自宅でも簡単にアクセス可能なEコマースの利便性と、消費者とコミュニケーションがとれる「実演販売」を融合したライブコマースが広がり始めている。

参入する企業も増加傾向の成長産業といえるが、ユーザーには実際どの程度利用されているのだろうか。

ライブコマースサービス、認知率は30%で世代が若くなるほど認知度が高い


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インターネットにおけるマーケティング・リサーチのリーディングカンパニー「マクロミル」は、2018年6月にライブコマースの利用状況について大規模な調査を行った。

具体的には、15歳~49歳の男女2万人に対し、利用実態把握調査を実施。さらにその中から、ライブコマースで商品を購入したことがあると回答したユーザー400人を抽出し、ユーザー調査を実施した。

はじめに、ライブ配信を視聴しながらショッピングができるライブコマースのことを知っているか尋ねたところ、「知っている」は30%、「知らない」は70%となり、認知率は30%にとどまった。まだ日本では、ライブコマースがネットショッピングと比較して一般的にはなってはいないようだ。

一方で、ライブコマースの認知率は若い世代ほど高いこともわかっている。具体的には10代の認知率が40%で、20代が37%、30代が30%、40代では22%だった。ミレニアム世代(10代~20代)を中心に、ライブコマースが広がっている傾向があることがわかった。

ライブコマースの視聴経験や購入経験は、男性が女性をはるかに上回る


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ライブコマースを知っていると答えた5,941名に対し、視聴及び購入の経験についても聞いた。その結果、視聴したことがあると答えた人は全体の41%、その上で商品を購入した人は14%だった。

これを男女別にみると、まず男性で視聴したことがある人は49%、商品購入をした人が20%で、視聴したユーザーのうち41%が購入に至っていることがわかる。一方で女性では、視聴経験のある人が32%で、商品購入をした人が7%にとどまった。これは視聴経験者の23%にあたる。

これらの調査から、ライブコマースの利用は男性の方が積極的であることがわかった。視聴経験をしたことがある割合が、男性の方が多いのはもちろんのこと、ライブコマースで商品購入する割合も女性の約2倍という結果になっている。

ライブコマースで購入される商品のダントツ一位は「服」で、1人あたりの平均購入額は、6,512円


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ライブコマースで購入経験があると答えたユーザーのうち400人に対し、さらなるユーザー調査を実施した。

その結果、まず21の選択肢(※2)のうち、買ったことがあると答えた数がもっとも多かった商品は、「服」がダントツの1位で全体の66%。「アクセサリー・時計」37%、「家電」30%、「書籍・雑誌・コミック」「音楽CD・DVD・ブルーレイ」27%がこれに続く。

さらに、ライブコマースで商品を購入した際に使った1ヵ月あたりの金額を聞いたところ、その平均金額は6,512円だった。

(※2)服、アクセサリー・時計、ベビー・キッズ・マタニティ用品、コスメ・香水・美容、家電、パソコン・スマホ、テレビ・オーディオ・カメラ、家具・インテリア、食器・日用品、食品・飲料、ペット用品、花・ガーデニング、スポーツ・アウトドア用品、ホビー・楽器、書籍・雑誌・コミック、音楽CD・DVD・ブルーレイ、おもちゃ・ゲーム、ハンドメイド、チケット、自動車・バイク・自転車、その他

ライブコマースを利用する理由で最も多いのは「出品者が紹介する商品を買いたい」


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同調査では、ユーザーがなぜライブコマースで買い物をするのかも聞いている。その結果、もっとも多い理由は「出品者が紹介する商品を買いたい」で41%だった。「商品の詳細(サイズ感、着心地/色、香り、味など)がリアルタイムで質問できる」(40%)、「ショップ店員と話すように、買い物ができる」(35%)、「買いたい瞬間に、簡単に購入できる」(33%)、「出品者とのコミュニケーションが楽しい」(32%)が、これに続く。

この結果からわかるように、生放送のライブ配信というライブコマースの形態がユーザーにうけているようだ。たとえば「出品者が紹介する商品を買いたい」が理由のトップになっているが、これは芸能人やインフルエンサーがライブで商品を紹介し、それをリアルタイムで購入できる点にユーザーが魅力を感じていることの証明になるだろう。

また「リアルタイムで質問できる」が2位となっていることから、一般的なネットショッピングで同じことをすると必ずタイムロスが生じる点にユーザーがストレスを感じていたと想定される。この点では質問に対してすぐ答えが返ってくるライブコマースの特徴に、大きなアドバンテージがあると考えられる。

また3位の「ショップ店員と話すように」は、女性だけの回答に限ると1位だった。女性は、店舗でショッピングを楽しむような体験がネットでできる点に魅力を感じているようだ。

今後もライブコマースで買い物をしたいと考えるユーザーがほとんど


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同調査では、ライブコマースを今後も利用したいかについても聞いた。

その結果、「今後もライブ配信を視聴し、買い物をすると思う」が85%で、圧倒的な1位。「視聴するが買物はしないと思う」(12%)、「視聴もしなくなると思う」(2.5%)を大きく引き離している。ユーザーの多くは、ライブコマースを支持しているようだ。

中国ではインターネット人口の約半分がライブコマースを利用

個人がEコマースの販売者になれるライブコマースは、2016年に中国で流行がはじまった。マクロミルの調査では、認知率が30%にとどまったライブコマースだが、お隣の中国では、2016年に利用者が3.25億人をこえた。これは中国のインターネット人口の実に45.8%にも及ぶ。

中国では偽物の販売が行なわれていたり、写真だけで商品の質が判断しにくかったりという問題があった。これらが、中国でライブコマースを普及させるきっかけとなったともいわれている。また、1人で年間50億円売り上げた有名な張大奕(Zhang Dayi)というセレブが登場し、中国ライブコマース市場に与える影響は大きかっただろう。

中国には“商品の質”という背景があるが、“インフルエンサーによるストリーミング配信”は日本と同じく大きな影響を及ぼしているようだ。

日本のライブコマース市場は今後も広がると想定

マクロミルの調査によると、日本での認知率は現時点で30%にとどまったライブコマースだが、利用者はその多くがライブコマースの体験に満足し、今後も利用し続けたいと考えていることがわかる。

またミレニアル世代の方が認知率は高いことから、若い世代を中心としてライブコマースが広がっていくものと想定される。日本のライブコマース市場の拡大が期待される。

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<参照元>
ライブコマースの利用状況を大調査!ライブ配信の視聴も商品の購入も男性が積極的
市場調査メディア ホノテ by Macromill

img:张大奕