壮大な自然、歴史的な建造物やグルメなど、旅先の魅力はさまざまだ。旅行客の中には楽しみのひとつに「宿泊場所」を考えている人も多い。

ゲストハウスに泊まれば旅人同士の交流を楽しめるし、5つ星ホテルに泊まればスタッフのホスピタリティが旅の思い出に加えられるだろう。

旅行市場の20%を占めるミレニアル世代は、「ここでしかできないこと」を旅行先に求める傾向があり、シンプルなホテル泊よりも、特別な体験ができる民泊を利用するようになってきている

プロモーションの一環でAirbnbに掲載されるユニークな物件

Airbnbではキャンピングカー、ツリーハウス、お城泊などのユニークな物件が数多く紹介されている。

その中に、企業のプロモーション企画の一環で提供されるユニークな物件があることをご存知だろうか。

Airbnbを活用した企業プロモーションでは「泊まること」自体が目的となるような、魅力的な企画が立てられ、ユーザーはそこでだけの特別な体験ができるよう設計されている。

プロモーション企画は大きく分類すると2種類。企業ブランドの世界観を体験できるものと、普段泊まれない場所に宿泊できるもの、どちらも非日常的で特別な体験だ。

企業ブランドの世界観にどっぷり浸かれる宿泊体験

ドイツの自動車メーカーAudiのプロモーションはこうだ。ロサンゼルスとラスベガスの間に位置するデスバレーと呼ばれる砂漠地帯で、スタイリッシュな一軒家での宿泊を提供。宿泊客はAudiのR8型自動車が乗り放題という豪華なオプション付きだ。

荒野の中に佇む家での暮らし、Audiに乗り、周辺を思い切り乗り回す経験は、映画のワンシーンに入り込んだかのような気分になれるだろう。

宿泊場所は地上だけに限らない。海洋調査船「Alucia」に宿泊ができる企画も打ち出している。

Aluciaはイギリスのニュース番組BBCが制作したドキュメンタリー映画「Blue Pranet II」で使用された潜水艦だ。

バハマ諸島で2018年4月4日~8日の間、Aluciaが宿泊場所となり、ドキュメンタリー映画の中に入り込んだような体験ができるプロモーションが行われた。

普段訪れる身近なスポットが宿泊地に変身

特別な宿泊体験は海外だけではない。日本でも同様に、Airbnbが企業プロモーションに活用されている。2015年には、地上約150mの東京タワー展望台に1泊する宿泊客の募集が行われた。宿泊対象者はシニア世代に限られているが、応募自体は20歳から可能だ。

実際に宿泊できるのはシニア世代の1組のみだが、プロモーションが『roomie』などのメディアやニュースに取り上げられ、ターゲット層以外からのSNSシェアも数多くみられた。

当選された方の年齢は25歳、実際の宿泊者は70歳を超える当選者の祖父母。広島に住む祖父母へのプレゼントとして応募したそうだ。

文化複合施設「湘南T-SITE」に泊まれるという、本好きにはたまらない企画も行われた。当選すると湘南T-SITE内の本やDVD、レストラン・カフェなどが10万円分自由に利用できるという。また、本に精通した専門のコンシェルジュが宿泊客にあわせ最適な本のアドバイスをしてくれるなど、豪華な特典がそろう。

TwitterなどのSNSでは、記事のシェアのみだけでなく「こういった企画がもっとほしい」「応募したい」または「応募した」など、企画に対するコメントもあふれていた。

思わずシェアしたくなってしまうほど、どれも宿泊者には非日常で、まるで夢のような体験が提供されている。

「知らない世界を経験したい」Airbnbユーザーと企業とのマッチング

今回紹介したプロモーション事例はすべて抽選方式だ。それぞれ応募の際には各フォームへ必要事項を記入し、その中から選ばれた数組が宿泊することができる。必要事項の中にはアイデアを問われるものもあり、決してハードルは低くない。

価格は無料のものもあれば、1泊6万円台と高価なものまでさまざまだ。応募の課題は簡単にクリアできるものではないにも関わらず、ユーザーに魅力的に映っているのはなぜなのだろうか。

Airbnbのユーザーは約7割をミレニアル世代が占めている。彼らは旅行に対し「知らない世界を経験すること」を第一に考える傾向が強い。その需要がAirbnbの「暮らすように旅をする」という、ほかの旅行とは違った旅のコンセプトに共感し、利用率が増えていると想定される。

普段は泊まれない場所や、足を運べない場所に泊まれるという特別な宿泊体験を、さまざまな企業とコラボレーションしながら提供している。Airbnbはまるで「宿泊場所のセレクトショップ」のようであり、一点物の“宿泊体験”を楽しむことができる。

サービスのコンセプトに基づいた「特別な体験」ができるプロモーションだからこそ、既存ユーザーに自然と受け入れられていくのだろう。宿泊場所を掲載する企業のブランドが、Airbnbユーザーとの相性がよければ、さらに効果は上がることが予想される。

東京タワーや湘南T-SITEの事例でも言及したように、当選者は一人でも、その企画に魅力を感じる人によってさまざまな人へとシェアされていく。企画内容そのものがユーザーに刺されば刺さるほど、SNSなどで広がるリーチ方法はほかのプロモーションと比べてユニークだ。

Airbnbは今後、宿泊体験のマッチングプラットフォームだけではなく、企業のプロモーションにも強い訴求力もつ媒体として注目されていくだろう。この取り組みが進んでいけば、宿泊者と宿泊場所のマッチング手数料だけではなく、新たな収益をAirbnbにもたらしそうだ。

img:PR TIMES , Airbnb