SNSやシェアリングエコノミーの広がりで「評価経済社会」というワードがより目立つようになった。Web内のユーザー間の評価が基準となり、購買行動が促進されるというものだ。

この概念がさまざまなサービスで応用されており、“ファン”をベースにしたビジネスモデルの「Fantech」もその一例と言えるだろう。

FanTechとは、“Fan × Technology”を意味する株式会社SKIYAKIが提案するコンセプトだ。時代にあったテクノロジーを用い、ファンとアーティスト、クリエイター、企業などの創造主との新しい関係を生み出し、これまでにない付加価値を創出することを目指すという。

その株式会社SKIYAKIが、ファンの熱量を可視化する「bitfan」の機能を備えたファンクラブを誰でもすぐに開設できるサービス「bitfan CLUB」のティザーサイトを公開した。

ファンの「熱量」を可視化する新サービス

「bitfan」は、ファンクラブ・EC・電子チケット・コンサート・SNSなど、ファンが利用する全てのチャネルからファンの行動履歴を記録し、その熱量を取得することができる、SKIYAKIが独自に開発したサービスだ。

熱量を可視化した「bitfan」のサービスと、これまでSKIYAKIが数多くのファンクラブサービスの運用を行ってきたノウハウを元に開発された。

今回、公開したティザーサイトにて必要な項目をフォームに入力すると、同サービスに関する情報を受け取ることができる。「bitfan CLUB」では、音楽、アート、ファッションなどのクリエイターから飲食店や企業などまで、誰でもすぐにファンクラブを開設し、月額有料会員や無料会員を募ることが可能だ。

bitfan CLUBは以下の利用シーンを見込んでいるようだ。

  • 音楽

    レコーディング風景や日々の楽曲制作の様子をシェアし、熱量の高いファンには、彼らの要望に併せたライブの日程をセッティングする。
  • アート

    ファンには制作過程を動画でシェアし、熱量の高いファンには、彼らの要望に答えたとっておきの一枚をプレゼントする。
  • ファッション

    入荷情報を優先的に公開して、店舗に誘導し、熱量の高いファンには、彼らだけに非売品や優先購入権をプレゼントする。
  • タレントファン

    ユーザーのみ閲覧可能な写真の公開。熱量の高いファンには、彼らだけを集めたシークレットイベントを開催する。
  • 飲食

    店のお得情報を掲載する。熱量の高いファンには、彼らにしか出さない、裏メニューを提供する。
  • 企業

    商品開発秘話を独占的に公開する。そして、熱量の高いファンには彼らだけに新商品のモニタリングに招待する。

具体的な使い方は、まずbitfan IDを登録する。次にサイトに必要な情報を設定。そうすると、自分のファンクラブが出来上がり、コンテンツを投稿してファンを集めればよい。

ファン視点でマーケティング活動を行う「ファンベース」

このようなファンの熱狂を足がかりにしたマーケティング戦略「ファンベース」が注目を集めている。「ファンベース」とは、コミュニケーションディレクター佐藤尚之氏が自身の著書『ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために』で説いた、ファン視点でマーケティング活動を行うことである。

同書では「ファン」を「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を信じている人」と定義。そのうえで、新規顧客の獲得がますます困難になる時代において、企業が生存するためには「ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく」マーケティング戦略が重要であると提唱している。

その理由は以下の三つである。

  • 少子高齢化などによる人口の減少

    日本の消費人口は今後、急減し、高齢社会化によって間違いなく減少の一途を辿ることになる。また、市場における情報が過多になっているため、新たな情報が顧客にリーチしづらい状況でもある。
  • 既存ユーザーによるブランドの確立

    固定客を確保することが永続するブランドを作り上げる最重要課題であるという観点。どの企業においても、特定のコアなファンが、売上の大半を支えている。

    これは、いわゆる「パレートの法則」にも当てはまり、全顧客のうち上位約20%にあたるファンが、約80%の売上を支えているそうだ。
  • ファンは最強のメディアであること

    テレビやネットなどの広告は影響力があるが、ファンによる効果は凄まじいということだ。例えば、「友人がSNSで話題にしていたカフェに、つい気になっていってしまった」という経験を持つ人は多いだろう。

    本書で紹介された調査結果によると、身の回りのさまざまな情報源の中で、「家族や友人が投稿した情報」が最も信頼されているそうだ。価値観の近い友人の体験や意見は、「価値が高い情報」として伝播するということがわかる。

上述のとおり、全顧客の「約20%」である少数のファンと中長期で付き合いながら、彼らのライフタイムバリューを向上させることが、佐藤氏の提唱する「ファンベース」という考え方だ。

「ファン」であることがひとつのスキルである時代

「ファン」であることがひとつのスキルとして認識されつつある。

一つのことに対する熱心なファンの持つ力は、関係のない人からすると計り知れないものがある。その力を「熱量」と表現し、それを可視化し、「FanTech」というコンセプトで生かそうというのが今回の「bitfan CLUB」だ。

現在、日本では「働き方改革」によって、個人のスキルを活かしたビジネスを始めやすい土壌になってきている。自分が長い間、情熱を燃やしてきたことを、コンテンツにする、ファンクラブを作る、など挑戦が新しい働き方の多様性を生むのかもしれない。

img:PR TIMES