オンラインショッピングは、買い物の手段として定着している。スマートフォンなどIT機器に明るい若者だけでなく、老若男女問わずオンラインショッピングを利用していることは今更いうまでもないだろう。実店舗で商品を購入する際も、オンラインショップとの価格の比較を行うなど、その存在感は増すばかりだ。

そんな中、日本を含めたアジア太平洋地域を対象とした、オンラインショッピングに関する大規模な意識調査が実施された。どのような動機で商品を購入したり購入をやめたりするかといった消費者の意識を知ることは、オンラインショップでの買い物を活性化するのに役立つだろう。

日本の消費者がオンラインショッピングで最もよく購入するのは「ファッション(76%)」

SAPでは、日本を含むアジア太平洋地域の消費者20,000人超を対象として、オンラインショッピング利用に関する意識調査「2018年 SAP 消費者動向調査レポート」の結果を発表した。日本では、1,000人を超える消費者に対し調査を実施している。

同調査の結果、日本の消費者がオンラインショップで購入する商品として最も多かったのは「衣服、アクセサリー、靴などのファッション(76%)」で、「食料雑貨品および消費財(70%)」、「航空券、ホテル、ツアーなどの旅行(57%)」が続いた。それに対し、「家具(38%)」や「保険や金融ローンなどの金融商品(14%)」の購入率はやや低く、購入されやすい商品との差が際立っている。

オンラインショッピングが日常的になった現代でも、家具や金融商品のような「大きな買い物」は、オンラインでの購入をためらう傾向があるようだ。

オンラインショッピングで最も重視するのは「簡単な交換 / 返品手続き(40%)」

次に、日本の消費者がオンラインショップにどんな点を求めるか聞いたところ、「簡単な交換 / 返金手続き(40%)」という回答が最も多かった。安心してショッピングを楽しめる環境づくりが、何より重要ということだろう。オンラインショップの運営側は、商品の交換や返品について出来るだけ柔軟に対応するポリシーを定め、それを分かりやすく公開する必要がある。なお、「簡単な交換 / 返金手続き」を重視するのは日本以外の各国でも同様の傾向だった。

その他の回答としては、「商品比較ツール(38%)」「実店舗(32%)」も多かった。日本の消費者の約3分の1は、オンラインショップでの商品購入の前にリアル店舗で実物をみたいという意識があることから、実店舗の重要性が証明されたかたちだ。またオンラインショップを運営する企業は、オンラインとリアル店舗どちらでも同様に商品ができるなどの連携を意識した、いわゆる「オムニチャネル」を重視する必要がありそうだ。

「購入」ボタンをおすきっかけで多いのは「割引/プロモーション通知(37%)」や「在庫わずかの通知(33%)」

日本の消費者がオンラインで購入ボタンを押す際の決め手になる動機が何か聞いたところ、「割引/プロモーション通知(37%)」「在庫わずかの通知(33%)」と続いた。商品の割引やプロモーションはもちろん重要だが、それと同じぐらいリアルタイムの在庫管理とその通知が必要であることがわかる。

カートを放棄し購入をやめるきっかけとして最も多いのは「配送料(54%)」

今度は逆に、なぜカートに入れた商品を放棄することがあるかを聞いた。結果、最も多かったのは「配送料(54%)」で、「他のブランド/ウェブサイトの商品との価格を比較するために使用した(40%)」「商品が在庫切れだった(28%)」がそれに続いた。

商品購入をやめる理由として上記の通り配送料が多いことから、カートに商品を入れた後の購入画面で配送料を表示するだけでは足りていないのだろう。たとえばショップのトップページ・商品ページの分かりやすい場所に配送料を明記するなど、購入画面へ移る前に配送料を含めた総額が分かることが重要だ。

ちなみに日本だけでなく、アジア太平洋地域全体でカート放棄の理由として「配送料」との回答が最も多かった。配送料が発生するのはオンラインショッピングの宿命的な弱点といえるが、この問題をどう解決するかがオンラインショッピングの活性化のためには必要ということだろう。

消費者の意識を把握して、オンラインショッピングの環境を整えることが必要

今回の調査では、割引と同じくらい在庫わずかの表示が購入のきっかけとしてあげられたり、商品の交換・辺品手続きがしっかり明示されていて安心して買い物できることが重視されたりといった、消費者がオンラインショップで買い物をする上での意識がわかった。

日本の消費者が実店舗とオンラインショップを行き来する傾向もみられ、オムニチャネルの重要性についても証明されている。オンラインショップの運営企業は、これらの結果をもとに、消費者にとってより快適にショッピングが楽しめる環境を作ることが必要になってくるだろう。

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