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最近「HR」という言葉をよく耳にする。HR(Human Resources)とは「人材」という意味であるが、最近では、人を単なると労働力としてではなく企業の「人的資源」として捉える意味で使われている言葉だ。世の中の変化に伴い、企業の人材の扱い方も変化してきているのだ。
今春、株式会社アイ・キューでは、日本最大のHRネットワーク『日本の人事部』会員120,000人(企業の人事担当者・経営者)に向け、大規模なアンケートを実施した。全8テーマ、184問のアンケートにのべ4,630社、4,907人が回答した。
調査結果から、企業が抱える人・組織に関する課題やそれに対する戦略、施策がわかった。今回、その結果を『日本の人事部 人事白書2018』とまとめた。今回は、調査結果の中から一部を抜粋して紹介する。
9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識
今回は、メインテーマとして、「戦略人事」「採用」「育成」「制度・評価・賃金」「ダイバーシティ」「働き方」「HRテクノロジー」「新しい人事課題」の8テーマを設定した。以下でそれぞれの抜粋を紹介する。
- 9割近くの企業が「戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に「戦略人事」として機能できている企業は約3割
まず「戦略人事」が重要であるかを聞いたところ、「当てはまる」が59.5%、「どちらかというと当てはまる」が29.5%と合わせて89.0%と、9割近くが戦略人事の重要性を認識していることがわかった。
では、人事部門は実際に「戦略人事」として機能しているのか。回答を見ると、「当てはまる」が5.5%と少なく、「どちらかというと当てはまる」の26.1%を合わせても、31.6%にとどまっている。 - 47.1%の企業が「1Dayインターンシップ」を実施。「実際に社員が行っている業務を体験させる」企業は少数
次にインターンシップについて、「実施している」と回答したのは58.1%で、インターンシップの開催期間は「1日」が47.1%と最も多く、いわゆる「1Dayインターンシップ」が主流になっているのがわかる。 - 企業が研修を最も強化したいと考えている層は「ミドルマネジャー」と「新任マネジャー」。最も強化したいテーマは「リーダーシップ」
研修を実施している企業の育成担当者に、今後どの層を対象にした研修を強化するのかを聞いたところ、最も多かったのは「ミドルマネジャー」の63.7%だった。次いで、「新任マネジャー」が55.6%、「若手社員」が50.9%、「新入社員」が30.0%という順番となった。
研修を実施している企業の育成担当者に、今後どんなテーマの研修を強化したいかを聞いたところ、最も多かったのは「リーダーシップ」の61.9%だった。 - 政府主導の賃上げは賛否両論。賃上げ・賃下げを「経営者が独断で決める」企業が約半数
近年、政府が企業に働きかけて賃上げを主導する動きがあるが、その賛否について聞いた。その結果、「望ましい」が9.0%、「どちらかといえば望ましい」が19.0%で、合わせて28.0%となった。
それに対して、「望ましくない」は14.5%、「どちらかといえば望ましくない」が17.7%で、合わせて32.2%と、賛否が拮抗した結果となっている。回答者の役職別に見ると、「望ましくない」「どちらかといえば望ましくない」を合わせた割合が高いのは、経営者・役員クラスの52.1%で、過半数が反対意見を持っている。
女性活躍推進は半数近くが手ごたえを実感
- 女性活躍推進が成果を「上げている」企業は約半数。「上げていない」と答えた企業では、女性従業員の「昇進意欲」や「モチベーション向上」が課題
昨今、多くの企業が女性活躍推進に取り組んでいる。その成果については、「上げている」が8.9%、「どちらかといえば上げている」が36.6%で、合わせて45.5%と半数近くが手ごたえを実感していることがわかった。では、成果を「上げている」と答えた企業と「上げていない」と答えた企業は、それぞれ「女性活躍の成功」をどのように定義しているのだろうか。
まずは、成果を「上げている」「どちらかといえば上げている」と答えた企業に、どのような基準から女性活躍の取り組みが「成功した」と考えるかを聞いた。最も多かったのは「結婚・出産をむかえても働き続ける女性従業員が増えた」が69.3%で、7割近い企業が挙げている。
一方、女性活躍推進の成果を「上げていない」「どちらかといえば上げていない」と答えた企業にも、どのような基準から取り組みが成功していないと考えるかを聞いた。最も多かったのは、「昇進に意欲的な女性従業員が増えていない(もしくは減った)」が60.7%で、「女性従業員のモチベーションが変わっていない(もしくは下がった)」が56.3%、「女性管理職比率が変わっていない(もしくは減った)」も53.3%と過半数となった。 - テレワーク導入時、67.5%の企業が「社内コミュニケーションやマネジメントへの支障」を懸念していたが、実際に「大きな問題になった」のは1.0%
働き方改革の一環として、テレワークやリモートワークを導入している企業は多い。では、テレワーク・リモートワークの導入にあたって、人事担当者はどのような懸念をどの程度、感じていたのだろうか。
「強く懸念していた」と「やや懸念していた」を足した割合が多かったのは、「社内コミュニケーションやマネジメントへの支障」が67.5%、「時間に対してルーズさが許されるものと勘違いする社員が出てしまうこと」が59.1%、「労働時間管理の業務負担」が55.7%、「ネットワーク環境の不備」が52.7%、「業務と私生活の区別をつけられず、業務過多になってしまう社員が出ること」が50.2%だった。
それに対して、実際にテレワーク・リモートワークを導入した企業では、どのような問題が起こったのかを聞いた。その結果、懸念事項として最も多かった「社内コミュニケーションやマネジメントへの支障」は1.0%だった。 - 「HRテクノロジーを活用しようという意識」がある割合は、経営層39.0%、人事部門59.5%、現場26.9%
HRテクノロジーを活用しようという意識が経営層にあるのかを聞いたところ、「当てはまる」が9.1%、「どちらかといえば当てはまる」の29.9%を合わせた割合は39.0%だった。人事部門の意識については、「当てはまる」が16.0%、「どちらかといえば当てはまる」の43.5%を合わせた割合は59.5%だった。
経営層と比較すると、人事部門ではHRテクノロジーを活用しようという意識が高いことがわかる。現場(人事部門以外の部署)の意識については、「当てはまる」が4.8%、「どちらかといえば当てはまる」の22.1%を合わせた割合は26.9%と、約4社に1社にとどまっている。経営層以上に、HRテクノロジーを活用しようという意識が低いことがわかった。 - 社員の「兼業」「副業」について「制度を設けて認めている」企業は約2割。そのうち「自社にメリットがあったかどうかはわからない」のは約6割
従業員の「兼業」「副業」を認めているかどうかを聞いたところ、「制度を設けて認めている」が19.1%、「制度は設けていないが黙認している」が9.9%、「今後制度を設けて認める予定である」が9.7%という結果となった。
また、企業にとって、従業員の「兼業」「副業」を認めることにメリットはあるのか。「大変メリットがあった」が6.5%、「メリットがあった」の16.9%と、メリットを感じる企業は合わせて23.4%となった。
一方、「全くメリットがなかった」は7.8%、「あまりメリットはなかった」の9.1%と合わせて16.9%にとどまっているが、「わからない」が最も多く、59.7%を占めているとしている。
変革への意識は強いが実際に機能しているのはまだわずか
こうしてみてみると、企業にとって、HR、副業、女性活躍推進といった変革への意識は強いものの、実際に対応できている企業はまだ少ないことわかる。
これは、その意義はわかっていても実際にどのようなメリットがあるのか多くの企業が実感できず、どう進めていけばうまく機能するのかの指標も持ち得ていないということではないだろうか。
その分岐点を見極めることが、今後の企業が生き残るためのカギを握ると言えるだろう。
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