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「働き方改革」は今の日本でどれだけ浸透しつつあるのだろうか。
「働き方改革」とは、働き手や企業に余裕や健康管理などを促し、メリットをもたらすものとして推進されている。しかし、実情はそういったメリットだけをもたらすものではないらしい。例えば中小企業では残業時間の削減による収入減への不満につながる恐れがある。
AIを活用した人事評価クラウドで中小企業の働き方改革をサポートする株式会社あしたのチームは、企業の残業削減に関するインターネット調査を実施した。
その結果、残業削減の取り組みをしている企業では残業がなくなることによる収入減が不満につながるおそれがあり、残業削減と生産性向上にともなった正当な人事評価制度構築が重要と考えられることが明らかになったという。
従業員には「働き方改革」による収入減のおそれが
調査は、インターネットを使用して行われ、従業員数10名以上300名未満の会社の経営者および従業員、男女20歳~69歳を対象に実施した。有効回答数は200人(会社経営者:100名、従業員:100名)で、調査実施日は2018年5月15日~2018年5月18日だった。
まず、残業があるかどうか聞いたところ、全体で「恒常的にしている」が29.5%、「時々している」が43.5%と、7割以上の企業で残業をしていることがわかった。経営者と従業員で残業をしているとの回答割合に大きな差はなかった。
次に、残業を「恒常的にしている」「時々している」と回答した従業員に月の平均的な残業時間を聞いた。
その結果が以下になる。
- 「30時間~40時間未満」9.6%
- 「40時間~50時間未満」6.8%
- 「60時間以上」6.8%
また「月平均30時間以上」の回答割合はあわせて23.2%となった。
現在国会審議中の「働き方改革法案」では残業時間の上限を「月45時間以内、年360時間以内」としている。これに対して、中小企業の4分の1近くが、この基準に抵触するおそれのあることがわかった。
残業時間の削減の面からすると「働き方改革」は少なくとも中小企業にはまだまだ浸透していないことがわかる。
また、残業削減のために取り組みをしているかを聞いた。すると全体では「取り組みを行っている」が38.5%となり、残り6割以上の企業では残業削減について具体的な取り組みを行っていないという結果となった。また経営者の「取り組みを行っている」の割合が43.0%であったのに対し、従業員では34.0%と9.0ポイントの乖離があった。
そして、残業削減の取り組みを行っていると回答した経営者と従業員に、取り組みについて従業員の満足度を聞いた。その結果、経営者は「満足していると思う」の30.2%、「やや満足していると思う」の55.8%を合わせて「満足していると思う」の割合が86.0%となった。
これに対し従業員は「満足している」が5.9%、「やや満足している」が38.2%で「満足している」の割合は合わせて44.1%となった。経営者と従業員で「満足している」と感じる割合に大きな差があることがわかった。「満足していない」の回答理由をみると、残業代がなくなることにより収入が減ることが多く挙げられた。
この結果は意外だ。残業時間の削減についての満足度が経営者が従業員の約2倍近くある。中小企業は全体的に大企業に比べ、給与額が少ない傾向にあるため、従業員には収入が減ることへのおそれが高いようだ。
残業削減の取り組みをしていると回答した経営者と従業員に、実際に行っている取り組みを聞いた。全体での回答は以下のようになった。
- 「業務の平準化」67.5%
- 「ノー残業デーの設定」39.0%
- 「フレックスタイムの導入」26.0%
また、実際に残業削減に効果的だと思う取り組みの結果が以下になる。
- 「業務の平準化」50.6%
- 「ノー残業デーの設定」33.8%
- 「フレックスタイムの導入」19.5%
一方、経営者と従業員で、効果があると思う取り組みの順位には違いがあった。
- 経営者
- 「業務の平準化」62.8%
- 「ノー残業デーの設定」30.2%
- 「フレックスタイムの導入」20.9%
- 従業員
- 「ノー残業デーの設定」38.2%
- 「業務の平準化」35.3%
- 「長時間の残業を規制するルールを新たに作る」20.6%
この結果について、同社では従業員は実際に残業時間を減らすためには、ルール化して半ば強制的に帰宅するような仕組みが効果的だと思うのかもしれないと推測している。
残業時間については、その現場の実際の担当者からすると、ノルマや企業の収入を考えると、なかなか理想通りには進められないのが現実だろう。
実態に合った人事評価制度の見直しが企業の課題に
残業削減の取り組みを行っている企業の従業員に、収入に変化があったか聞いたところ、最も回答割合が多いのは「収入は変わらない」の58.8%となった。しかし、残業削減により「収入が減った」という人が29.4%と約3割いることもわかった。
残業削減の取り組みにより業務効率を改善して生産性が上がっているにも関わらず、単純に残業代がないために収入が減ってしまっているとしたら、正当な評価とはいえない。同社では、残業削減に取り組むと同時に、実態に合った人事評価制度の見直しが企業の課題となると提言している。
また、残業削減の取り組みを行っている企業の従業員に、人事評価において残業削減がどのように評価されるべきだと思うか聞いた。
自身の考えに「あてはまる」「ややあてはまる」の合計割合でみると、最も多いのは“残業時間の増減や多い少ないは問わず、個人の生産性のみで評価されるべき”とする「残業時間に関わりなく生産性のみで評価されるべき」合計67.6%となった。次いで、“残業削減したことそのものが評価されるべき”とする「残業削減に応じて評価されるべき」合計52.9%が多くなった。
前問では残業削減の取り組みにより収入が減った人もいたが、残業削減に取り組む前と比べて、短時間でも業務量や質が変わらない(=生産性が上がっている)とすれば、仕事への取り組み方の工夫やその努力を認めて人事評価に反映してほしいと望む従業員が多いことがわかった。
そして、“残業を含め、長時間働いていることが評価されるべき”とする「長時間労働をしている従業員が評価されるべき」は合計35.3%と、働き方改革の流れの中で、生産性向上をともなわない長時間労働が評価に値すると考える方は少数派であることがわかった。
この結果からすると、人事が時間よりも生産性を重視する方向に変わってきており、少なくともこの面では「働き方改革」は徐々に浸透してきているようだ。
最後に、直近の業績(予想含む)別に残業削減の取り組みをしているかを聞いた。その結果「増益(増益予想)」と回答した企業の6割以上が「取り組みを行っている」と回答し、「横ばい(横ばい予想)」、「減益(減益予想)」の企業よりも残業削減に取り組んでいる割合が多いことがわかった。これにより、業績が伸びている企業ではすでに残業削減に取り組んでいることがみてとれる。
早急な人事評価制度構築を
今回の調査では、中小企業については現状、残業時間の減少が収入の減少につながるとおそれる従業員が多い一方で、人事は残業時間かの長さから生産性へと評価基準が代わってきていることがわかった。
株式会社あしたのチームによると、現在日本企業全体では、これまで「残業代」として支払われていたが、残業削減の取り組みが始まって以降支払われなくなった人件費予算が8.5兆円あるという。
これをどうするのか。早急な人事評価制度構築を進めるなど対応が望まれる。それが真の「働き方改革」につながるのだ。
img:PR TIMES