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「退屈だ…」こんなことを何度思っただろうか。
一昔前ならばこの暇な時間や待ち時間を潰すのにも苦労していた。しかし技術の大幅な進化で、暇な時間はユーザーからすると情報獲得の時間や、スマホ1つあれば娯楽を楽しんだりすることが可能になった。またビジネス側からすれば、暇な時間や待ち時間はさまざまなサービスを展開できるビジネスチャンスに早変わりしている。見方によっては私達には暇な時間などもはやないのかもしれない。現代は24時間365日がビジネスチャンスになったといえるだろう。
今回は「待ち時間」に着目し、『AMP』で取り上げてきた新しい挑戦をしているサービスをご紹介しよう。
空港の待ち時間で一眠り。世界の空港で急増する「スリープポッド」とは
飛行機を利用する際の暇な時間である「待ち時間」は、長期のフライトでは仕方がないとはいえ、時間の使い方に困る人は多いのではないだろうか。
そして長期のフライトで辛いことはリラックス出来ないことだ。ファーストクラスならいざしらず、エコノミーで体勢を固定されたまま数時間のフライトは足や腰にかなりの負担がかかる。
その問題を解消するために近年改修された空港には、数時間単位の仮眠スペースが導入された。その形もさまざまで、スリープポッドとして設置しているものもあれば、仕切られた部屋にテレビ、電源なども備わっている、まるでホテルのようなスペースも存在している。
あるいはカプセルホテル型など、ユーザーがリラックスして睡眠を取ることができるようにさまざまな工夫がされている。今後もこのように空港内での暇な時間には、さらに便利なサービスが出てくることは間違いないだろう。
数年前にフライト検索エンジンを開発するSkyscannerが1万人の旅行客を対象に行ったアンケートによると、「空港にあったら嬉しいもの」の1位は「映画館」の49%で、仮眠施設は36%で2位という結果であった。
今後も空港はさらなる発展を遂げるだろう。徐々に多様化しているその役割が加速し、一種のテーマパークや街として“暇な時間”に特別な体験のできる存在となる日もそう遠くはないだろう。
試合観戦の合間にスマホで「オークション」。ファンが熱狂する新たなスポーツビジネス
非日常を感じられるイベントの1つにスポーツ観戦がある。チームを応援する熱狂的な楽しい時間を過ごせるイベントではあるが、どんなスポーツでも数十分単位の暇な時間は生じる。
もちろん選手にとって、この時間はパフォーマンスを発揮するために大切なものだ。しかし、ユーザーとしてはすぐにでも試合の続きがみたいというのが本音だろう。またスポーツによっては、小刻みに暇な時間が発生することもある。
そんな暇な時間をユニークに活用した企業が、ニュージーランド生まれのスタートアップ「DROPIT」だ。同社はスタジアムのディスプレイとスマートフォンをフル活用し、60秒間のライブオークションを開催している。
アプリに登録しており、かつ会場にいる人ならば誰もが参加可能なこのオークション。ハーフタイムなどの観客が暇を持てあます時間を有効活用し、スポンサー企業の商品をオークションにかけるという仕組みで、商品を購入できるのは1人だけ。このサービスは、アメリカでは展開を本格化し始めており、三菱自動車やホンダなどもスポンサーとして参入し、盛り上がりをみせている。
ユーザーにとっては、今まで暇な時間だったものを楽しいオークションに参加する時間へと昇華でき、スポンサーにとってはブランディングとして認知してもらう絶好の宣伝機会というわけだ。
スポーツ観戦の暇な時間は、意外と今まで目を向けてこられなかった。「DROPIT」の取り組みはユーザーやスポンサーに取って、大きなインパクトを与えると共に会場に足を運ぶきっかけにもつながるだろう。
“待ち時間”に眠るビジネスチャンス。コインランドリーは「洗濯」以外に手を伸ばす
日常にも待ち時間は意外と溢れており、代表ともいえるのは洗濯、特にコインランドリーだろう。家事の中でも洗濯は工程が多い分、待ち時間も多い。ましてや一人暮らしの場合はコインランドリーで済ませることもあると思うが、そこにも暇な時間はある。
以前までの定番は洗濯している間に銭湯に行くか、棚に置いてある古いマンガを読むぐらいであった。スマホの登場で多少はマシになったが、乾燥まで行うとだいたい1時間は超えるだろう。
そんな待ち時間を解消するためにコインランドリーは、独自の付加価値を付けて洗濯機だけではなくコミュニティスペースに進化を遂げた。
ドイツ生まれの「フレディ レック・ウォッシュサロン トーキョー」は、店内に小さなカフェスペースが併設され、定期的にワークショップやミニライブなども開催されるユニークな展開をするのが特徴。
オーナーのFreddy Leck(フレディ・レック)氏の「単に洗濯をする場所にはしたくなかった」という想いが全面に表われている。
洗濯だけでなく、新たな付加価値の組み合わせ次第で評価は何倍にも膨らむ。今後もこのような待ち時間を用いた新しい組み合わせが登場することは間違いないだろう。
可処分時間に付加価値を
1日の自身のライフサイクルを考えてみると、その可処分時間の短さに気づくことだろう。そして、その時間はスマホからの情報獲得や、VODでの動画視聴など、さまざまな形で消費されていく。
今回フォーカスした“待ち時間”も可処分時間になり得る貴重な時間だ。そこをうまく活用することが現代の生活者に対するビジネスとして成功する鍵になってきているのかもしれない。
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