ソーシャルビジネスという言葉を最近よく耳にはしないだろうか。

社会的課題に取り組みながら、収益もきちんと上げビジネスとして継続可能な活動のことを指す。アメリカやイギリスなどのソーシャルビジネス先進国と比較すると遅れをとっているものの、日本でもその気運は高まり今後も拡大すると予測されている。

そんななか、ソーシャルビジネス専門の起業スクールが開校する。

株式会社ボーダレス・ジャパン、本格的なソーシャルビジネススクールを開校

ソーシャルビジネス業界最大手の株式会社ボーダレス・ジャパンは、2018年10月にソーシャルビジネス専門の起業スクール「ボーダレスアカデミー」を東京と福岡で開校すると発表した。

ボーダレスアカデミーは、社会起業家養成所として社会課題に取り組みたいと考える若者に学びの場を提供するという。受講手段としては通学のほか、オンライン聴講制度も設けるようだ。

スクールでは5カ月間の起業プログラムを用意。前期3カ月間では起業のイロハについて学び、後期2カ月では自分自身のビジネスプランを完成させる。具体的には以下4つのプログラムにより成り立っている。

  1. ビジネスモデルづくりの「実践演習」

    実際の社会問題をテーマとして、それを解決可能なビジネスモデルを構築する実践演習
  2. 一流起業家から学ぶ「起業家講座」

    社会的事業のスタートアップに成功した起業家を講師に迎え、起業のイロハを学ぶ
  3. 社会リーダーを育てる「教養講座」

    先頭にたって社会づくりを担う企業リーダーに必要な「社会観」「経営哲学」を学ぶ教養講座
    ※ここまでが前期3カ月
  4. 自分の「ビジネスプラン完成」

    後期2カ月で、卒業してすぐに起業することを前提とした実践的ビジネスプランを完成させる

授業料は以下のとおりだ。

  • アカデミー生

    入学金:5万円
    授業料:(社会人)20万円、(学生)10万円
  • オンライン聴講性

    入学金:なし
    授業料:(社会人)4万円、(学生)2万円

数多くの課題が山積みの現代社会において、ビジネスという枠組みのなかで、それら課題に取り組むソーシャルビジネスへの注目は今後も高まっていくだろう。ソーシャルビジネスに挑戦しようとする若者の学びの場として、ボーダレスアカデミーは大きな役割を果たしてくれそうだ。

卒業後に起業をすると授業料を全額返金、さらに生活費もサポート

ボーダレスアカデミーで注目したいのは、ソーシャルビジネス起業家を育てるためのプログラムだけではない。新しいビジネスを立ち上げるためにはそのための資金も必要となり、最低限の生活費も確保しておかねばならない。

その点、ボーダレスアカデミーでは以下にあげるように、若い起業家たちを資金面でも力強くバックアップする。

  • 卒業後6カ月以内に起業した場合、授業料を全額返金。エンジェル投資家や金融機関の紹介なども行う。
  • 起業を準備する間の生活費として、15万円×3カ月支給する。

    また創業資金として1,000万円~3,000万円、専門チームによる各種マーケティング・経営支援などが受けられるボーダレスグループでの起業の道も用意される。なお、これらには一定の審査がある。
  • 卒業後に一度就職する場合は、起業家人材を求める社会的企業の紹介をはじめた就職や転職のサポートも行う。

十分な資金を持たぬ多くの若い起業家にとっては、願ってもない心強いバックアップ内容といえるだろう。ソーシャルビジネスの起業家を育てようとするスクールの本気度もみてとれる。

世界では社会課題に取り組む事業へ高い注目が集まっている

日本でのソーシャルビジネスはこれからだが、世界に目を向けてみると社会課題に取り組む事業に対する注目は高いようだ。

たとえばアメリカでは、ハーバードなどのエリート大学の卒業生たちが、名のある大手企業ではなく、就職先として非営利組織(NPO)を選ぶのはよくあることのようだ。

スタンフォード大学経営大学院が実施した調査によれば、北米及びヨーロッパのMBA取得者の90%は、「社会的責任を果たす」企業をより好むとのことだ。

また北米では、2025年までに若いミレニアル世代の労働人口が75%に達する見込みだが、オンラインメディア「Entrepreneur」の調査によれば、ミレニアル世代の73%は、「地域コミュニティに直接的にポジティブな影響をもたらすような仕事に就きたい」と回答したという。

世界では、非営利組織に特化したアクセラレーターなどの支援プログラムも多いようだ。その1つが、2014年にスコッチウィスキーブランド「シーバスリーガル」が立ち上げた世界の社会起業家支援プログラム「The Venture」。このプログラムは、毎年、参加したスタートアップには総額100万ドルの支援金が与えられている。

そしてThe Venture自身の調査によれば、プログラム開始から2年間で、参加したスタートアップが累計40カ国30万人の生活へインパクトをもたらしているという。

こうした世界の動きに目を向け、日本のソーシャルビジネスも活性化することが強く望まれる。

ボーダレスアカデミーが日本のソーシャルビジネスを盛り立てる起爆剤に

少子高齢化・地方の過疎化・子供たちの貧困など、国内にも多くの社会的な課題が転がっている。この状況のなか、寄付金に頼らず継続可能なビジネスとして自立し、社会的課題に取り組むソーシャルビジネスの存在感は今後も増していくことだろう。

ソーシャルビジネスを目指す未来ある若者たちを、力強くバックアップするボーダレスアカデミーが、日本のソーシャルビジネスの起爆剤として成功することを強く願いたい。

img:Value Press