企業は、ITイノベーションへの投資を進めている。これはグローバルで起こっている現象だ。

IT投資の例としては、クラウドへの移行が挙げられる。「クラウド」では、コンピューティング・データベース・アプリケーションなどのITリソースを、インターネットを経由しオンデマンドで利用できる。

必要なハード・ソフトウェアを、サービス提供会社が保有・維持管理するため、資金と人的リソースを大きく削減できるのがメリットだ。

日本とグローバルにおいて、クラウドに代表されるIT投資の進行状況はどうなっているのだろうか。日本と世界平均の比較を行った調査で確認してみたい。

IT予算の配分は、「事業継続」か「ITイノベーション」か

2018年9月11日、リミニストリートは、IT投資に対する企業の意識調査の結果を発表した。

リミニストリートは、エンタープライズソフトウェア製品とサービスの世界的プロバイダーで、OracleおよびSAPソフトウェアの第三者保守サポートにおいて業界をリードする企業だ。

調査は、2018年1月~3月に、世界900社の企業のCIO・IT部門トップ・財務部門の意思決定者を対象として行われた。地域別では、EMEA(Europe,the Middle East and Africa)300社、APAC(Asia-Pacific)300社、AMERICAS300社となる。

調査ではまず、IT予算の配分について尋ねている。事業継続のための予算(日常業務および人件費)と、ITイノベーションのための予算(新しいソフトウェア、ハードウェア、ITサービスなど、R&D費用を含まない)にそれぞれ何割を充てているか調べた。

日本では事業継続のため予算が64%と、世界平均の58%を上回った。ITイノベーションのための予算が少ないことを意味する。ブラジル/アルゼンチン地域(70%)、イスラエル(68%)に次いで3番目に高いものだった。

IT予算をイノベーションに投資すべきだと思っている割合(強く思う+思う)は、日本で66%と世界平均の89%を下回った。日本企業ではITイノベーションへの投資に対する意識が、世界に比べて希薄といえる。

イノベーションを妨げている要因として多くの回答者が、「事業継続のために費用をかけすぎている」(世界平均77%、日本76%)を選択した。

日本企業で目立ったのは、「イノベーションへの投資に対する取締役会の理解が得られない」(74%)「イノベーションを実現するための社内スキルが十分でない」(74%)で、社内環境の改善が大きな課題となっていることがわかる。

IT予算が事業継続のために使われすぎていると認識している企業は、日本で56%(強くそう思う10%+そう思う46%)、世界平均で68%(強くそう思う19%+そう思う49%)となっている。ともに、半数以上が現在のコスト配分に不満を持っている状況だ。

調査からは、ITイノベーションへ向けた意識と予算配分の状況がわかる。それでは、ITイノベーション予算の使いみち、そしてクラウドへの移行計画はどうなっているのだろうか。

基幹システムの「クラウド移行計画」は、3~4年先が中心

調査では今後12ヶ月間に、ITイノベーションのための予算を、どの分野に投資する予定か尋ねた。

日本企業では、「IoT」「クラウド」「AI」の3項目が世界平均と比べて高い結果となっている。逆に「モバイル」「オンラインショッピング」といった分野で低めの値を示しており、日本企業の方向性が浮かび上がる。

基幹システム(SAP、Oracle、IBM、Microsoftなど)をクラウドに移行する計画については、日本で「既に開始している」「計画し予算を確保している」の合計が40%となった。世界平均56%を下回っている。

「その予定だが戦略はまだ立てていない」「クラウド移行の予定はない」が日本で30%と、世界平均の17%を上回り、遅れを取っている実態がみえる。

基幹システムのクラウド移行の完了予定時期については、「3年以内」と答えたのが日本で7%。世界平均の20%を下回った。

しかし、「3~4年」をみると、日本は61%で、世界平均の65%とほぼ同率となる。日本企業においても、具体化は若干遅れているものの、クラウド化への取り組みは着実に前進しているといえそうだ。

調査では、利用しているエンタープライズ・アプリケーションソフトウェアのベンダーについても尋ねている。世界平均、日本ともにMicrosoftが上位となった。(世界平均68%、日本60%)

以下、IBM、Oracle、SAP、Salesforceが続く。

イノベーション・ビジネス戦略における、エンタープライズ・アプリケーションソフトウェア・ベンダーからの支援に対する満足度は、「非常に満足している」「おおよそ満足している」が、日本で64%と世界平均の79%を下回った。

ベンダーからの支援に対する日本企業の満足度は、世界の中で低いレベルにあることがわかる。

ITイノベーションへの投資に対する意識を高めるには

調査からは日本企業において、ITイノベーションへの投資に対する意識が希薄であることがわかる。それはIT予算を、事業計画に向けるかITイノベーションに向けるかといった数値に現れてくる。

基幹システムのクラウド移行については、日本においてもグローバルにおいても向こう3~4年での完了がイメージされているようだ。その際には、ベンダーからの支援も重要となるだろう。

グローバルでIT投資が進むなか、日本においても世界平均を意識しながら、クラウドを中心としたITイノベーションの導入を進めていくことになりそうだ。

img:PR TIMES