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働き手にとって、大きな問題として人間関係が挙げあられる。いくら、職場の環境が良くても人間関係がうまくいかなくては、仕事も上手くいかない。
そのなかで、もっとも大きな存在となるのは「上司」だ。かつて職場の上司とは「絶対的な存在」としての側面を持ち、どんな上司を持つかによって、その人の企業での命運が左右されるといってもいいほどであった。
しかし、時代とともにその上司の在り方は変わろうとしている。では、今現在の理想の上司とはどのような人物なのだろうか。
ランスタッド株式会社の「働く」と「働く人」の環境にフォーカスした研究機関であるランスタッド・リサーチインスティテュート(RRI)は、日本国内の労働者意識調査「ランスタッド・ワークインサイト」において「理想の上司と職場環境に関する調査」を実施した。
調査では、政府の掲げる働き方改革が進むなか、ビジネスパーソンが上司や職場に望むリアルな声を明らかにするとともに、平成最後の内定式を迎える内定者にも同様の調査を実施し、時代の変遷のなかで求められる「働き方」の理想と実態のギャップも明らかになったという。
“リアル”な期待と“感情論”の期待から出るギャップ
この調査は、20歳から69歳までの一般企業に勤務する方(正社員・契約社員)および公務員・団体職員1,800名を対象とした「ビジネスパーソンへの理想の上司などに関する調査」、および20歳から29歳までの2019年新卒入社内定者100名を対象とした「内定者への理想の上司などに関する調査」の二つの調査結果を比較し、分析したもの。
まず、「上司に期待すること」について聞いたところ、ビジネスパーソン、内定者ともに「正当な評価をしてくれる」が1位だった。内定者は同率で「親しみやすく相談しやすい」が1位になった。
一方、ビジネスパーソンの2位は「適切なアドバイスをしてくれる」となった。
さらに、上位ではないものの「経営層や上司にも意見してくれる」に対して、ビジネスパーソンが内定者より16.1ポイント多く、逆に「キャリアを気にかけてくれる」に対しては、内定者がビジネスパーソンより12.7ポイント多い結果となった。
この結果について同社では、働いているからこそ感じるビジネスパーソンの“リアル”な期待と、内定者の“感情論”の期待から出るギャップであると推察している。
内定者は「より感情的な部分を求める」
また、「理想の上司像」についても1位は両者とも「人として尊敬できる」だったが、2位はビジネスパーソンが「決断力がある」、内定者は「仕事への熱意がある」となった。
また、上位ではないものの、内定者は「プレーヤーとしての能力に秀でている」「自分の目指したいロールモデルである」と答えた割合がビジネスパーソンに比べ10ポイント以上多く、ここでも「実務的なメリットを享受したいビジネスパーソン」と「より感情的な部分を求める内定者」という結果となった。
同社では、これらの結果は時代の変遷によるものではなく、実際に働いてみると上司に求めるものが変わってくることが現れていると推察している。
やはり、実務者のほうがより現実的なものを求める傾向にあることがわかる。ただし、両者とも1位は「人として尊敬できる」であるため、上司の人物としての器量が最大のポイントであることには変わらない。
上司の性別にはこだわらない傾向に
上司の年齢は、両者とも「同い年もしくは年上がいい」と答え、ビジネスパーソンが89.4%、内定者が96.1%という結果となった。
「年上がいい」と答えた理由は、ビジネスパーソン、内定者ともに「自分よりも経験があるから」が1位で、2位は「年上からの支持のほうが受け入れやすいから」だった。
ここで注目されるのは、「それが社会の通例だから」は、内定者がビジネスパーソンの約2倍の割合となったことだ。ここまでの調査では、内定者の方が感情的な傾向があり、この結果は意外である。
上司の性別に関しては、ビジネスパーソン、内定者ともに半数以上が「性別はどちらでもいい」と回答した。
しかし、両者とも男性上司を求める傾向は根強いことも明らかになった。このようななか、男性上司がいいと回答した女性側からの理由に面白いギャップがみられた。
女性ビジネスパーソンの1位は「なんとなく同性の上司が嫌だから」、2位は「同性よりも頼りになりそうだから」のほか、「勤務先に同性の上司が少ない」という回答が目立った。
一方、女性内定者では、1位「同性よりも厳しくなさそう」のほか、25.0%が「職場でもときめきを感じたい」と回答した。
同社では、ここでも働いているからこそわかる“リアル”と、あくまでも「理想」を描く“感情論”とのギャップがみられる結果となったと分析している。
女性内定者の25.0%が「職場でもときめきを感じたい」と回答しているのは、やはり将来的に結婚願望を持っているのは女性のほうが多いということだろうか。
勤務先は「雰囲気」や「やりがい」を重視
また、「勤務先を選ぶ基準で大切にしていること」という問いに対して、ビジネスパーソンも内定者からも「社員がいい雰囲気で働いている」、「やりがいのある仕事ができる」が上位に挙がった。
“超売り手市場”といわれる昨今、「基本給与レベルが高い」「業界上位である」「業績が安定している」を押さえる結果となったことに対し、ランスタッドEAP総研所長・川西由美子氏は以下のようにコメントしている。
「職場の雰囲気は、仕事に大きな影響を与える。仕事のしやすい空間ややりがい、人間関係を重視するのは非常によい傾向だ。
しかし、特に職場の雰囲気は、努力しないと改善、維持、継続は難しい。なぜなら働き手自身の心の余裕が必要だからだ。
改善意欲を高めるためにも、『働き方改革』以前に、働き手それぞれが『遊び方改革』に着手することが望まれる。」
勤務先の環境に望むものに関しては、両者ともに「有給休暇の取りやすさ」が2位との圧倒的な差をつけて1位となった。またTop3に「フレックスタイム制度などの柔軟な勤務体系」が選ばれた。
一方、ビジネスパーソンから「多様な働き方を受け入れる文化」への支持が多く集まったのに対し、内定者の特に男性からは「インフラ面の充実」を挙げる声が多く聞かれる結果となった。
「制度があっても文化による弊害を感じる」ビジネスパーソンと、「インフラさえ整っていればどこでも働ける」と考える内定者との違いがみられた。
性別による違いに着目すると、女性ビジネスパーソンの38.0%が「子育て・介護中にも働き続けられる制度」を挙げ、男性の18.8%と2倍以上のギャップがあった。
この傾向は内定者でも同様で、内定女性が24.6%に対し、男性はわずか10.9%と、性別役割分担の考えが年代問わず根強く残ることが露呈されたとしている。
真に働きやすい環境の整備を
この調査では、実務者と内定者の望むものは、さほど大きな違いはないが、細かい点で違いが散見された。それが、ランスタッド株式会社のいう“リアル”と“感情論”のギャップなのだろう。
しかし、真に働きやすく、長く働きたいと願うのは両者とも同じだ。今後は、このような職場や社会の環境整備が必要となってくるだろう。
img:PR TIMES