国や企業が推し進める「働き方改革」。そのゴールはどこにあるのだろうか。

制度や環境を整えることで、働く人々の満足度を高めることが、一つのゴールといえるかもしれない。

今、長時間労働の抑制やITの導入と並んで、「オフィス環境の改善」が人々の満足度を高める働き方改革として注目され始めている。オフィス環境と働き方改革の関係に着目した調査で確認したい。

働き方改革の満足度を高めるのは「オフィス環境」

2018年7月31日、株式会社イトーキは、「働き方とオフィスに関する意識調査」の結果を発表した。

イトーキは、オフィス家具をはじめとしたオフィス関連事業を手掛ける、1950年設立の企業だ。調査対象は、全国の従業員規模500名以上の企業に所属しているワーカー男女400人。2018年5月12日~14日の期間に、インターネット調査の形式で行われている。

調査ではまず、「働き方改革の必要性」について尋ねている。「必要性を感じている」が41.5%、「どちらかといえば必要性を感じている」が38.5%と、ポジティブな回答が8割を占めた。

働き方改革の進み具合については、「自社の『働き方改革』は進んでいますか」と質問している。「進んでいる」が10.75%、「やや進んでいる」が48.0%という答えが上のグラフに表れている。6割近い企業で、何らかの働き方改革が進められているようだ。

具体的に、働き方改革として、何が行われているのだろうか。「あなたのお勤め先では、『働き方改革』の具体的な施策として、どのようなことを実施していますか」と尋ねている。「休暇取得の促進」が66.5%と最も高い。「フレックスタイム制の導入」「残業禁止」「早帰り日の設定」など、労働時間に関するものが目立つ。他には、「オフィスの改善」「テレワークの導入」といった、働く場所に関するものも多い。

ではワーカーの人々は、働き方改革にどの程度満足しているのか。調査結果が上のグラフになる。「あなたは自社の『働き方改革』に満足していますか」との問いに対して、3.25%が「大変満足している」、40.0%が「やや満足している」と答えている。それ以外の満足ではないと回答している側が優勢であり、今後も満足度を上げていく余地があると考えられるだろう。

この調査では、自社の『働き方改革』への満足度と、オフィス環境への満足度をクロス集計することで、オフィス環境に満足しているかどうかによって、働き方改革への満足度が変化するかどうかを算出している。その結果は、調査対象400名のうち「オフィス環境に満足」と答えた219名のうち、86.7%が「働き方改革に満足」と回答。その一方で、「オフィス環境に不満」と答えた181名のうち、13.3%が「働き方改革に不満」と回答している。

ワーカーの満足するオフィス環境づくりが、「働き方改革」の満足度を高める、といえる結果となった。

「働き方改革」の一つとしてオフィス環境を作っていくには、どうすればいいのだろうか。一つの調査結果がある。

※イトーキ調べ

コミュニケーション・コラボレーションを推進するオフィス環境作り

独立系のITコンサルティング・調査会社の株式会社アイ・ティ・アールが、2018年7月26日に公表したホワイトペーパーでは、「オフィス内の新機軸スペース提供の重要性」について触れている。

2018年5月に実施した、従業員300人以上の国内企業を対象とした調査(有効回答581件)で、「オフィス内の新機軸スペース提供の重要性」について尋ねた。最も多い4割が「従来の会議室よりも手軽に利用できる、小規模なミーティング用スペース」を重視する、と答えている。「テレビ会議システムを導入したミーティングスペース」が35%とわずかな差で続く。

以下、3位が「従来の会議室とは異なる多目的スペース」、4位が「固定席ではないフリーアドレス制により、他部門ともコミュニケーションが取りやすい執務スペース」という結果になっている。

オフィス環境の働き方改革として望まれているのは、コミュニケーション・コラボレーションを推進するスペース作りだといえるだろう。

調査では、「魅力的なオフィススペースを提供することの重要性」についての問いかけも行われた。「仕事へのモチベーションを高めるうえで重要」という回答が約半数と最も高い。「従業員のリフレッシュ時間など、心身の健康を考えるうえで重要」「従業員の生産性を高めるうえで重要」という答えも約4割ずつある。モチベーション・健康・生産性といった面での、好影響が期待されている。

一方、「重要と考えていない」企業は全体の約1割程度しかないこともわかっている。

また、調査ではこの結果を「業績が上がっている企業」と「業績が下がっている企業」に分けて集計している。その結果、「業績が上がっている企業」において、「オフィス内の新機軸スペース提供」は、「有能な人材を採用するうえで重要」「有能な人材の離職を防止するうえで重要」とする回答が多かった。

オフィス環境作りは、有能な人材確保に直結し、業績の向上にもつながるといえそうだ。

働き方改革の満足度を高めていくために

調査からは、各企業で「働く時間」「働く場所」といった分野での施策が、働き方改革として進めらているのがわかった。特に、オフィス環境への満足度が高いと、働き方改革への満足度も高くなる、という結果は、これからの施策へのヒントになるかもしれない。

具体的なオフィス環境作りとしては、「テレビ会議システム」「ミーティングスペース」「フリーアドレス制」といった、コミュニケーション・コラボレーションを推進する形が望まれているようだ。

働き方改革の満足度を高めていくためには、これからも企業や働く人の声に耳を傾けていく必要があるだろう。

img:PR TIMES