企業は、多くの人間が所属する組織だ。企業のトップとなる経営者が、どの方向に向かっているのか。それが、組織を動かす指針となる。

企業に所属するビジネスパーソンは、どれぐらい経営トップの方向性について理解しているのだろうか。

また、経営者の考えを、企業全体へ浸透させるには、何が必要なのか。「社員意識とフィードバックの関係についての調査」をもとに、考えてみたい。

経営者の考えている方向性を理解するビジネスパーソンは全体の3分の1

2018年6月26日、株式会社タバネルは「社員意識とフィードバックの関係についての調査」の結果を発表した。タバネルは大阪でコンサルティング事業、セミナー事業、ソフトウエア関連事業などを展開する企業だ。

調査は2018年6月20~22日、全国の20~59歳の会社員(有効回答数128人)に対してインターネット調査の形式で行われた。調査対象の性別は、男性71名、女性56名。年代別では、20代が35名、30代が35名、40代が29名、50代が29名となっている。

「経営者の考えている方向性を理解しているか」との問いに対しては、「おおいにあてはまる」6.3%、「ややあてはまる」27.3%の合計33.6%が、あてはまると答えた。

一方、「全く当てはまらない」10.9%、「あまりあてはまらない」17.2%の合計28.2%の人があてはまらないと回答した。「どちらでもない」は38.3%。

つまり、「自分は経営者の考えている方向性を理解している」と考えるビジネスパーソンは、3分の1程度しかいないということになる。

調査では、経営者の方向性に対する理解度と、上司からのフィードバック頻度の関係に注目している。

経営者の方向性に対する理解度と、上司からのフィードバック頻度の関係

「直属の上司から月一回以上フィードバックを受けている」と回答した会社員は、「経営者の考えている方向を理解している」との問いに対し、大いにあてはまる」14.5%、「ややあてはまる」40.0%の合計54.5%があてはまると回答した。

直属の上司からのフィードバックが月一回未満の会社員は「大いにあてはまる」0.0%、「ややあてはまる」が29.6%。直属の上司からのフィードバックを受けていないと回答した会社員は「大いにあてはまる」0.0%、「ややあてはまる」が10.9%となり、フィードバックの頻度が減るごとに理解度が減る。

経営者の考る方向性を理解している人数については、直属の上司から「フィードバックを月に1回以上受けている社員」は、「フィードバックを受けていない社員」の約5倍多いということになる。

直接の上司から社員へのフィードバックが、経営者の考えに対する理解度を深める、ということが分かる。

調査では、直属の上司からのフィードバックの頻度についても尋ねている。月1回以上が、43%となった。週1回以上も、25%いる。その一方で、全く受けていないと、答えた人も、35.9%存在する。

社員の戦略理解、やりがい、目標達成とフィードバックの関係に調べると、やはりフィードバックの回数が大きく影響しているいことが分かる。フィードバックの回数が、「月1回以上」「月1回未満」「受けていない」に分けると、回数が増えるに従って、すべての項目でポジティブな解答が増えている。

企業全体に経営絵者の考え方を浸透させるには、自社の企業文化とマッチした人材を集めることが必要だ。そのための採用手法として、「リファラル採用(リファラルリクルーティング)」というものがある。

フィードバック回数が多いほど、リファラル採用への意欲が高い

「リファラル採用」は社員の紹介、推薦を受けて選考・採用する人材採用の方法のことだ。

近年の人手不足により、求人媒体を利用しての人材募集では、応募者の母数自体が少なくなることが多い。また採用した後においても、企業の社風と社員の適性がマッチしないなど、早期の離職も見られる。

そこで、すでに企業で働いている社員が、自社の企業文化とマッチすると思える人材を、自分の人脈の中から探し出し、採用しようというのが「リファラル採用」だ。

この「リファラル採用」への意欲についても、上司から社員へのフィードバック回数が強く影響していた。

「現在の勤務先への入社を友人・知人に薦めたいか」との問に対して、直属の上司から月一回以上フィードバックを受けていると回答した会社員は、「大いにあてはまる」5.5%、「ややあてはまる」21.8%の合計27.3%が、ポジティブな姿勢を見せた。

直属の上司からのフィードバックを受けていないと回答した会社員は「大いにあてはまる」4.3%、「ややあてはまる」が6.5%で、10.8%がポジティブだった。「勤務先への入社を薦めたい」という意識は、フィードバックのあるなしで、2.5倍の差がついた。

フィードバックが個と組織を強くする

ビジネスのやりがいは、その目的を明確にすることで高まる。調査からは、直属の上司からのフィードバックが多いほど、社員は経営者の方向性を理解することがわかった。企業の戦略がわかれば、社員も自分の目標を立て、結果についてやりがいを持つことができる。

上司からのフィードバックは、組織全体で方向性を共有することにつながる。方向性の共有は、業務の効率化にも役立つだろう。また、積極的なリファラル採用により、採用段階から企業文化共有した人材を組織に加えることも可能だ。

なにか仕事をしたら、上司から社員へ評価や改善点をフィードバックする。この基本の繰り返しが、トップとなる経営者から社員まで、企業全体を組織として強くしていく秘訣なのかもしれない。

img: tabanel