7月17日、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイの前澤友作社長が、ツイッター上で「球団を持ちたい」と表明した。
【大きな願望】プロ野球球団を持ちたいです。球団経営を通して、ファンや選手や地域の皆さまの笑顔を増やしたい。みんなで作り上げる参加型の野球球団にしたい。シーズンオフ後に球界へ提案するためのプランを作ります。皆さまの意見も参考にさせてください。そこから一緒に作りましょう! #ZOZO球団
— Yusaku Maezawa 前澤友作 (@yousuck2020) 2018年7月17日
このツイートは各界に衝撃をもたらし、その可否や球団にもたらす効果などをめぐり、ロッテの山室晋也社長が「売る意思はありません」とコメントするなど、大きな話題となっている。
今回も元ロッテマリーンズ捕手で野球解説者の里崎智也氏が、ZOZOのプロ野球界参入の問題点を8月8日のMBSテレビ『戦え!スポーツ内閣』の中で指摘した。
乗り越えなければならない“ハードル”が多すぎる
まず里崎氏が指摘したのは、前澤社長が球界参入の方法を明かしていないことだ。里崎氏は「参入方法の1つは、既存球団の買収。でも、売り手がないと買えない。いまの12球団を見ても、売り手がない」と語った。
これに対しMCの武井壮氏が「ロッテがもしかしたら…という話になりましたけど、バッサリ断りましたもんね」と向けると、「ロッテ球団は営業利益も下がってないですし、母体となるロッテも全然困ってないので、身売りに出すことはほぼない」と明かしたという。
もうひとつの、新たに球団を作って新規参入する方法については里崎氏は以下のように語る。
「現在の仕組みで(球団を増やして)ぺナントレースを戦うには、16球団が必要。ZOZO含めて4球団増やさないといけない。1球団だけで手を挙げても何も進みませんよ。1球団につき70人の選手が必要。4球団で合計280人も選手を増やさないといけない」と、乗り越えなければならない“ハードル”を次々と指摘した。
また、四国に新球団を設立する構想についても「四国から、それぞれの球団本拠地までの直行便がない」と、チームが球場に到着した当日に試合を行う“移動日ゲーム”が困難だと指摘。
さらに徳島出身の里崎氏は、四国での試合開催についても言及した。
「(四国での)プロ野球の試合は、愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムしかできない。でも、四国のほかの県の人は新幹線があるわけじゃないから、車で3、4時間かけてまで試合を見に行かないです。実質的に愛媛1県で球団を持たないといけなくなるんですよ」
そこで武井氏が「1つのチームを企業が連名で運営すればいい。企業がもうひとつ加わるだけで資金は潤沢になるし、新しい方の企業の社風も出るし、PRも2社でできるわけだから負担も減るし」と語ると、里崎氏は「そうなったら、“社長がどっちになるか”問題があるんです。結局、野球界が一番ダメなところが『どっち派?』みたいな」と、派閥争いになるとコメントした。
前澤社長の野望がどこまで現実化できるか
企業が球団を持つ最大のメリットは広告効果だろう。このため、日本の球団は巨人と阪神を除き10球団が20億~40億円もの赤字だという説もある。これを親会社は広告費で補填しているのだ。
里崎氏の指摘は的を得ている部分も多いだろう。
参入方法に関していえば、現時点で売り手となる球団はないのが実際のところだ。さらに、新たな球団を作ることに関して考えれば、簡単に乗り越えられるハードルかといわれたら疑問が残る。
しかし、株式会社スタートトゥデイは、平成30年3月期の決算は売上高984億3,200万円、営業利益は326億6,200万円となっており、企業の体力的にはハードルを超えられる可能性がないわけではない。前澤友作社長の【大きな願望】がどこまで現実化するか、興味深いところだ。