INDEX
日本ではプログラミング学習が、2020年からすべての小学校で必修化される。IT分野で活躍する人材創出が期待されているが、まだその環境が整っているとはいえない。
子どもにプログラミングを教えるためには、優れた教材や指導者が必要だ。保護者や教育従事者の間でも、プログラミング教育への関心がたかまっている。
そんな中、「オンラインプログラミング学習サービス」と「反転学習」を組み合わせ、新たな挑戦を行う小学校が登場した。
オンラインプログラミング学習サービスと「反転学習」
サーバーエージェントは2018年7月6日、株式会社CA Tech Kids(シーエーテックキッズ)と奈良県の帝塚山小学校が、オンライン学習サービスを用いた、プログラミング反転授業を開始したことを発表した。
「反転学習」というのは、従来の「授業」と「宿題」の役割を反転させた形式の学習方法を指す。2000年代にアメリカで始まった。
従来は授業で教師から知識を教わり、自宅で宿題をすることで知識を定着させた。これは、受け身の学習方法だ。「反転学習」では、映像教材などを用いて生徒自身が自宅で基礎的内容を学習(予習)し、教室では疑問点の解決やディスカッションなど、応用的・発展的学習に取り組む。
これにより教師と生徒・生徒どうしでのコミュニケーションも活発になり、能動的な学習が期待できる。
プログラミング反転授業を行うのは、奈良県奈良市の帝塚山小学校4年生全児童78名。本年の6月から12月の間で実施される。小学生を対象としたプログラミング教育において、反転授業の方式を用いることは世界的に見ても極めて珍しい取り組みとなる。
利用するオンラインプログラミング学習サービスは「QUREO(キュレオ)」。プログラミング教育事業のCA Tech Kidsと、サイバーエージェントグループでゲーム事業を行う株式会社アプリボットが共同開発したもので、2018年2月19日にリリースされている。
オンラインで全480レッスンを順番にクリアし、If、ループ、乱数、変数など50項目に及ぶプログラミングの基礎を効果的に学ぶことが可能となっている。
今回の取り組みでは、各自が「QUREO」で1日1レッスン(約15分)を約4か月間継続。学校授業を全10回(1授業45分)実施し、反転授業で能動的なプログラミング学習を実現する。
学校の取り組みだけではなく、子どもに能動的なプログラミング学習を促す、知育玩具も登場している。
「遊び」よる能動的なプログラミング学習
プログラミングに初めて触れる子どもにとっては、「プログラミング学習」よりも「プログラミング玩具」のほうが、自発的に取り組めるかもしれない。
デンマークの玩具会社であるレゴ社からは、プログラミング教育に活用できるレゴブロックが発表されている。
「LEGO MINDSTORMS(レゴマインドストーム)」では、レゴパーツやプログラミングブロック、モーターやセンサーを組み合わせることで、さまざまに動作するロボットを作ることができる。「LEGO BOOST(レゴブースト)」なら、組み立てたレゴをさらに簡単なコードで動かすことも可能だ。
アメリカのフィッシャープライスからは、「プログラミングロボ コード・A・ピラー」が発売されている。いもむし型のロボットの走り方を、自分でデザインすることで、プログラミングの基本思考を学ぶ。
日本のバランスボディ研究所から出ている「プログラミングロボット ダッシュくん」は、タブレットやスマホから操作できる。遊ぶだけでプログラミングの仕組みがわかり、幼児期からプログラミングの基礎に触れることが可能だ。
デジタル玩具「toio」はソニーが開発した。ふたつのキューブを自由自在に動かすことで、自分ならではの遊びを創造できる。キューブには、レゴブロックを組み合わせるための突起がついている。動画からも分かるように、工夫次第で可能性が広がる、遊びのプラットフォームを感じさせる。
子どもがプログラミングに自ら、能動的に取り組むきっかけとなるだろう。
子どもがプログラミングを楽しめる環境づくり
「IT人材の不足」「小学校からプログラミングが必修化」といったフレーズは、IT関連の仕事や勉強の困難さを感じさせる。だが、そういったネガティブな印象を持つのは、大人だけかもしれない。
今回みてきた反転学習やプログラミング玩具からは、子どもたちが楽しみながらプログラミングに没頭する姿のイメージが伝わってくる。
文部科学省が公表した「Society5.0に向けた人材育成」。その一環で行われるプログラミング学習の必修化。言葉は堅いが、現場は楽しいものになるかもしれない。
img: CyberAgent