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“空飛ぶ車”は長い間SFの中の夢物語とされていた乗り物だったが、積み上げた研究成果が実を結びさまざまな企業が実現させようとしている。そのような空飛ぶ車市場は2020年にはサービスが開始されそうだ。
「空飛ぶタクシー」は2026年に1兆円市場の有望市場に
先端テクノロジーの市場調査会社のAQU先端テクノロジー総研は、空飛ぶタクシーの世界における未来市場の予測分析を発表。同社の調査によると空飛ぶ車に乗れるのはそう先のことでもないようだ。
先進国では空飛ぶ車の長年の研究がようやく実を結び、製品化、サービス化の流れが加速している。それに伴いスタートアップと関連産業の提携により、活発な開発競争が行われている状況だ。多くの企業が参戦しており、米国や中国などは実機のテスト飛行段階に入っていて、2020年前後にサービス開始予定とされている。
空飛ぶ車が現実味を帯びてきていると同時に、空飛ぶタクシー市場がこの先有望な市場となることが予測されている。この市場は2020年のオリンピックを始めとした世界規模のイベントとともに成長していくとみられている。
シミュレーション予測では、2026年にはグローバル市場一兆円を突破し、加速度的に上昇することが予測されている。同社は6月末に会社員、公務員を対象に空飛ぶタクシーに関するアンケートを実施。
その結果として「大都市の交通渋滞の深刻さを感じている」は、50.4%、「空飛ぶタクシーがもし将来あれば利用してみたい」は、46.0%とどちらも高く、ほぼ、2人に1人の割合という結果が得られた。
米国のウーバーテクノロジーズは、eVTOL(電動垂直離着陸車両)の航空管制の問題をNASAと共同調査したり、UberAIRの試験飛行都市を公募するなど、広く活発な活動を展開している。将来の拡大市場に対していち早く動ける企業が今後も市場をリードいていくことは間違いないだろう。
そんな米国にとてつもない勢いで迫っているのが中国だ。
買収戦略に長ける中国民間No.2の自動車メーカーが狙う「空飛ぶ車」市場
最先端領域で他国を猛追している中国は、ドローンやAIなどはもちろんのこと、2017年末に空飛ぶ自動車に着目している。同年には空飛ぶ自動車を開発する米国の「Terrafugia」を中国企業ジーリー(吉利)が買収し、本腰を入れて開発競争が始まろうとしている。
Terrafugiaはマサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生が設立したスタートアップであり、空飛ぶ自動車の「Transition」と「TF−X」の2モデルを開発していた。
「Transition」は一人乗りの空飛ぶ車。飛行時の最高速度は185キロメートル、飛行距離は700キロ以上というスペックだ。現在の米国航空法上では軽量スポーツ航空機に分類されており、運転にはライセンスが必要となる。発売予定日は2019年を予定されている。
一方、TF−XはTransitionの後継機として発表されたモデル。空飛ぶ自動車では初の自動運転車になるとみられている。4人乗りで垂直離着陸が可能。販売歌詞は2023年移行を予定しており、販売価格は30万ドル以上との予想だ。
このTerrafugiaを買収した企業である、ジーリー(ジーリー・ホールディンググループ=浙江吉利控股集団)は日本ではあまり馴染みがない企業だが、スウェーデンの自動車会社ボルボ・カーズの親会社だ。中国の民間自動車メーカーとしては国内2位の規模を誇る。
ジーリーは2010年にボルボ・カーズを買収すると、2013年には英国タクシーメーカー「ロンドン・エレクトリック・ビークル・カンパニー」を買収。2017年マレーシアの自動車メーカー「プロトン」の株式49%を取得したほか、英国のスポーツカー・メーカー「ロータス・カーズ」の株式51%を取得している。
このように積極的な買収により事業範囲の拡大と海外市場へのアクセス強化を推し進めているジーリー。この市場基盤とTerrafugiaの買収により空飛ぶ自動車事業に本格参入を始める。
白熱する空飛ぶ車開発合戦。空飛ぶ車がもたらす世界の交通事情
ジーリーやUberなどを筆頭に、空飛ぶ車の開発合戦は白熱してきている。以前までは空飛ぶ車は実現しないとも思われていたが、数十年前から描かれていた世界が訪れる日も遠くはないだろう。
空飛ぶ車は、世界中で本格的に今後開発される領域なだけに、法的課題を無事にクリアできれば、都市部での交通渋滞解消の一助を担うとともに、将来的にスタンダードなモビリティになるのではないだろうか。
img:@Press , Terrafugia