少子高齢化が進む中、企業はビジネスの維持へ向け、取り組みを始めている。

政府が推進する働き方改革と並行して、各企業はITソリューションの導入によるワークスタイルの変革を進めているようだ。

課題となるのは、人材の確保と、生産性の向上。課題解決に必要なものは何なのか。ITコンサルティング会社が公表したホワイトペーパーをもとに、考えてみたい。

ITソリューションの導入による、働き方改革・ワークスタイル変革

2018年7月26日、株式会社アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、「2020年に向けた社内標準PCのあるべき姿」を発行した。ITRは、独立系のITコンサルティング・調査会社だ。このホワイトペーパーでは、ITソリューション導入によるワークスタイル変革の実現について、多く触れられている。

IT導入によるワークスタイル変革として、多くの企業が取り組んでいるものの代表に、「テレワーク」がある。デスクトップPCを軽量のモバイルPCに変更し、在宅での勤務を可能にする。移動中や空き時間にも使用でき、残業時間の減少にもつながる。

政府もテレワークの導入に数値目標を設定している。2013年に閣議決定した「世界最先端IT国家創造宣言」で、「2020年には、テレワーク導入企業を2012年度比で3倍、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数を全労働者数の10%以上にする」とした。また、2020年まで毎年7月24日を「テレワーク・デイ」としている。

ITRでは、2018年5月、従業員300人以上の国内企業に対して、ワークスタイル変革への取り組み状況を調べた(有効回答581件)。まず、企業での働き方改革への取り組み状況を見てみる。

取り組みの最初のステップとなる「経営者が働き方改革を目標に掲げている」の段階にある企業が45%。最終段階の「ITを活用した働き方改革がある程度定着している」に到達している企業は10%だ。まさに取り組みの最中である「働き方改革の推進組織がつくられている」は26%となった。約4社に1社が、ワークスタイルの変革に必要となる、ITソリューションの検討を行っているようだ。

それでは、具体的に必要なものは何なのか。調査では、「ワークスタイルの変革に向けた具体的な制度・システムの導入状況」についても尋ねている。

もっとも多く行われていたのが、「チャットやWeb会議などコミュニケーションツールの導入」だ。4割の企業で、ITソリューションとして利用されている。「ペーパーレス化推進のための具体的な活動実施」が38%と僅差で続く。「在宅勤務制度の導入」および「テレワーク制度の導入」は3割強、という結果になった。

働き方改革・ワークスタイル変革の実現には、「テレワーク」が重要な要素の一つとなっているようだ。ホワイトペーパーでは、「テレワーク」以外にも、オフィス環境の見直しによるワークスタイル変革にも注目している。

ワークスタイル変革を実現するオフィス環境とは

ワークスタイル変革を実現するために、オフィス環境はどうあるべきか。調査では、「オフィス内の新機軸スペース提供の重要性」について尋ねている。

「従来の会議室よりも手軽に利用できる、小規模なミーティング用スペース」を重視するという回答が約4割、ともっとも多かった。「テレビ会議システムを導入したミーティングスペース」が35%と僅差で続く。

3位、4位に「従来の会議室とは異なる多目的スペース」「固定席ではないフリーアドレス制により、他部門ともコミュニケーションが取りやすい執務スペース」が挙がった。

この結果からは、コミュニケーション・コラボレーションを推進するスペースが、ワークスタイル変革を実現するオフィス環境として重視されていることがわかる。

調査では、「魅力的なオフィススペースを提供することの重要性」についても尋ねている。これは、何故ワークスタイル変革を行うのか、という問いかけにもつながりそうだ。

結果、「仕事へのモチベーションを高めるうえで重要」が約半数で最も高かった。また、「従業員のリフレッシュ時間など、心身の健康を考えるうえで重要」「従業員の生産性を高めるうえで重要」も約4割ある。一方、「重要と考えていない」企業は全体の約1割程度しかないことがわかった。

なお、この結果を「業績が上がっている企業」と「業績が下がっている企業」に分けて調べると、「業績が上がっている企業」で、「有能な人材を採用するうえで重要」「有能な人材の離職を防止するうえで重要」との回答が多いことがわかっている。

魅力的なオフィススペースの提供は、「有能な人材の確保」という課題の解決につながるようだ。

ITソリューションによる少子高齢化問題へのアプローチ

ホワイトペーパーからは、各企業がさまざまな段階で、ワークスタイルの改革に取り組んでいることが分かった。チャットやWeb会議などのコミュニケーションツール、ペーパーレス化、テレワークといったITソリューションが検討されているようだ。生産性を上げ、働き方改革にもつながるだろう。

オフィス環境のあり方としては、席のフリーアドレス制導入や多目的ミーティングスペース設置など、コミュニケーション・コラボレーションの推進が、ワークスタイルの改革として挙げられた。魅力的なオフィススペースの提供は、有能な人材の確保に必要であり、業績向上につながるという視点も示されている。

ITソリューションの導入による、働き方改革・ワークスタイル改革の実現が生産性を高め、少子高齢化による人材不足という大きな社会的課題の解決を、進めていくことになるだろう。

img: ITR