGs達成に向けた事業連携
  2. 食品ロスについての広報、啓蒙活動
  3. tabeloopを通じた商品の購入(特に自然災害による規格外野菜)
  4. 生産地(漁業)、飲食店を活用した食育事業
  5. その他「食」にまつわる関連するさまざまな事業

味は問題なくても、形や色、傷などの見た目の問題で市場に出回らない「規格外の食品」。これは、台風による被害や見た目を気にする消費者の傾向もあり、日本の食品ロスの大きな原因にもなっている。

少しずつだが、食品ロスが問題視されるようになってきた今、同じ課題に取り組む企業が協力し、より大きなプロジェクトに昇華されることが期待される。

既存サービスの連携で、食品ロスと貧困問題に同時に取り組む

同様に、食にまつわる社会課題に挑むサービスとして相互連携した例は海外でもみられる。

アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くDoorDashは、レストランと宅配ドライバーのマッチングをしてフードデリバリーサービスを展開するスタートアップ企業だ。

DoorDashは2018年1月、食糧支援に取り組むFeeding Americaが提供するサービスMealConnectと連携して、「Project DASH (DoorDash Acts for Sustainability and Hunger)」をスタートした。

MealConnectは、食品を扱う企業が登録して、余剰食品と近隣のフードバンクやNPOをマッチングするサービス。このマッチングに基づいてDoorDashが宅配ドライバーをマッチングさせるというのが、Project DASHの仕組みだ。

フードロス問題に取り組みたくても、食品を届ける人や時間を捻出できないというのがレストラン側の悩み。食品を受け取りたい支援団体側も同様で、提供側から受け手までの運搬がハードルになっていた。

Project DASHは、MealConnectが把握するニーズと、DoorDashがもつ流通網を相互活用することで、フードロス問題と貧困問題の二つを同時に解決しようとしている。

“Delivering good by connecting people and possibility.”をミッションに掲げたDoorDashは、こういった取り組みによって、デリバリーサービスのスタートアップという枠を超えて、地域社会の問題解決に取り組む企業というリブランディングにも成功した。

企業の枠を超えた相互連携にみる可能性

SDGs達成への意識も高まるなか、社会起業家やスタートアップはもちろん、一般の企業でも社会課題解決に取り組む動きがみられるようになってきている。

しかし当然ながらひとつひとつの社会課題は深刻で、障壁は多岐にわたることが多い。単体の事業ではまかないきれない技術や実績を、互いの既存事業の連携によってカバーする動きは、課題解決にむけた追い風となるだろう。

今回見た食品ロスや貧困問題だけでなく、分野や地域をまたいでさまざまな相互連携の取り組みが出てくることを期待したい。

img:tabeloop , PR TIMES , DOORDASH