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スマートフォンでインターネット接続するのは、今や当たり前の光景だ。しかし、人が混み合う場所ではネットワークにつながりにくくなったり不安定になったりして、ストレスを感じた経験がある人は多いのではないだろうか。
実際、MNO3社(ドコモ、ソフトバンク、au)ごとの、混雑状況下でのネットワーク品質にはどの程度の差があるのだろうか。
動画再生までの時間は3社平均で2.5秒、ソフトバンクが2.1秒でやや優勢
株式会社ICT総研は8月27日、混雑環境下でのスマートフォン動画視聴品質調査の結果をまとめた。同社では定期的にさまざまなシーンでのスマートフォンの通信品質に関する調査を行っている。
なお、今回の調査は、ネットワークが混雑している状況という点を重視し、以下の環境・条件のもとで行われた。ちなみに昨年も、MNO3社についてほぼ同様の調査を行っている。(いくつか条件は変更)
- 調査対象はMNO3社(ドコモ、ソフトバンク、au)
- 1事業者あたり20台の端末を同時に接続
- 調査に使った端末は各社のiPhone8
- 調査に使った動画は、4Kの解像度で120秒間。※IDCが作成
- YouTube上に動画をアップロードし、それを再生して調査を実施
- 調査期間は8月3日~19日まで
- 東京、名古屋、大阪の主要な待ち合わせ場所15地点で調査実施
- あわせて音楽フェス・花火大会など一時的に人が密集するイベント開催中の4地点でも同様の調査実施
- 東名阪の待ち合わせ場所での調査時間は、昼の混雑時間帯(11:30~13:30)または夕方の混雑時間帯(17:00~19:00)に限定
結果、東京・名古屋・大阪の15地点、全ての端末で動画再生に成功し、MNO3社の動画再生成功率は100%だった。
次に、動画再生ボタンを押してから実際に動画再生が開始されるまでの待機時間を「動画再生開始待機時間」と定義し、調査を行った。その結果、東名阪15地点での平均は、ソフトバンクが2.1秒でトップにたった。au(2.5秒)・NTTドコモ(2.9秒)でそれに続く。
ソフトバンクとNTTドコモ間で、約1.5倍もソフトバンクの方が動画再生開始待機時間が短い結果となっているのをみると、混雑環境下での両社のネットワーク品質に差がでたといえそうだ。
ちなみに地域ごとの結果でみた場合、東京エリアで3社の差が最も小さかった。接続する地域ごとに、ネットワーク品質に差があるということだろうか。また昨年の調査と比較すると、MNO3社の平均は2.4秒でほぼ等しい。ただし、ソフトバンクが昨年より改善している一方、NTTドコモは悪化していた。
再生中の動画が停止した割合は3社平均で2.0%
次に、動画再生ボタンを押して実際に動画再生が開始されるまでの待機時間と、動画再生中に停止した時間の合計を「動画再生停止時間」と定義し、全体に占めるこの時間の割合を東名阪15地点で調査した。
結果、ソフトバンクがトップの1.7%で最も短く、au(2.0%)・NTTドコモ(2.3%)と続いた。この結果でも、ソフトバンクのネットワーク品質が最も高いという結果になった。
それほど大きな差はないようにみえるが、ソフトバンクがトップという結果はこの前の結果と変わらない。
ちなみに昨年の調査結果と比較すると、ソフトバンクは(昨年1.9%)改善し、auは同様(2.0%)だった。一方で、NTTドコモは昨年(2.0%)よりやや悪化している。
動画のダウンロードにかかる時間は3社平均で9.7秒
動画再生が開始されてからダウンロードバーが完了の位置まで移動するまでの時間を「動画ダウンロード所要時間」と定義し調査を実施。結果、東名阪15地点において、auが平均8.3秒でトップに立った。
そしてソフトバンク(平均8.7秒)が続き、NTTドコモは12.1秒と他2社と差がついた。特にNTTドコモは東京エリアで平均15.4秒と苦戦している。
同じデータのダウンロード時間でこれほどの差がでているのをみると、もっと広い意味で混雑環境でのネットワーク品質にも、それなりの差が3社間で生じているといえるだろう。ユーザーが混雑環境下のネットワークに感じるストレスも、契約するMNO3社がどこかで差が出ていそうだ。
なお、今回のMNO3社の平均は9.7秒で、昨年の結果(6.2秒)と比較して、スコアを落としている。また昨年はMNO3社間で差はみられなかったものの、今回はその傾向が変わっている。
人が密集するイベント会場ではソフトバンクが好成績
東名阪15地点での調査とは別に、音楽フェス・花火大会などのイベント会場5地点においても、上記同様の調査を行った。
結果、動画再生成功割合はソフトバンク・auが96.0%で同率のトップ、「動画再生開始待機時間」、「動画再生停止時間割合」、「動画ダウンロード所要時間」は、ソフトバンクがトップを記録。
ちなみにソフトバンク・NTTドコモ両社の結果を比較すると、以下のように大きな差がみられた。
- 「動画再生開始待機時間」はソフトバンクの2.8秒に対し、NTTドコモは96秒
- 「動画再生停止時間割合」はソフトバンクの2.3%に対し、NTTドコモは18.2%
- 「動画ダウンロード所要時間」はソフトバンクの8.8秒に対し、NTTドコモは121.4秒
一時的に人が密集するイペント会場においては、大都市の待ち合わせ場所以上に、局地的な激しいネットワークの混雑がみられるようだ。いずれにしろ、これだけ大きな調査結果の差がでると、ユーザーが契約しているMNOごとに、ネットワークの快適さにも大きな違いがあるとみて間違いなさそうだ。
そして成績がトップだったソフトバンクは、混雑環境下でのネットワークに対する対策に力を入れていると想定される。
混雑箇所での平均通信速度は下り9.3Mbps
例年同様、RBB SPEED TESTを使い通信速度の調査を実施した。結果、東名阪でドコモ・ソフトバンク・au3社の平均通信速度が下り9.3Mbpsで、前回調査(下り12.5Mbps)の結果を下回った。
各社、最大数百Mbpsの下り通信速度をうたっているものの、今回のような混雑環境下では、その品質を確保できないようだ。
MNO間で混雑環境下でのネットワーク品質に大きな差を記録
今回のICT総研の調査結果では、ドコモ・ソフトバンク・auの3社間で混雑した環境におけるネットワーク品質に大きな差がみられた。
混雑したスポットでは、通信速度が遅くなるなどユーザーは多かれ少なかれストレスを感じた経験があるものと想定されるが、自分の契約している会社によってこれほど差があるとは思っていないだろう。快適さに大きな差が生じる状況が続けば、それがMNO間でのユーザーの流動につながる可能性もある。
お互いの場所を知らせあうなど、混雑した場所だからこそ、ネットワークの品質がより重要になるシーンもある。MNO3社には、今後も混雑環境下でのネットワーク品質の改善を期待したい。
img:PR TIMES